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[ニュース分析]文在寅の朝鮮半島平和…「時には一緒に、時には別に」戦略を

登録:2019-08-14 22:48 修正:2019-08-15 12:19
光復節74周年記念 
北東アジアの地殻変動
 

米中の狭間から朝鮮半島を救う…同盟依存より選別共助 
米国が中心軸・韓日が車輪のスポークのサンフランシスコ体制が動揺 
米日のインド太平洋戦略、韓国を下位パートナーに再編狙う 
韓国、北と情勢共有し戦略目標に応じて同盟を柔軟に
文在寅大統領が光復節を翌日に控えた14日午後、大統領府で開かれた国政課題委員長招請昼食懇談会に参加するため入場している//ハンギョレ新聞社

 韓国最高裁(大法院)の強制動員賠償判決に対する日本の報復的な輸出規制に触発された韓日の葛藤の根元には、文在寅(ムン・ジェイン)政府の朝鮮半島平和プロセスと日本の安倍政権の「普通の国家化」戦略の衝突がある。

 安倍政権は、2015年に安保法制を通過させ、グローバル次元で米日同盟を強化し朝鮮半島問題に積極的に関与する意図を明確にし、「軍隊を保有する普通の国」に向けた改憲を推進している。文在寅政府の朝鮮半島平和プロセスは、韓米関係を中心に南北関係を進展させ、北東アジアの安保地形を変化させるという構想であり、そこでの日本の役割は明確でない。

 国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員は「米国と協力して北朝鮮の非核化と南北関係を進展させ、米中の本格的な覇権戦争に先立ち周辺列強にも揺らぐことのない朝鮮半島平和体制を作るという文在寅政府の戦略は正しい方向」としながらも「その過程で、日本の戦略と衝突が起きたことが現在の韓日危機として現れたのであり、北東アジア秩序全般にも変動が起きていて、韓国政府も戦略の点検と補完が必要な状況」と話した。

 韓日の葛藤のより大きな背景には、全世界的に既存の秩序が揺れており、新たな秩序を作らなければならない状況で、各国が“各自生き残り”で対応し、新たな戦略を立てている大転換の時代がある。韓国が「巨大なチェス版」の変化を敏感に読んで、戦略的目標により一貫した外交を繰り広げてこそ朝鮮半島の平和と繁栄という目標も進展させられる。原則を守って韓日の葛藤を解決していくことはその出発点だ。

■動揺する65年体制

 現在の韓日関係の基本枠組みである1965年の韓日請求権協定は、「日本の植民支配の不法性」に合意できなかった。日本は植民支配が合法だったという解釈を守っている。2018年、韓国最高裁は「日本の植民支配は不法」であることを明示し、これを根拠に日本企業らが植民地時代に不法に強制動員した被害者に賠償するよう判決した。日本に有利に締結された韓日請求権協定体制が、約50年ぶりに動揺する状況になり、日本の安倍政権は韓国を「安保上信じることのできない国家」に追い詰め、韓国産業の急所を狙った経済報復に出た。文在寅政府が推進する朝鮮半島平和プロセスで、南北関係、朝米関係が進展し、北東アジアの安保秩序において米国に続くNO.2の座を守ってきた日本の立場が狭まることを遮断しようとする戦略的考慮も作用した。韓国が65年体制の枠組みから抜け出し、植民支配問題と東アジア戦略で独自の声を上げることを遮るための圧迫戦略だ。

 日本の要求に屈服し急いで解決しようとするよりは、現在の葛藤の根元を明確に分析し、原則と長期的戦略に則り韓日関係の新たな枠組みを用意していくべきという提案が出ている。慶北大学法学専門大学院のキム・チャンロク教授は「最高裁判決のとおり、日本企業が強制動員被害者に賠償するよう原則を守り、長い目で日本に不法な植民支配の責任を問う課題を解いていかなければならない」と提案した。朝鮮半島平和プロセスで韓日の接点を作らなければならないという提案もある。ソウル大学のナム・ギジョン教授は「朝鮮半島平和プロセスを積極的に推進し、そこで日本が役割を果たせるようにしなければならない」と話した。

