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サムスン、イ副会長の支配力強化のため「新事業の過大評価」も

登録:2019-05-23 08:07 修正:2019-05-23 09:47

サムスン物産・第一毛織の合併比率  
会計法人のずさんな報告書に基づく  
 
サムスンと二社の会計法人“一心同体”のように  
サムスン物産を代理したアンジン会計は  
第一毛織の資料通り過大評価  
 
エバーランドの動植物活用したバイオ事業は  
第一毛織ではなく未来戦略室の作品という疑惑も  
国民年金職員、パク・ヨンス特検の取り調べで  
「第一毛織のIR担当者も内容を知らない」

アンジンとサムスンの第一毛織の価値評価//ハンギョレ新聞社

 サムスンが2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程で、「第一毛織バイオ」という架空の事業まで動員し、第一毛織の価値を無理に引き上げようとしたのは、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の支配力の強化と直結するためだ。当時、サムスン一家の持ち株構造上、「サムスン物産の価値は低く、第一毛織は高く」評価されるほどイ副会長にとって有利だった。第一毛織の子会社であるサムスンバイオロジックス(サムスンバイオ)のコールオプション負債を隠ぺいしたのも同じ脈絡だ。

 合併推進当時、最も論議になったのは適正合併比率だった。サムスン物産と第一毛織は上場企業であるため、合併比率は法律が定めた株価によって算定される。しかし、合併に反対する側はその比率(1:0.35)が適正な企業価値を反映しておらず、サムスン物産の株主たちが損害をこうむっていると主張した。サムスン物産と第一毛織はこうした反対論理を突破する必要があり、その対応策の一つとして、形においては公正性を確保できるデロイトアンジン(アンジン)とサムジョンKPMG(サムジョン)に評価を依頼したものと見られる。実際、両会計法人の報告書は合併を貫く上で活用された。

 しかし、ハンギョレが入手した報告書の内容によると、客観的な判断を下すべき両会計法人が、サムスン側と事実上一心同体のように動いた事実が明らかになっている。

 まず、アンジンは依頼人のサムスン物産の株主らの利益のため、第一毛織を評価しなければならない義務があった。そのためには、相手企業である第一毛織の資産や事業性、未来価値などが過大評価されないよう、厳格な実体調査が求められる。しかし、実際には正反対の態度を示した。代表的な例が、実体すらなかった第一毛織バイオの営業価値を3兆ウォン(約2800億円)に評価したことだ。アンジンは具体的な事業内容はもちろん、推進日程や売上高の算定根拠などを考慮せず、第一毛織が提示した資料だけで企業価値を評価した。キム・ギョンユル会計士は「アンジンやサムジョンが巨大顧客であるサムスンの意向に背くのは難しかっただろう」とし、「事実上、サムスンが与えた数字をそのまま反映した報告書とみられる」と話した。

サムスン物産のチェ・チフン建設部門代表取締役が2015年7月7日午前、ソウル瑞草区良才洞ATセンターで開かれたサムスン物産・第一毛織の合併契約案件に関する臨時株主総会を主宰している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 両会計法人の報告書が「注文生産型」だったことを示す内容はこれだけではない。粉飾会計の疑惑が持ち上がっているサムスンバイオの企業価値評価も、示し合わせたように同じ方式が使われた。複数の証券会社のレポートの評価額を加えて出した単純平均値を適用する方式は、大型会計法人で極めて珍しい。昨年11月、共に民主党のパク・ヨンジン議員が2017年の一年間の金融監督院に寄せられた外部企業評価報告書25件を確認した結果、証券会社のレポートの平均値を適用した報告書は一件もなかった。

 さらに、「エバーランドの動植物を利用したバイオ事業」という構想も、第一毛織ではなく、合併を指揮したサムスン未来戦略室で作られたという疑惑もある。当時、この事業内容を第一毛織の内部ですら把握していなかった状況が、過去のパク・ヨンス特検チームの調査で明らかになったためだ。国民年金研究院のC研究員は「2015年6月、アンジンとサムジョンの報告書を手渡されて、第一毛織バイオ事業内容について具体的に確認するため、第一毛織IRの担当者に問い合わせたところ、担当者も内容を把握しておらず、後日電話をかけてきて『サムスンエバーランドで保有した動植物を利用したバイオ新事業を構想中だ』と教えてくれた」と供述した。

 結局、サムスンは会計法人の“ずさんな報告書”を合併実現に活用することで、第一毛織の株式23.2%を保有していたイ副会長は、この合併でサムスン電子の持分4.1%を持ったサムスン物産を通じて、サムスン電子に対する支配力をいっそう強固にした。しかし、サムスンが存在しない事業を前面に掲げ、第一毛織の企業価値を過大評価した事実が明らかになっただけに、合併の正当性をめぐる議論は激しさを増す見通しだ。また、現在最高裁で審理中のイ副会長の賄賂供与裁判と検察のサムスンバイオ粉飾会計捜査にも影響を及ぼすものとみられる。

ペ・ジヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/894978.html韓国語原文入力:2019-05-23 05:00
訳H.J

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