日本の戦犯企業である三菱重工業が、韓国人強制動員被害者賠償問題解決のための3回目の交渉要請に最終的に応じず、被害者側が三菱の韓国国内資産の現金化手続きを進めることにした。
16日、勤労挺身隊強制動員被害者損害賠償訴訟代理人団などは、「韓-日関係の発展のために対話を通じて合理的な方法を探すための努力が繰り返し失敗に終わったことに対して、深い遺憾を表わす」として「三菱資産の売却命令申立てを提出する」と明らかにした。これに先立って代理人団は先月21日、三菱側に最後の書簡を送り「7月15日までに協議の意思を明らかにしなければ、差し押さえ資産の売却を通した現金化など後続措置に入る」という立場を伝えた。
代理人団は、早い期間内に現金化作業に着手する予定だ。代理人団が裁判所に対し売却命令の申立てをした後、売却が決定されれば、差し押さえた資産を競売に付して現金化する換貨手続きに突入することになる。現在、被害者側は三菱の国内商標権2件と特許権6件を差し押さえた状態で、8億ウォン(約7300万円)相当だ。
最高裁(大法院)は昨年11月、ヤン・クムドクさんなど強制動員被害者と遺族5人に対し、三菱が1億~1億5千万ウォン(9~1400万円)の慰謝料を支給するよう宣告した。代理人団は、今年1月、2月、6月の3回にわたり三菱側に協議要請をしながら執行を遅らせてきたが、三菱はついに交渉に応じなかった。
代理人団は「被害者が90歳を超えた高齢であるだけに、法の手続きをこれ以上遅らせることはできない」という立場だ。1月には最高裁の賠償判決を受けたキム・チュンゴンさん(95)が、2月にはシム・ソンエさん(89)が、最高裁に係留中の追加訴訟結果を待つ間に死亡し、今月14日には光州(クァンジュ)地方裁判所で追加訴訟を準備していた徴用被害者イ・ヨンスクさん(89)が息を引き取った。三菱は「韓-日請求権協定で賠償問題は解決された」という立場を守っている。三菱は先月27日に株主総会を開き、こうした立場を再確認し、15日に被害者の遺族Hさんらが提起した追加損害賠償訴訟控訴審に敗訴した後、ソウル高裁に上告状を提出した。追加損害賠償訴訟弁護団は、追加原告と弁護団を設け、日本政府を相手にした訴訟も準備する計画だ。
大韓弁護士協会はこの日、日本の記者たちを相手に最高裁判決の趣旨などを説明する懇談会を開いた。ある日本の記者は「半導体の材料に対する輸出規制が今回の売却命令申立てに影響を与えたのか」と尋ね、強制動員被害者を代理したキム・セウン弁護士は「判決にともなう強制執行の手続きを進めるものであり、日本の(輸出規制)措置によってどのようにするかを決めるものではない」と答えた。
一方、日本の河野太郎外相はこの日、記者会見で三菱重工業の資産が売却される場合を念頭に置き、「万が一、日本企業に実害が及べば、必要な措置を講じざるを得ない」と明らかにしたと共同通信が報道した。河野外相は「そうしたこと(日本企業に被害が発生すること)にならないよう、韓国政府には対応を強く求めたい」と話した。