■インド太平洋戦略の“罠”

 米国と日本が主導するアジア戦略の中で、韓国の“地位”変化も注目を要する部分だ。連合国と日本が第2次大戦を終結するために1951年に結んだサンフランシスコ講和条約をベースに米国が設計した「サンフランシスコ体制」は、米国が中心軸となり韓国・日本が車輪のスポークとなり、米国に対し対等な関係を結ぶ構造だった。だが、21世紀に入り、中国の浮上を牽制するために米国と日本が推進するインド太平洋戦略では、米・日・インド・オーストラリアが核心4カ国となり、韓国・台湾・ASEAN国家は周辺部の下位パートナーに再編される構図が進行している。

 チョ・ソンニョル研究委員は「インド太平洋戦略を通じて、米国はサンフランシスコ体制を再強化しようとし、日本は水平的だった韓国との関係を垂直的に変えようとしている」として「韓国がこの戦略に軍事的に参加すれば、韓日関係が垂直的に再編される憂慮が大きいので、韓国は新南方政策とインド太平洋戦略の接点がある部分についてのみ、事案別に協調する“調和のとれた推進”という原則を守らなければならない」と強調した。統一研究院のイ・ギテ研究委員も「日本の構想では、韓国は相当に後順位にあるとみられる」として「インド太平洋戦略において、中国を封じ込める部分については慎重にアプローチし、環境・サイバーなど非伝統安保分野に選別的に参加する戦略が重要だ」と指摘した。

■南北関係、一貫した原則が必要

 朝鮮半島平和プロセスでは、南北関係の進展が核心要素だ。昨年から今年2月末まで、3回の南北首脳会談と2回の朝米首脳会談で順航してきた南北関係と非核化交渉が難航に転じたことが、現在の韓国外交の難題だ。朝米間に非核化ロードマップと制裁緩和・解除問題をめぐる見解の相違が大きく、北朝鮮は韓国に対して韓米軍事演習とF35などの先端兵器導入を非難し、荒々しい不満を表出している。

 チョ・ソンニョル研究委員は「北朝鮮が韓国に不当に対することには断固として対応するものの、関係を解決するための努力を放棄してはならない」として「今までは南北間で非核化と平和体制に限定して議論をしてきたが、国際秩序の地形が変わる状況では、南北の最高位層で朝鮮半島周辺情勢に対する認識を共有し、わが民族の将来を虚心坦壊に話す構造が作られなければならない」と提案した。

■同盟を再び問う

 根本的には「動揺する国際秩序の中で、韓国がどのように中心を捉え対応しなければならないか」という質問に収束される。第2次大戦直後に形成され70年以上経過した古い国際秩序が急変する現実に適応できなくなり、世界各地で混乱が起きている。今回の韓日関係の葛藤は韓日両国が自ら解決しろという米国トランプ行政府の態度から、サンフランシスコ体制がもはや以前のようには作動しない現実を見なければならない。

 国家安保戦略研究院のイ・スヒョン責任研究委員は「同盟にのみ依存する既存の外交安保から抜け出し、朝鮮半島の運命は韓国が責任を負うという点を確実にしなければならない」として「米国との同盟関係はうまく維持しなければならないが、同盟という理由で常に同じ道を行くのではなく、朝鮮半島の平和・繁栄という韓国の戦略目標に役立つか否かを中心に据え、時には一緒に、時には別に行く戦略が必要だ」と話した。

 長期戦に向かっている米中覇権競争で、韓国が米国と中国の間で一方を選択するのではなく、韓国が指向する「朝鮮半島の平和と繁栄」と長期的統一という目標を中心に据えて、南北・韓米・韓中・韓日関係などの駒をチェス版上で慎重に進めていく新しい時代の外交安保の長期戦略を構想する時だ。

パク・ミンヒ、ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/905784.html韓国語原文入力:2019-08-14 19:41
訳J.S

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