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政府支援を受ける前に“解雇”…作動しない新型コロナ失業対策

登録:2020-04-20 10:09 修正:2020-04-20 12:03
新型コロナによる雇用打撃の現場 
 
深刻な資金難の小規模事業所 
休業手当を与える余力なく解雇 
特殊雇用職・フリーランスの支援金は、 
限られた予算の中で所得基準が厳格 
「政府の雇用安定策の実効性を高めるべき」
17日午後、ソウル鍾路区の生地卸売市場で生地を運ぶ労働者がリヤカーを引いて移動している。この日の統計庁の発表によると先月の就業者は2660万9000人で1年前より19万5000人が減少し、減少幅はグローバル金融危機時の2009年5月以後最大=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 17日午後、ソウル九老区(クログ)のソウル冠岳(クァナク)雇用福祉プラスセンターに失業手当の相談に来たAさん(28)は、先月末、勤務していた眼鏡店から勧告辞職の通知を受けた。全従業員は8人だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で「社会的距離措置」(ソーシャル・ディスタンシング)が施行され、度数を合わせるために直接訪問しなければならない眼鏡店の客足が途絶えた。同じくセンターで相談待機中だった40代の男性Bさんは、先月末、15人の職員が働く団体給食業者を辞めたという。総合予備校などに給食を供給する会社は、COVID-19拡散前まで一日平均1000人余りの食事を担当していたが、「ソーシャル・ディスタンシング」のため予備校が閉校し、給食人員は700人台に減った。調理補助員として5年以上働いたBさんに対し、「会社の状況が厳しくなり申し訳ない」と解雇を通告した。

 COVID-19事態が長期化するにつれ、政府が雇用維持支援金の拡大支援と雇用セーフティネットの死角地帯に置かれた特殊雇用職などに対する支援策を相次いで発表してきたが、これまでの対策では「COVID-19雇用ショック」を防ぐには限界が大きいとの指摘が出ている。失業直前の段階に入った一時休職者などの雇用維持はもとより、すでに道端に追いやられた失業者の生計支援のための政策を、新たな枠組みで模索すべきだという声が多い。政府は22日に開かれる予定の非常経済会議で、追加の雇用対策を発表する予定だ。

 COVID-19で被害を受けた事業主が休業・休職制度を通じて雇用を維持した場合、政府が6月まで最大90%の休業手当を補填する「雇用維持支援金」制度があるが、10人前後が働く小規模事業場には政策の手が届かなかった。一日一日資金難にあえぐ事業主の立場では、手当てを先に支給した後に入ってくる政府支援金を待つ余裕がなかった。支援を受けても支給した手当ての10%を負担しなければならない点ももう一つの理由だ。Bさんは「被雇用者を支援する政府対策がもう少し現実的に改善されれば」という言葉を残してセンターを出た。

 この日、同じ場所で失業手当について相談したCさん(28)も、COVID-19の影響を受けた失業者だった。動物体験テーマパークの契約職で正社員への転換を控えていたCさんは、COVID-19が本格化する前の2月初め、同僚29人とともに勧告辞職の通告を受けた。平日基準で1千~2千人が訪れていたテーマパークは、1月20日に国内で初のCOVID-19感染者が発生した直後、1日の訪問者が100人以下に急減した。しまいには週末の1日で60人しか来なかった日もあった。Cさんは「会社側は一部の社員に対してのみ政府が支援する支援金で雇用を維持することにした状態」と伝えた。

 雇用保険に加入して失業手当を受けることができる人は「コロナ失業」の被害事例のうち、それでもまだましな方だ。雇用保険の適用対象でない特殊雇用職などは、最初から失業手当を申請する資格すら認められない。政府は雇用保険の死角地帯に対する支援を拡大するため、特殊雇用職など脆弱階層20万人に2カ月間、ひと月50万ウォン(約4万5千円)の緊急生活安定支援金を支給することにしたが、予算規模が不足している上、地方自治体別に申請資格要件も異なり、実効性に欠けているという批判が出ている。

 釜山のある小学校で放課後授業の講師をしていたDさん(46)は、2月21日を最後に2カ月近く授業ができなかった。政府がCOVID-19対応の危機警報を「深刻」段階に格上げ(2月23日)する前に、公共機関である学校も防疫の次元で閉鎖したためだ。週5日働いて受け取る170万ウォン(約15万円)余りの給与の4分の1は、2月の最終週に授業ができなかったという理由で返上しなければならなかった。夫と離婚手続きを踏んでいる彼女は、生活費の支援を受ける所もなく、ひと月60万ウォンのローン返済額と管理費、保険料、子どもの病院費などを一人で負担している。所得が「0ウォン」になった先月には、仕方なく90万ウォンを集めた積立貯金通帳も解約した。

 しかし、DさんはCOVID-19で月170万ウォンの所得を失ったにもかかわらず、政府が用意した生活安定支援金を申請さえできなかった。申請するには「3月の健康保険料納付額基準で中位所得100%以下」の基準を満たさなければならないが、書類上整理が終わっていない夫の所得などが含まれ、申請可能な基準額より健康保険料が3千ウォン(約270円)超えた。Dさんは「政府で雇用保険の恩恵を受けられない特殊雇用職やフリーランスなどのために短期的な公共雇用でも支援してほしい」と話した。

 雇用労働部のガイドラインに沿って支援事業を設計した自治体も同様に悩んでいる。ある広域自治体の支援事業担当者は「予算は限られており、その中で受けられる人を選定しなければならないため、所得基準を置かざるを得ない。資格要件から外れている脆弱階層が支援を受けられない懸念がある」と述べた。

 チョン・ビョンユ韓信大学教授(経済学)は「現在のCOVID-19補正予算(11兆7000億ウォン)は危機のレベルとそれに伴う初期強力対応が必要だという側面から見れば足りないレベル」だとし、「2008年のグローバル金融危機の時の救済金融とは違い、企業の責任と過ちではなく感染症を原因とする危機であり、それによる波紋が非常に大きいという点で、国家レベルで(企業が雇用維持できるように)リスク負担を減らす全面的な措置が必要だ」と話した。

ソン・ダムン、パク・ジュニョン、キム・ヤンジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/941138.html韓国語原文入力:2020-04-2007:05
訳C.M

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