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[ニュース分析]北朝鮮「地対地戦力3種セット」は完成したのか

登録:2019-08-11 22:08 修正:2019-08-12 08:04
北朝鮮10日、咸鏡南道咸興一帯で短距離飛翔体を発射 
金正恩委員長、またも試験発射を指導…「新型戦術兵器試験成功」 
北朝鮮版イスカンデル、新型ロケット砲に続き 
新型地対地弾道ミサイルと推定
北朝鮮官営の朝鮮中央通信は11日、前日早朝に咸鏡南道咸興一帯で行われた飛翔体の試験発射と関連して「金正恩同志が8月10日、新しい兵器の試験射撃を指導された」と明らかにした。兵器の名称や特性などの言及はなく、発射場面の写真のみ数枚公開した//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が、10日に咸鏡南道の咸興(ハムン)一帯で2発の短距離発射体を発射した翌日である11日、官営メディアを通じて「新型兵器試験射撃」だったとして北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が試験発射を指導した事実を公開した。この発射体について北朝鮮は、具体的な名称や特性は明らかにしなかったが、専門家たちの間では北朝鮮が「北朝鮮版イスカンデル」ミサイル、新型ロケット砲に続き、新型戦術地対地弾道ミサイルまで公開して、北朝鮮式地対地誘導武器“3点セット”を誇示しようとしたとの評価が出ている。

 北朝鮮労働党中央委員会機関紙の労働新聞はこの日、1面で金正恩委員長が10日に新型武器の試験発射を指導した事実を伝え、「威力ある新型戦術兵器」の試験発射が連日成功したとして、その結果を分析し「設計上の要求が完ぺきに現実化」したと主張した。これは5月4日から今月10日まで相次いで7回あった短距離発射体の試験発射などを意味すると見られる。労働新聞はこのような一連の試験発射が「党が最近研究開発方向を提示したもう一つの新型兵器体系の完成」と述べた。

 政府関係者および軍事分野の専門家たちは10日、北朝鮮が撃った飛翔体を「新型短距離戦術地対地弾道ミサイル」と分析している。南側の“地対地ミサイル3銃士”である玄武、天武、ATACMS(在韓米軍の戦術地対地ミサイル)と類似の北朝鮮版地対地ミサイル“3種セット”という解釈もある。(1)KN-23“北朝鮮版イスカンデル”新型短距離弾道ミサイル(5月4・9日、7月25日、8月6日)、(2)新型大口径操縦ロケット砲(7月31日、8月2日)に続き、3番目に出てきた新型武器だからだ。

 これらの“3点セット”は、既に北朝鮮が保有していた旧型兵器より性能がグレードアップされているとの評価が支配的だ。例えばKN-23は、最大射程距離が600キロメートル以上で、射程距離が500キロメートルの既存のスカッド-Cミサイルと比較して性能が優れていると見られる。7~8月に二度公開された新型ロケット砲は、口径が400ミリ、射程距離が200キロメートル以上で精密誘導機能を搭載しており、射程距離が200キロメートルに過ぎなかった300ミリ旧型ロケット砲に比べ正確度と破壊力が高まった。特に10日に発射した新型戦術地対地弾道ミサイルは射程距離が400キロメートル以上で、射程距離300キロメートルの旧型スカッド-Bを代替しうると評価される。ある韓国政府関係者は「10日に発射された新型兵器は、外形がATACMSとよく似ている」として「北朝鮮も南側同様に地対地戦力を備えてきた印象を受ける」と指摘した。

 今回の北朝鮮の新型ミサイルが、その前の新型兵器と同じくすべて固体燃料を使う点も特徴だ。固体燃料は液体とは違い、燃料を充填する時間も別途の場所も必要なく、機動性と隠密性に優れる。液体燃料は注入時間が必要で、ミサイル防衛システムなどの軍事技術が高度化されている状況では効率が劣る。ミサイル防衛システムがミサイルの位置などを把握し正確に迎撃するために必要な時間を稼がせることになるためだ。金正恩委員長が新型兵器の試験発射を指導して、今回の武器が北朝鮮の“地形条件”に合わせて開発されたとし、「既存の兵器体系とはまた別の優れた戦術的特性」を持つと評価したこととも一脈通じている。山岳地域が多い北朝鮮の地形を考慮する時、移動式発射車両(TEL)に固体燃料を使うミサイルを載せて運搬すれば、理論的に探知網を避けるうえで有利なだけでなく、迅速な起動も可能だ。

 キム・ドンヨプ慶南大学教授は「射程距離がやや長くなり、高度は低くなり、速度は速くなったという点、そしてすべて固体燃料と移動式発射車両を利用するという点で、発射時間の短縮と発射原点(場所)の多様化により、韓米情報資産の探知および先制攻撃を困難にし、ミサイル防衛システムを無力化する目的」だとし、「結局、核でない通常兵器だけで朝鮮半島全域を目標に抑止能力を達成するための低コスト高効率システムと見える」と評価した。

ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/905299.html韓国語原文入力:2019-08-11 16:07
訳J.S

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