ソウル市九老区(クログ)に住む13歳のカン・ミヌク君(仮名)は、祖母と二人暮らしだ。国際結婚をした両親は家を出て久しい。65歳以下の祖父母と満18歳以下の孫で構成されたいわゆる“祖孫家庭”だ。家にはパソコンはなく、インターネットも使えない。スマートフォンはあるが、安いデータ料金制を使っているため映像を長時間見ることはできない。
今年小学校に上がった7歳のイ・ジスさん(仮名)の家は多文化家庭だ。ベトナム人の母親はハングルがよく分からない。韓国人の父親は夜遅くまで仕事をしているため、イさんの世話をするのは祖母の役割だ。イさんの祖母は最近、ソウル市道峰区(トボング)のある児童センターに訪ね、「オンライン始業をすると言うが、パソコンをどのようにつけたらいいか、オンライン講義をどのように聴くのかも分からない」として、相談を要請した。
教育部が9日から高校3年と中学3年を皮切りに順次“オンライン始業”を実施すると31日に明らかにした中で、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレット、スマートフォンなどのスマート機器がない低所得層の家庭やオンライン学習を支援してくれる人がいない片親家庭、祖孫家庭などの子供たちが“オンライン教育の死角地帯”に置かれる憂慮が高まっている。
教育部の方針により、保護者を対象にスマート機器の所有有無などをアンケート調査している教師たちは、現場で“学習権の死角地帯”の深刻さを体感している。京畿道富川(プチョン)のある小学校教師A氏は、「全校生900人のうち50人がスマート機器がないと答え、とりあえず教育庁に対し37人分のスマート機器を申請したが、教育庁は申請量が多いとしてすべて支給されるか疑問」とし「昨年申し込んだスマート機器も、5月に提供するとのことなので見通しは暗い」と吐露した。政府が「無線インフラ構築事業」により、学校に教育用のスマート機器を支給しているものの、最近の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡散にともなうオンライン始業の通知により申請物量が激増し、支給が延ばされていたためだ。教育部はこの日「学校別に中位所得の50%以下の生徒は29万人程度と把握される」として「学校で持っているスマート機器を貸与して、学校にない場合には教育庁に申請すれば配分する予定」と答えた。
スマート機器があっても、家庭の状況によって学習権の差が大きく広がるとの指摘もある。小学校教師のBさんは、「調査の過程で一人親家庭の保護者が『職場には絶対に行かなければならないのに、小学1年の子どもがどうやって自宅で一人で授業を聞けるのか』と問い詰めるなど、保護者が困難を訴えている」と話した。京畿道始興(シフン)のある小学校教師のCさんは「グーグルなどで特定単語で検索しただけで青少年有害コンテンツが出てくる状況で、誰かの統制がない場合には生徒がアダルトコンテンツなどの有害物にさらされかねない」と指摘した。ソウル市九老区のある児童センター長は「オンライン始業をすれば、担任教師がしなければならない管理を祖父母や両親がすることになるが、脆弱階層の子どもたちは疎外される可能性が確実に高まる」として「脆弱階層の保護者の中には、オンライン始業が行われることすら知らないケースもある」と指摘した。
30日に全国教職員労働組合が公開した「新型コロナ対応および始業に対する緊急アンケート調査」によれば、全国17市・道の1万6千人の教員のうち、約58%が「オンライン始業の是非」について賛成したが、準備が難しい幼稚園(37.38%)と小学校(55.52%)では相対的に賛成意見が少なかった。