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「韓国が正常でない北朝鮮を変えるべき?統一は南北相互の変化で始まる」

登録:2019-12-09 21:06 修正:2019-12-10 07:49
ベルリンの壁崩壊30周年記念討論会 
「ドイツ統一から何を学ぶべきか」

南、略奪的資本主義の人間化 
北、封建的社会主義の民主化 
南北二つの体制の問題点を変える必要 
 
東ドイツが自ら統一の方向を決定 
「吸収統一された」という誤った事実認識 

統一概念の拡張が現実的接近として優先 
国家連合の前段階として議論が必要 

統合を越えて住民は共存できる 
落ち着いて雇用・福祉・社会制度の準備を

ベルリンの壁崩壊30周年記念オープン討論会「ドイツ統一、成し遂げたものと失ったもの」の5回目の総合討論が2日午後、ソウル市孔徳洞のハンギョレ新聞社8階会議室で開かれた=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 「南北は相互変化の観点で統一を準備しなければならない」

 ハンギョレ経済社会研究院、ハンギョレ統一文化財団、中央大学ドイツ欧州研究センターが、ドイツのベルリンの壁崩壊30周年にあわせて統一以後にドイツが成し遂げたものと失ったものをめぐり、11・12月に開催した第5回討論会で一致した意見だ。1989年11月9日、ドイツのベルリンの壁が崩壊し、翌年10月3日にドイツが統一された。

 2日午後、ソウル市麻浦区(マポグ)のハンギョレ新聞社で開かれた総合討論では、ドイツ統一が韓国に与える示唆点を中心に議論がなされた。これに先立って、先月には政治・文化・社会・経済分野に分けて4回の討論会が開かれた。

 参加者は、韓国は正常で、北朝鮮は正常でないと前提する観点から脱却し、南北二つの体制がそれぞれ持っている問題点の変化から優先されなければならないと強調した。キム・ヌリ中央大学独文科教授は「韓国が正常ではない社会の北朝鮮を教え、私たちのようにしなければならないという考えは、韓国の略奪的資本主義を深化させる危険がある。封建的な社会主義(北朝鮮)の民主化、略奪的資本主義の人間化(韓国)が同時に必要だ」と話した。

 20年以上にわたり南北交流協力事業を繰り広げている「ウリ民族助け合い運動」のホン・サンヨン事務総長も「南北が相互に変化しなければならない。韓国社会には過度に一方的な統一を考える傾向がある。北朝鮮社会を同情の対象として見たり、啓蒙の対象として感じている」と話した。

 シン・グァンヨン中央大学社会学科教授は、ドイツに比べて韓国は統一の準備が不十分で、統一に対する熱意も冷めていると診断した。シン教授は「韓国内部の政治の民主化・発展が必要で、北朝鮮内部の政策的変化や発展も必要だ。それができなければ、ドイツの統一後のように期待外れの結果と向き合うこともありうる」と話した。彼は「統一が統合を越えて、南北の住民が互いに排他的にならず共存できるように、社会政治制度、経済システム、雇用、福祉に対する全般的な準備が必要だ」と説明した。

 東ドイツ政権の突然の崩壊の後遺症として、ドイツ内の極右政治の台頭が挙げられる。具体的には、2013年に創党した「ドイツのための代案」政党は旧東ドイツ地域で支持率が高い。この政党は、外国人嫌悪、反移民・反難民を主張している。中央大学ドイツ欧州研究センターのキム・ジュホ研究専門担当教授は「このような主張が東ドイツで呼応を得る土台には、統一以後の東西格差に対する相対的剥奪感がある」と話した。ソウル大学人文学研究院のアン・ソンチャン教授も「ドイツ統一以後、体制変化の過程で主体性を発揮できなくなった人々が、自身をよりよく代弁できる極右政党に投票した」と話した。

画家のカーニー・アラビー氏は、89年11月ドイツのベルリンの壁から4メートルほど離れたアトリエで、壁が崩れる現場を生々しく見たし、当時のベルリンの人々の期待、苦痛、そして未来に対する不安をベルリンの壁に描いた//ハンギョレ新聞社

