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金英哲が再登場…対米交渉「ソ・フン-金英哲-ポンペオの3角窓口」再び開かれるか

登録:2019-10-28 06:28 修正:2019-10-28 07:53
金英哲副委員長、アジア太平洋平和委員長として談話発表 
「米国が首脳間の個人的な親交を盾に 
今年末をやり過ごすつもりなら、それは愚かな妄想」 
年末期限の「新たな計算法」に向けた圧力・警告 

ハノイでのノーディール以降、交渉から排除との分析の中 
金副委員長、完全に手を引かず役割を果たしているもよう 
「全面に出る可能性は低い」との見通しも
北朝鮮の金正恩国務委員長が、現代化工事が進行中の妙香山医療器具工場を視察したと、「朝鮮中央テレビ」が今月27日報道した。この場で金委員長は、公社の欠陥を指摘した後、「党中央委員会が私と足並みをそろえていない」と叱責した/朝鮮中央TV・聯合ニュース

 「米国が自国の大統領と我が国の国務委員長の個人的な親交関係を盾に、時間稼ぎをしながら今年末(の期限を)をやり過ごすつもりなら、それは愚かな妄想だ」と主張する金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長の談話が出た。

 金副委員長は27日、「朝鮮アジア太平洋平和委員会(亜太平和委)委員長」として、「朝鮮中央通信」を通じて公開した談話で、「米国が計算法の転換と関連し、我々の要求に応じるどころか、以前よりも狡く、悪辣な方法で私たちを孤立抹殺しようとしている」として、こう述べた。

 同談話は「朝米関係が維持されているのは、金正恩(キム ・ジョンウン)国務委員会委員長とトランプ大統領の間に形成された親交関係のためだ」としながらも、「朝米首脳間の親交関係は決して民心に背を向けることはできず、朝米関係の悪化を防止したり、補償したりするための担保ではない」と主張した。金正恩委員長も「民心に背を向けることはできない」と主張した部分が目を引く。

 特に談話は「すべてには限界がある」としたうえで、「永遠の敵も永遠の友もいないという名言が、永遠の敵はいても永遠の友はいないという格言に変わらないことを願っている」と“警告”した。

 内容だけを考えれば、今回の談話は、金正恩委員長が4月12日、最高人民会議の施政方針演説で「共有できる方法論」(いわゆる「新たな計算法」)づくりを前提に、「今年末までに忍耐を持って米国の勇断を待ってみる」と述べた「年末の期限」の再確認だ。「我々は米国がいかに賢明に年を越すのかを見てみる」とした24日の「キム・ゲグァン外務省顧問の談話」と表現方式こそ異なるものの、事実上同じ対米シグナルを盛り込んでいる。

 「キム・ゲグァン談話」が「意志があれば道は開かれるものだ」とし、トランプ大統領に向けた金委員長の“訴えかけ”に重点を置いていたのに比べ、「金英哲談話」は「すべてには限界がある」とし、“圧力と警告”に焦点を当てている点が違う程度だ。

 さらに注目すべきなのは発表の主体だ。金英哲副委員長は2月にハノイで開かれた第2回朝米首脳会談で合意が見送られて以来、対米交渉から“排除”されたというのが大方の分析だった。しかし今回の談話は、金副委員長が対米交渉の一線からは退いたものの、完全に手を引いたわけではない可能性があることを示唆している。

ハノイでの第2回朝米首脳会談前の1月20日、米ワシントンのホワイトハウスを訪問し、ドナルド・トランプ米大統領に北朝鮮の金正恩国務委員長の親書を伝えている金英哲朝鮮労働党副委員長兼朝鮮アジア太平洋平和委員会委員長=ワシントン=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 金正恩委員長が朝米交渉のヤマ場で、「金英哲」名義の談話を発表した背景と意図に注目すべきなのもそのためだ。ハノイ会談後、朝米の新たな公式交渉の枠組みとなった外務省-国務省の疎通窓口が円満に作動しなかったため、二度の朝米首脳会談と三度の南北首脳会談を実現させた「ソ・フン(国家情報院長)-金英哲-マイク・ポンペオ(国務長官)の三角疎通窓口」の水面下での再稼働を視野に入れた布石ではないか、今後の動きを見守る必要がある。談話発表の肩書として明記されたアジア太平洋平和委員長は、金正恩委員長の特使として金副委員長が二度訪米し、トランプ大統領に会った際に使用したものだ。

 政府高官は「『金英哲談話』は 『キム・ゲグァン談話』と同じ脈絡だ」とし、「元老が一定の役割を果たしている可能性があるという証拠だ」と指摘した。元高官は「『金英哲談話』を発表させた金正恩委員長の意図を断定することはできないが、韓国としては代案を用意し、『ソ・フン-金英哲-ポンペオ窓口』の再稼動を打診する機会の窓にする必要がある」と助言した。ただし、今回の談話を機に、金英哲副委員長がハノイ合意が見送られる前のように、対米交渉の前面に再び乗り出す可能性は低いというのが大方の予想だ。

 一方、金正恩委員長は妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場を訪れ、「党中央委員会の委員たちが私と足並みを揃えていないと深刻に批判した」と、「労働新聞」が同日付の1面で報じた。昨年8月、同工場を現地指導の際、「馬小屋を彷彿とさせる」と猛非難した金委員長は14カ月ぶりの今回の訪問では、「改建現代化工事が党の構想どおりに進められ、工場が根本的に変わった」としながらも、「細部的に一部の欠陥もある」と指摘した。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/914748.html韓国語原文入力:2019-10-27 21:42
訳H.J

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