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父親が未登録在留者だという理由で…「存在するのに存在しない」8歳のハビブ

登録:2020-05-06 01:45 修正:2020-05-06 07:37
韓国で生まれて韓国語を使うのに 
出生届けすらできず「影」として生活 
 
未登録移住児童、最大1万3千人と推定 
「健康権などの権利保護対策が必要」
未登録移住労働者の子どもたちのデモで=資料写真//ハンギョレ新聞社

 8歳のハビブ(仮名)は「影」の少年だ。ハビブは2013年に韓国で生まれ、韓国語しか話せず、韓国料理だけを食べる。だが出生届けもされておらず、外国人登録証ももらえない。父親のナダン(仮名)は10年前に処罰を免れるためケニアから韓国へやって来て難民申請をしたが、依然として未登録で不安定な生活を送っているためだ。韓国の関連法では、未登録滞在者や難民申請者の夫婦の間に生まれた子どもは、法の外に存在する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の防疫体制が「社会的距離措置」から「生活の中の距離措置」へと転換される前日であり、子どもの日でもある5日、全国の遊園地は子どもたちと彼らの家族で賑わったが、ハビブは一日中、京畿道東豆川(トンドゥチョン)にある家から出られなかった。

 ハビブは当然ながら健康保険の適用対象にもなりえない。ハビブは先月、突然咳が出て熱を出したが、病院にも行けなかった。ナダンは「逮捕の恐れもあり、病院費も払えないので、COVID-19が流行している中でも息子を病院に連れて行けなかった。周りの助けを借りて、薬局で買った風邪薬を飲ませて耐えるしかなかった」と話した。

 1991年に韓国政府が採択した国連子どもの権利条約は、第24条にすべての子どもの健康権を明示しており、児童福祉法は第4条に「児童は社会的身分、人種などによるいかなる差別も受けずに育てられなければならない」と定めている。しかし、現実ではこの条約はあまり守られていない。

 ハビブのように韓国で「影」のように生きる未登録移住児童の数は、最大で1万人あまりにのぼる。2018年11月に韓国行政学会が発行した『国内滞在児童についての実態調査』によると、未登録移住児童の数は5200人から最大で1万3千人あまりと推定さる。政府は昨年5月、出産を担う医療陣が出生を知らせるようにする「出生通報制」を導入すると明らかにしたが、法的責任を負うことになる医療界の反発にぶつかった。これに対し未登録移住児童の権利を保護する実質的な代案は見えてこない。城東(ソンドン)外国人労働者センターのソク・ウォンジョンセンター長は「例年であれば、せめて子どもの日だけでもということで、各市民社会団体が協力して未登録移住児童にプレゼントを贈ったり、小さな行事を用意したりもしているが、今年はCOVID-19で大部分の行事が取り消しとなり残念だ。未登録移住児童とその家族はCOVID-19防疫対策から完全に排除されていたが、韓国社会全体のためにも、彼らに対する健康保障対策作りは重要だ」と話した。

イ・ジェホ、カン・ジェグ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/943727.html韓国語原文入力:2020-05-05 20:08
訳D.K

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