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[インタビュー]「国家暴力の麗順事件被害者たち、恨みを秘めた証言のたびに号泣」

登録:2019-10-24 09:46 修正:2019-10-25 01:27
順天大学麗順研究所長のチェ・ヒョンジュ教授
昨年から順天大学の麗順研究所長を務め「麗順抗争」被害者の証言の採録作業を進めているチェ・ヒョンジュ教授=写真・順天大学提供//ハンギョレ新聞社

 「国家暴力による無念の死、その後遺族が負った傷と苦痛を、歴史に一行でも残さなければならないと思います」

 順天大学麗順研究所長のチェ・ヒョンジュ教授(53・国語教育学科)は、麗水(ヨス)・順天(スンチョン)事件(麗順事件)71周年を二日後に控えた17日、複雑な心境で口を開いた。麗順研究所は2014年にセンターとしてスタートし、昨年研究所として正式に発足した。彼は所長についてから2年間、麗順抗争の証言を採録して発行する作業を率いている。5月に遺族14人の口述を収録した初の証言集『おれは罪がないから大丈夫だよ』が出た。まずは1000部の非売品として発刊した。さらに、来年初めに発刊する2冊目の証言集を準備している。

昨年から麗水・順天の遺族らと会い 
初の証言集『おれは罪がないから大丈夫だよ』 
「70年余り強要された『沈黙』、聞くだけでも治癒に」 
軍警の遺族、目撃者、公務員なども採録 
「事件の実態」に接近…歴史的記録が「重要」 
「特別法の制定を急ぎ、国が担うべき」

麗順研究所が発行した初の証言集『おれは罪がないから大丈夫だよ』の表紙//ハンギョレ新聞社

 「麗順抗争はいまだに『反乱』という烙印を押されたままです。公式の歴史もそうですが、国民の視線も同じです。遺族は今まで心の傷を表に出すことができないまま、息を殺して生きてきました。長い間大学の垣根の中で地域住民の苦痛に背を向けてきたのではないか、という自責の念と反省から採録を始めました」

 チェ教授は昨年から研究員7人と共に録音と映像、写真などで採録をしている。講義と研究を並行し、遺族130人余りの口述を記録した。これをまとめた報告書を出し、大衆が共感できる内容を選んで2冊目の証言集に入れる予定だ。被害地域があまりにも広く、遺族の証言を採録するだけで4~5年はさらにかかるものと予想される。

 「遺族は恨みを秘めた証言をしながら涙を流すのが常で、採録者も一緒に泣くことが多いです。口述を終えた遺族たちは、沈黙を強要されてきた人生の経歴がようやく少しは認められたようだと言って感謝してくれます。そのため、採録は個人史を公式の歴史に編入させる過程であり、遺族の痛みと傷を癒す過程だと思います」

 チェ教授は、3歳の時に両親がいずれも虐殺された後に生きのびた歳月があまりに辛酸に満ちていて「戻れといわれたら絶対に戻れない」という遺族のイ・スクチャさん、25歳の父親が妻に「冷えるから早く帰りな。おれは罪がないから大丈夫だよ」という最後の言葉を残して連行されて戻って来なかったという遺族チョ・ソンジャさんの事例を紹介し、「痛みのないストーリーは一つもない」と話した。

 「まず麗水と順天の遺族会員を中心に採録中です。今年からは村の里長に紹介してもらい対象を選んでいます。被害者だけでなく、軍人や警察の遺族、目撃者や公務員なども採録し、『事件』の実体に一歩近づこうと思います」

 チェ教授は70年以上麗順抗争に理念の束縛がかけられたために証言の採録作業も遅れたとし、焦る思いをのぞかせた。彼は「麗水の地域社会研究所が1990年代後半、順天の全南東部社会研究所が2000年代に入って採録に乗り出した。しかし予算・人材の限界のため中断し、その成果も出版までには至らなかった」と伝えた。

 チェ教授は国家レベルの証言採録が必要だとし、このための特別法制定を求めた。同じ国家暴力被害事件である「済州4・3」や「光州5・18」は特別法が制定されたとし、麗水・順天事件の特別法案を先送りしている政界に矛先を向けた。「採録事業は政府が法律的根拠、人材と予算を持って進めなければならないのに(やらないがために)地域の大学や市民団体が乗り出さなければならなくなっている」と吐露した。

 「権力者たちはまだ国家の主が国民であることを悟っていないようです。もっと遅くなる前に遺族の涙を拭わなければなりません。遺族も亡くなってしまったら、もう採録も治癒も不可能になりますから」

 彼は、政府と国会が目をつむっているために麗順研究所がやらねばならないことが山積みだとも話した。彼は現代史研究を通じて国民の共感を得て、遺族の痛みを治癒する事業に力を注ぐと誓った。すぐには真相解明は難しいとしても、被害者の犠牲と不幸を癒し補償することをこれ以上先送りにはできないと強調した。

 19日に71周年を迎えた麗順抗争について、彼は「解放直後、民族的な階級的矛盾が衝突して発生した悲劇。他の事件より重層的な構造と多様な言説が存在する。民衆生存権、外勢干渉、左右衝突、南北統一など朝鮮半島を縛り付けている矛盾が解決される日、『麗順』は抗争や蜂起、統一運動の起源として再評価されるだろう」と述べた。

 チェ教授は、全南大学で博士号を取り、2004年から順天大学に在職している。地域研究に焦点を合わせた順天大学智異山圏文化研究院長を務め、現在、全国教授労組の光州全南支部長として活動している。

アン・グァノク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/914364.html韓国語原文入力:2019-10-24 02:04
訳C.M

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