2015年に警察による放水の直撃を受け死亡した農民の故ペク・ナムギさんの死因を誤って記載したという疑惑がもたれているソウル大学病院のペク・ソンハ教授が、裁判所の和解勧告決定に不服を申し立てた。ペク教授側は「故人の死亡は政治化し、事実が歪曲された。今や真実を明らかにすべき時」と述べ、法廷で積極的に争うことを予告した。
7日にソウル中央地裁などへ取材した結果、ペク教授は、故ペク・ナムギさんの遺族の損害賠償請求訴訟を審理するソウル中央地裁民事18部(シム・ジェナム裁判長)の和解勧告決定に対する異議申し立て書を今月1日に提出した。終結した弁論に対する弁論再開申立て書も同時に提出した。
ペク教授側は「被告ペク・ソンハはこの分野(神経外科)で最高の権威と認められた専門家であり、故人の入院から死亡までを見守った医師だ。故人の死亡原因について最も正確に把握できる。医師として知識と良心に基づいて開陳した意見にむやみに不法行為成立を認めるわけにはいかない」と主張した。ペク教授側は、これまでの裁判の過程で事実関係を積極的に争わなかったことについて、「違法行為を証明する責任は原告(遺族)にあるが、事実関係を積極的に争って遺族を刺激する必要はないと考えた。これまで原告は完全に証明できていないため、積極的な主張をしてこなかった」とし、「和解勧告決定で裁判所の心証を確認した以上、積極的に主張を開陳するため弁論再開を申請する」と明らかにした。
ペク教授が和解勧告の決定を不服としたため、裁判所は弁論を再開するか、損害賠償請求訴訟の判決を下すことになる。弁論が再開された場合、ペク教授は大韓医師協会側の意見を聞くなどして追加資料を提出し、遺族側の主張に積極的に反ばくするものとみられる。ソウル大学病院は裁判所の決定に異議を申し立てず、和解勧告決定が確定した。
裁判所は先月21日、故ペク・ナムギさんの夫人と子どもなど遺族4人がソウル大学病院と同病院所属のペク・ソンハ教授を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、同病院とペク教授が遺族に5400万ウォン(約495万円)を支給せよという和解勧告決定を下した。裁判所は、ペク教授が医師に要求される注意義務に違反してペク・ナムギさんの死亡原因を病死と記載したと判断し、使用者責任を負うソウル大学病院とともに遺族に4500万ウォン(約413万円)を支給せよとの判断を下した。また、ソウル大学病院の医療陣が故人の医療情報を警察に無断で漏らしたのは医療法違反行為に当たるとして、900万ウォン(約83万円)を支給するものとした。
ペク・ナムギさんは、2015年11月の民衆総決起集会で警察による放水の直撃を受けて倒れ、その後は意識不明の状態でソウル大学病院の集中治療室にいたが、翌年9月に亡くなった。手術で執刀したペク教授は、故人の死因が「外因」であるにもかかわらず、死亡診断書に「病死」と記し、遺族が延命治療を中断したため死亡したと責任を押し付けてきた。死亡の種類と解剖令状をめぐる批判が起きると真相調査が始まり、ソウル大学病院とソウル大医学部の合同特別調査委員会をはじめ、大韓医師協会などのほとんどの医師はペクさんの死亡種類を「外因死」と結論付けた。2017年6月、ソウル大学病院は、倫理委員会の議論を通じて故ペク・ナムギさんの死亡診断書の死亡の種類を病死から外因死に修正した。しかし、ペク教授は合同特別調査委員会、国政監査などで引き続き「病死」に固執してきた。