 統一以後のドイツ経済は、一時はマイナス成長を体験したが、危機をうまく乗り越え巡航中だ。だが、統一以後に国家経済を再建・復興するために耐えなければならなかった労働者の不平等問題に注目する必要があるとの指摘も出た。明知大学経営情報学科のキム・ホギュン教授は、統一以後の労働時間の増加、賃金停滞・格差を例にあげ「ドイツは社会的市場経済という自身の理念に忠実に“人間中心”の東西ドイツ統合プロセスを主導せず、市場中心、企業中心に進めた。これが格差を深化させ、軋轢を深化させる原因になった」と話した。

 総合討論の座長を務めたイ・チャンゴン・ハンギョレ経済社会研究院長兼論説委員は、ドイツ統一以後に現れた様々な葛藤と問題に対して、統一方式の問題なのか▽政策的失策なのか▽主な原因は何か▽統一が不平等を引き起こしたのか、あるいは他の要因があるのか、などをデータに基づき議論しなければならないと提案した。

 これに対してシン・グァンヨン教授は、東西ドイツ統一以後の社会問題は、東欧体制転換以後の社会問題と比較してみる必要があると説明した。社会主義圏が崩壊した後の90年代以後の体制転換を経験した東欧も、国家ごとに違いがあるということだ。例えば、リトアニアは不平等の深化により全人口の20%が移民するなど、社会の解体が進んだ。一方、スロベニアは不平等が少なく、所得水準はとても高くはないが、社会が安定している。シン教授は「統一は政治的次元だけを考慮するのでなく、社会の全体統合的な次元で準備ができていなければならない」と話した。

 ドイツが統一を成し遂げたように、私たちもそのような方式で統一を成し遂げられるという考えに対する疑問も提起された。アン・ソンチャン教授は「韓国と北朝鮮が、ドイツと同程度の統一潜在力を有しているのか。韓国国内だけでも葛藤の統合が難しい状況」と話した。アン教授は、統一概念を拡張する必要があると主張した。ある日体制が一つになるのではなく、統一以前の統一概念から相互に接近する社会文化的均質化、均等化を適用する必要があるということだ。

 江陵原州大学史学科のイ・ドンギ教授は「成功したと理解されていた統一ドイツでさえも、東ドイツ地域で政治的・文化的離脱が起きた」として、「統一と統合に対する根本的質問が必要だ」と話した。イ教授は、韓国の資本主義と北朝鮮社会が変化しなければならないのは事実だが、「先変革、後統一」論には疑問を提起した。南北が単一な考えと価値を持つことが重要なのか、現実的なのかを考えてみなければならないということだ。彼は、統一に対する現実的で漸進的な接近が必要だと主張した。南北が持続的な協力を通じて、質的に協力関係を深化させ、さらには国家連合の前段階に進む過程に対する議論が多く必要だということだ。

 これに先立って開かれた4回の討論会では、韓国の人々がドイツ統一について正しく知っていない事実も多いという指摘が出た。キム・ヌリ教授は「代表的な誤解が、『西ドイツが東ドイツを吸収統一した』という主張だ。事実関係に照らしてみる時、それは100%誤った認識だ。ドイツの統一過程を見れば、東ドイツは吸収統一の対象ではなく、統一の主役だった」と話した。当時、東ドイツ政権の流血鎮圧、発砲威嚇にもかかわらず、1989年12月9日に東ドイツ地域のライプツィヒの住民たちは、民主化を要求する大規模街頭デモを行い、権力者エーリッヒ・ホーネッカーを権力の座から追い出した。1990年3月、東ドイツ人民議会(国会議員)選挙で「はやい統一」を公約に掲げた政党が圧勝をおさめ、その年の10月にドイツは統一を成し遂げた。韓国外国語大学政治外交学科のキム・ミョンヒ教授も「東ドイツ内の自然発生的な動きが、ドイツ統一の方向と速度を決めた最大の要因だった。ドイツ統一は、国際環境と東ドイツの政治状況の変化により、東ドイツの住民が独自に判断し選択した結果だった」と説明した。

クォン・ヒョクチョル・ハンギョレ平和研究所長、整理キム・ジウン・ハンギョレ統一文化財団幹事 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/920099.html韓国語原文入力:2019-12-09 14:11
訳J.S

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