独島(ドクト)は海の道を容易には開いてくれなかった。慶尚北道鬱陵郡(ウルルングン)の行政船は、鬱陵島沙洞(サドン)港から出発して一時間ほどでへさきを変えて引き返した。高い荒波で船がひどく揺れたため、すぐに下された決定だった。鬱陵島から独島まで至る海の道(87.4キロメートル)の半分さえも進むことができていなかった。「独島は三代が徳を積んでやっと踏むことができる地」と、鬱陵島で生まれ育ったキム・ヨンホ鬱陵郡公報チーム長が言った。「独島の日」(10月25日)を2日後に控えた23日、独島周辺の海の波は、高く険しかった。
独島上陸の夢をつかむことができなかった行政船は、再び沙洞港に戻った。沙洞港では接岸施設の築造工事の真っ最中だった。国防部と海洋水産部が2787億ウォン(約255億円)をかけて、海軍埠頭(400メートル)と海洋警察埠頭(175メートル)、旅客波止場(305メートル)、外郭施設(1160メートル)などを建設中だ。独島の母島である鬱陵島に海軍艦艇と海警警備艦が常時停泊するようにして、独島の領土に対する実効的支配力を強化するためだ。2020年にこの事業が終われば、沙洞港が独島の領土主権守護の尖兵の役目を果たすようになる。海軍や海警の艦艇が沙洞港から出航すれば、独島に2時間20分で到着する。慶尚北道蔚珍郡(ウルチングン)の蔚珍港から出航する現在に比べ、要する時間が半分ほどに短縮される。
沙洞港には、50人乗りの航空機6機が離着陸可能な長さ1200メートル、幅30メートル規模の滑走路を備えた鬱陵空港も加わる。沙洞港の東の防波堤の外側の海を埋めて滑走路を作る方式で建設される。事業費だけで6633億ウォン(約608億円)を要する。2025年に鬱陵空港が開港すれば、現在ソウルから鬱陵島まで6~7時間かかっている移動時間が1時間に短縮される。鬱陵島だけでなく独島へのアクセス性も大きく改善されるのだ。キム・ビョンス鬱陵郡長は、「アクセス性の改善により、独島に対する国民的関心度が大きくなる一方で、より多くの観光客が訪問し、地域経済の活性化効果も期待することができる」と期待感を隠さなかった。
鬱陵島には、独島周辺の海洋領土主権を守るための前哨基地である「鬱陵島・独島海洋研究基地」と、国内唯一の領土博物館である独島博物館(1995年開館)を始め、鬱陵守土歴史展示館(2017年開館)などもある。2014年1月に北側の玄圃里(ヒョンポリ)で開館した研究基地は、鬱陵島と独島の海洋研究、生態系の変動監視および保全研究などを遂行し、独島博物館では、独島が韓国固有の領土であることの根拠になる歴史的史料などを展示中だ。 キム・ナミル慶尚北道環東海地域本部長は、「独島は1500年間鬱陵住民が守ってきた地」で「鬱陵島は独島の領土主権守護の最前線にあるだけに、政府と国民の関心が重要だ」と強調した。イム・ジャングン鬱陵島・独島研究基地隊長は、「現在建造中の20トン級の独島専用研究調査船が現場に投入されれば、より多様な独島の海洋生態系を研究できるようになり、海洋主権の強化に大きな助けとなるだろう」と語った。
独島に対する実効的支配を高めるための努力が続いているが、現在、独島に対する国家レベルの公式記念日さえない状況だ。「独島の日」は、1900年10月25日に高宗が大韓帝国勅令第41号で独島を鬱陵島の付属島と明示したことを記念するために制定された日で、国家の公式記念日ではない。鬱陵住民などにより作られた民間団体である独島守護隊が、2000年代に独島の日を設定した後、2008年に独島の日制定のための法案が国会に提出されたが、通過しなかった。