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[ニュース分析]ビーガンの“説得と圧迫”は北朝鮮を動かせるか

登録:2019-09-08 21:39 修正:2019-09-09 07:17
朝米実務交渉の再開を要求 
 
米「在韓米軍再調整」公開発言 
朝「9・9節」対米メッセージ関心 
 
在韓米軍「戦略的再検討」言及 
「トランプ、1年間は対北朝鮮交渉に専念」予告 
「失敗すれば韓国・日本の核武装憂慮」警告も
スティーブン・ビーガン米国務省対北朝鮮特別代表=米国務省提供//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の執拗な問いに、米国がそれなりの“返答”を出した。米国務省のスティーブン・ビーガン対北朝鮮特別代表による6日(現地時間)のミシガン大学公開講演がそれだ。ビーガン特別代表が6月19日、アトランティック・カウンシル公開講演で提案した「柔軟な接近」の実物があるのかという北側の疑問に、80日ぶりの公開講演でそれとなく例示した。在韓米軍問題に対する「戦略的再検討」の可能性を排除しない、「今後1年間」ドナルド・トランプ米大統領が対北朝鮮交渉に「全面的に専念」するという予告などがそれだ。

 トランプ大統領とマイク・ポンペオ国務長官も、ビーガン代表の公開講演前後に「私たちは北朝鮮の政権交替を望まない」(4日トランプ大統領)とか「すべての国は自らを防御する主権を持つ」(6日ポンペオ長官)と強調した。先月、韓米連合指揮所演習の前後に北朝鮮側が浴びせた不満と反発を念頭に置いた発言だ。

 米国の返信は“ニンジン”ばかりとは言えない。ビーガン特別代表が朝米「核交渉」が失敗すれば、韓国と日本が核武装に乗り出す危険性に公開的に言及したことが代表的だ。現職の米行政府の高位要人による「韓日核武装憂慮」公開言及は前例のないことだ。外交安保分野の元老は8日「韓国・日本の極右核武装論者が歓迎する無責任な話」と批判した。

 最近ポンペオ長官を「米国外交の毒草」「朝米交渉の妨害屋」と非難(8月23日リ・ヨンホ外相談話)したり、「米国との対話に対する期待はますます消えつつある」としつつも「(米国が)どんな計算をしているかについては見守る」(8月31日チェ・ソンヒ外務省第1副相談話)と主張してきた北朝鮮側の反応が注目される。米国側は、今月中旬に朝米実務交渉の再開を期待し予想してきた。ただし米国側が依然としてハノイ2次朝米首脳会談合意霧散の核心原因である北側の「制裁緩和・解除」要求に対し不動の姿勢で否定的で、既存の「先に非核化措置、その後に安全保障相応措置」という接近法から本質的に抜け出さず、北側の肯定的反応を期待しにくいという分析が相対的に多い。6月30日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とトランプ大統領が口頭合意したが、今まで延ばされてきた朝米実務交渉が早期再開されるには障害物が多いという意味だ。

トランプ・ポンペオに続きビーガンも
北朝鮮の不満に友好メッセージ出したが
先非核化接近法から抜け出せず
専門家「肯定的反応は期待し難い」
核交渉が失敗すれば韓国・日本の核武装に言及
専門家「極右が歓迎する無責任発言」

 ビーガン特別代表は6日、母校のミシガン大で行った講演で「私たちは北朝鮮から消息を聞けばいつでも北朝鮮と関与する準備ができている」とし、朝米実務交渉の早期再開に北側が呼応することを繰り返し促した。彼は「この瞬間、私たちが取りうる最も重要な措置は、外交官たちの交渉能力を危うくする敵対政策を克服し、交渉のリズムを維持しようと米朝が協力すること」と付け加えた。

 彼は「米国と北朝鮮が対決から不可逆的に決別したことを宣言する重大措置に速かに合意できる」として「(6・12シンガポール朝米共同声明2条に明示した)恒久的平和体制が重要な要素になるだろう」と明らかにした。特に彼は「非核化の相応措置として在韓米軍兵力縮小は可能か」という問いに「私たちはそれとは大きく離れている」と但し書を付けて「『戦争準備態勢の維持と訓練』から『持続的な平和に向けた建設的で安定した役割』へのの転換には多くの戦略的再検討が含まれる」と強調した。さらに「緊張緩和は私たちの兵力がもはや戦争に備えるために絶えず準備体制を整える必要がないということを意味する」と説明した。事案の敏感性を考慮して、抽象的で慎重な表現を使ったが、要点は非核化への相応の措置として「在韓米軍再調整」を排除しないという意味だ。在韓米軍の再調整問題は、韓米同盟はもちろん朝鮮半島平和体制構築、北東アジア戦略地形に重大な影響を及ぼす事案だ。米行政府の現職高位要人のこうした公開言及は、非常に異例で注目に値する。

 合わせてビーガン代表は「(トランプ)大統領は今後1年間、こうした目標に向けた重大進展を成し遂げることに全面的に専念している」として「金(正恩)委員長がトランプ大統領の約束を共有するならば、彼は私たちのチームがこうしたビジョンを現実に変える準備ができていることを発見することになるだろう」と強調した。容易には交渉再開を決断しない金正恩委員長に向かって、対北朝鮮交渉と関連したトランプ大統領の「集中力」と「ビーガンチーム」の準備を強調し「一度信じてみなさい」という呼び掛けをしたわけだ。韓国政府の元高位関係者は「ビーガン代表が米国の善意を強調しているが相変らず抽象的」としながら「北側を動かすには、大きくても小さくても手で掴める具体的提案を出さなければならない」と助言した。

 ビーガン代表が耳障りの良いことを言ったわけではない。彼は「失敗には結果が伴う。私は、国際社会がこのことに失敗すれば、北朝鮮がアジアで最後の核保有国ではないという(ヘンリー)キッシンジャー博士の話のようになることを憂慮する」と暗示した。そして「日本や韓国のような同盟は、部分的に米国との同盟関係に含まれる拡張抑制(Extended Deterrence)に対する信頼により核兵器プログラムを止めている」とし「(北朝鮮との核交渉が失敗するならば)いつか韓国、日本、他のアジアの国から、彼ら自身の核能力を再考する必要を尋ねる声が出始めるかもしれないではないか」と尋ねた。北朝鮮との核交渉失敗が東アジアの「核ドミノ」につながる恐れがあるという警告だ。

 ビーガン代表は、対北朝鮮交渉に消極的な米国の前・現職高官と専門家はもちろん、北朝鮮と中国を狙って交渉の集中力・速度を高めなければならないという圧迫次元でこうした敏感な話題を投じたのだろうと推定される。だが、すでに韓国・日本の両国でむずむずと広がり始めている極右中心の「核武装」主張に火をつけることになりえて、きわめて無責任で危険な発言という指摘が出ている。「拡張抑制」とは、米国が同盟国に核の傘、在来式武器、ミサイル防御網などを動員して、米本土同様に同盟国を防御するという意味で、韓米および米日同盟と北大西洋条約機構(NATO)などに適用されてきた。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/908944.html韓国語原文入力:2019-09-08 20:18
訳J.S

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