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操作された合併比率…サムスン電子副会長のために国民年金は数百億円損失

登録:2019-07-11 08:53 修正:2019-07-11 09:28
合併比率報告書操作の意味

サムスンの適正合併比率の操作説 
会計士らの供述で実体が明らかに 
 
第一毛織を歪曲評価して価値を上げ 
サムスン物産は現金資産など外して価値下げる 
 
サムスン側、報告書をもとに説得作業 
国民年金、合併賛成後に大きな損害 
 
“国政壟断”最高裁判決に影響の可能性も 
イ・ジェヨン‐朴槿惠の不正請託が争点に

2017年1月、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長がソウル市江南区のパク・ヨンス特別検察官チームの事務所に被疑者身分で出頭している=写真:共同取材団//ハンギョレ新聞社

 2015年に行われた第一毛織とサムスン物産の合併過程では、一般的な経済の常識では理解できないことが数多く起こった。サムスン物産は建設受注を減らすなど価値下げに没頭し、第一毛織は子会社のサムスンバイオロジックスのナスダック上場を予告するなど、価値上げに熱中した。結局、利益と規模が2~3倍大きいサムスン物産は第一毛織の3分の1に評価され、「1対0.35」の比率で合併が行われた。

 デロイトアンジンとサムジョンなど国内最大の会計法人は、合併を控えてこのような“異常な”合併比率が適正だという検討報告書を出した。報告書作成の背景にサムスンの非公式な要求があったのではないかという話が飛び交っていたが、デロイトアンジンの会計士らが検察で「サムスンが注文した合併比率に合わせて事実を操作した報告書を作成した」と供述し、その実体が明らかになった。

■第一毛織を過大、サムスン物産を過少評価して“操作”

 アンジンの「企業価値操作」は、ハンギョレの報道(ハンギョレ5月23日付1面)で知られた第一毛織の幽霊バイオ事業が代表的だ。アンジンは何の実体もなく「エバーランドが保有した動植物を利用し、バイオ素材やヘルスケアに活用する」という第一毛織バイオ事業部の営業価値を2兆9千億ウォン(約2700億円)と算定した。この事業は進められておらず、合併したサムスン物産の事業報告書からも姿を消した。第一毛織の子会社であるサムスンバイオロジックスの価値も、具体的な根拠もなく証券会社の報告書を引用して4兆2千億~7兆ウォン(約3800億~6500億円)とした。サムスンバイオロジックスが隠してきた兆単位のコールオプションの負債も価値評価に反映しなかった。

 一方、サムスン物産の価値は意図的に引き下げられた。合併直前に保有していた現金資産1兆7500億ウォン(約1600億円)を「営業用」に変え、企業価値評価から外した(ハンギョレ5月31日付1面)。サムスン物産が保有した1兆1100億ウォン(約1千億円)相当の鉱業権も事実上外され、鉱業権が反映されたサムスン物産商社部門の営業価値を4133億ウォン(約380億円)と算定した。このような操作を経て、サムスン物産の価値は8兆6千億~10兆6千億ウォン(7900億~9800億円)、第一毛織の価値は18兆5千億~23兆6千億ウォン(1兆7千億~2兆1800億円)とされた。

■検討報告書は国民年金の合併賛成の根拠に

 操作されたアンジンの合併比率の検討報告書は、一般株主には公開されなかったが、「国内4大会計法人であるアンジンが客観的に評価した」と伝えて合併に賛成するよう誘導する主な根拠として活用された

 最初にサムスンは、2015年5月26日に一定期間の株価をもとに第一毛織1株をサムスン物産3株と交換する「1対0.35」の合併比率を決定し、その後2カ月間は株主がこれに賛成するように説得作業を行った。当時サムスン物産の持分の11.21%を保有する筆頭株主として合併のキャスティングボートを握っていた国民年金は、2015年6月中旬、サムスン側からこの報告書を受け取り、合併比率の適切性を検討するうえで主要な資料として活用した。サムスン物産の株主総会(2015年7月17日)の一週間前に行われた国民年金の合併賛成の決定は、他の株主らも賛成するようにする“同調効果”を引き出した。

■恩恵を受けたのはイ・ジェヨン…国政壟断の最高裁判決に影響与えるか

 2015年の合併で最も大きな利益を得た人は、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長だった。グループの核心であるサムスン電子の持ち株率は0.6%に過ぎなかったが、本人が最大株主(23.2%)の第一毛織に有利に合併が行われ、支配力が強化された。イ副会長は統合したサムスン物産の持分を17%保有した最大株主になり、既存のサムスン物産が保有しているサムスン電子の持分4.1%を自分の直接的な影響力の下におくことができるようになった。参与連帯は、不当な合併でイ副会長が得た金銭的利益は2兆~3兆6千億ウォン(1840億~3300億円)にのぼり、国民年金は3300億~6千億ウォン(300億~550億円)の損を被ったと試算した。

 会計士らの合併比率報告書操作の告白は、8月以降と予想される朴槿恵(パク・クネ)前大統領とイ副会長などの“国政壟断”に対する最高裁(大法院)の判決に影響を与える可能性がある。最高裁判決の主な争点は、イ副会長が経営権引継ぎのために朴槿恵政府と不正な請託をやり取りしていたかどうかだ。2015年に合併比率を貫徹するために検討報告書まで操作したことが明らかになり、「継承作業はなかった」というサムスン側の主張がいっそう苦しくなってきた。

チェ・ヒョンジュン、イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/901375.html韓国語原文入力:2019-07-11 07:26
訳M.C

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