ソ・ジヒョン検事にセクシャル・ハラスメントを行ない、これを隠すためにソ検事に人事報復を行った疑いで控訴審で懲役2年を言い渡されたアン・テグン前法務部検察局長が、裁判を再び受けることになった。最高裁判所は、ソ検事の人事発令は違法でないと判断した。ソ検事側は同日、「最高裁が免罪符を与えた。納得できない」という意見を明らかにした。
■「統営支庁への発令、違法ではない」
最高裁2部(主審ノ・ジョンヒ最高裁判事)は9日、職権乱用・権利行使妨害の容疑で起訴されたアン前局長の上告審で、懲役2年の原審を覆し、無罪趣旨で事件をソウル中央地裁合議部に差し戻した。最高裁は職権で保釈決定をし、1年間収監されていたアン前局長を釈放した。
アン前局長は2015年8月の下半期の人事で、水原(スウォン)地検驪州(ヨジュ)支庁で勤務していたソ検事を昌原(チャンウォン)地検統営(トンヨン)支庁に異動させる人事案を、人事担当だったS検事に作成するよう指示した疑いで起訴された。部置支庁(部長検事がいて次長検事はいない支庁)の経歴を持つソ検事を、別の部置支庁である統営支庁に連続して送ったのは、人事規定の「経歴検事の部置支庁配置制度」に反するというのが検察の主張だった。
昨年1月、ソウル中央地裁刑事1単独のイ・サンジュ部長判事は、アン前局長に懲役2年の判決を下した。二審裁判部のソウル中央地裁刑事抗訴1部(裁判長イ・ソンボク)も昨年7月、同じ判断をした。検察の人事業務を総括するアン前局長が、過去ソ検事にセクハラを加え、事件を覆すために職権を乱用してソ検事に人事原則に反する方法で人事報復を行なったということだ。
最高裁は同日、ソ検事に対する人事配置が違法かどうかだけを判断した。最高裁は法令の制限を超えない限り、人事権者と実務担当者に「裁量権」があり、問題となった該当人事規定(経歴検事の部置支庁配置制度)は「絶対的な基準」ではないため、これに反したのは職権乱用に当たらないと判断した。職権乱用罪は「公務員が職権を乱用し、人に義務のないことをさせた時」に成立するが、ソ検事を統営支庁に送ったのは人事担当検事ができる裁量権の範囲内のことだったということだ。
同日、ソ検事は自身のフェイスブックに「職権乱用罪の『職権』に『裁量』を広げ、『乱用』を非常に狭小に判断したが、到底納得できない」と判決を批判した。「免罪符を与えたもの」とも述べた。「MeToo運動と共にする市民行動」は「人事上の不利益措置は組織内の権力的性暴力を行為する手段であり、隠ぺいする道具だ」とし、「最高裁判決を糾弾する」と指摘した。
■他の職権乱用裁判などに与える影響
今回の判決が他の職権乱用事件にも影響を及ぼすか注目される。ヤン・スンテ前最高裁長官は、裁判所事務総局の方針を批判する判事などを好まれない勤務地に配置した疑いで裁判を受けているが、人事権者の裁量を広く認めた今回の最高裁の判断通りなら、ヤン前最高裁長官の人事措置も人事権者の裁量に含まれると解釈できる。しかし、裁判官と検事の人事原則とは違いがあるという点で、最高裁の判決を司法籠断の人事不利益疑惑と比べるのは難しいという意見が出ている。また、ヤン前最高裁長官が違反した「初任部長の地方裁判所配置」原則は、明示的な人事基準で特定判事に不利益を与えようとした意図が文書として残っているのに対し、今回の事件で問題となった「経歴検事の部置支庁配置制度」は、様々な人事基準の一つと判断した点が異なる。
8日のチュ・ミエ法務部長官の検察高官人事に及ぼす影響をめぐっても、異なる解釈が出ている。政府と与党は、人事権者の裁量権を幅広く認めた判例だとし、検察の人事も長官の裁量権と見なければならないと主張した。一方、今回の人事が、検察総長の意見を聞いて検察の補職を推薦するようにした検察庁法に反しており違法だという反論もある。