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[記者手帳]外交官の同性配偶者認定、政府は隠したかった?

登録:2019-10-26 02:46 修正:2019-10-26 08:06
フィリップ・ターナー在韓ニュージーランド大使(左)と彼の同性配偶者イケダヒロシ氏。2人は今月18日、大統領府のレセプションにカップルで招待された=パク・スンファ『ハンギョレ21』記者//ハンギョレ新聞社

 「フィリップ・ターナー在韓ニュージーランド大使はカミングアウトしたゲイで、ニュージーランドで結婚した配偶者と一緒に韓国に来た。そして昨日の大統領府のレセプションにカップル2人で招待された。かなり歴史的な事件たりうるが、なぜこんなに静かに通り過ぎるのか」。

 今月18日、フィリップ・ターナー在韓ニュージーランド大使が外交官としては初めて同性のパートナーとともに大統領府を訪問し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談しました。私はこのことを韓国性的少数者文化人権センターで活動するハン・チェユンさんのフェイスブックを見て知りました。その時の記事を調べたところ、通信社2社が写真で報道したのがすべてでした。「静かに通り過ぎる」ところだったこの出来事は、その後ターナー大使が自分のツイッターに「私の夫ヒロシとともに在韓外交団招請のレセプションで文在寅大統領と夫人にお会いできて大変光栄だった。文在寅大統領のおかげで韓国で初めてこれが可能となった」とツイートしたことで、記事が出始めました。

 ニュージーランド大使カップルを取材した24時チームのイ・ジュビンです。彼らについてもう少し詳しく見てみましょう。フィリップ・ターナー在韓ニュージーランド大使とイケダヒロシさんは、結婚した同性カップルです。在韓大使が同性の配偶者とともに韓国に来たのは初めてだとされています。二人は今年で25年目。イケダさんは日本の性的少数者人権団体でも活動しています。ニュージーランドは2005年に同性カップルの「市民結合」を許可し、2013年には同性婚を法制化し、彼らは法的に婚姻関係を持ちました。ターナー大使は昨年『ハンギョレ21』とのインタビューで、この法制化過程について「単に寛容を施したのではなく、多様性を強化し大切に考えるようになった歴史だった」と説明しています。

文在寅大統領が今月18日午後、在韓外交団を招き大統領府の緑地園で開かれたレセプションでフィリップ・ターナー在韓ニュージーランド大使(左から2番目)カップルと挨拶を交わしている。ターナー大使と配偶者のイケダヒロシ氏は同性婚パートナーだ=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞

 性的多様性を認めるのはすでに世界的な傾向です。同性婚の法制化は2001年のオランダを皮切りに、最近では台湾、エクアドルまで、全地球的に広がっています。「市民結合」が可能な国まで合わせると、同性カップルの法的権利を認める国は40カ国を超えます。

 このような流れを韓国は避けて通っています。わずか1年前の昨年ですら、大統領が大使の信任状を受け取り赴任を公式なものとする「在韓大使信任状奉呈式」の際、ターナー大使はイケダさんを同伴できませんでした。外交部は「当時は家族を奉呈式に同伴できなかったが、その後指針が改正された。改定時期ははっきり確認できない」と説明していますが、納得しがたいことです。ハンギョレの取材を総合すると、信任状奉呈式に同伴可能な随行員の範囲を家族にまで拡大する儀典指針改正は2017年、ターナー大使の信任状奉呈式は2018年でした。この時、イケダさんは配偶者として認められなかったために同行できなかったのです。その後、「派遣国の法令によって法的な婚姻関係にある場合、同伴家族の地位を認めるように」法務部は昨年12月に指針を改定しました。今回の行事にイケダさんが同行する根拠となったのです。ところが、外交部が指針改定の時期を確認しなかったのと同じく、法務部も改定の事実を先だって公表しませんでした。

 今月18日に開かれた在韓外交団レセプションでも政府の消極的な態度は続きました。ある活動家は「ターナー大使が文大統領に感謝の意を示すほど重要な出来事だったのだが、大統領府としてはその意味を知ってもらいたかったというより隠したかったのではないかと思う」と述べました。その後、文大統領は宗教界の関係者と会い、「同性婚については国民的合意が優先されるべき」と従来の立場を繰り返しました。

 大使の配偶者の権利のみを認めれば良いのでしょうか。性的少数者差別反対レインボーアクションのキャンディ執行委員は、「すでに多くの性的少数者が同性結婚の可能な外国で結婚式を挙げ、証明書を受け取って来ている。ならば少なくとも同性結婚をした国際カップルは認められるべきではないか」と反問します。香港は同性婚の法制化はされていませんが、外国人と結婚した香港人同性配偶者の権利は認めています。

 韓国人カップルの願いも切実です。キャンディ執行委員は「私には10年を共にしたパートナーがいて、私も他の異性夫婦と同等の権利を得ることを強く望んでいます。税金の恩恵を受け、新婚夫婦住宅支援を受け、配偶者が亡くなれば遺族と認められる権利を望みます」と訴えました。ハン・チェユンさんはフェイスブックにこう書いています。「(ターナー大使が書いた)『大統領のおかげ』という言葉、大統領選挙前には自国民の同性愛者も使えるのではないかと期待していた言葉だった」

24時チーム/イ・ジュビン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/914654.html韓国語原文入力:2019-10-25 19:34
訳D.K

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