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ベトナムはもう一つのサムスン共和国

登録:2019-06-27 23:00 修正:2019-06-28 08:31
グローバル・サムスン持続不可能報告書(4)癒着 
15万人を雇用、ベトナム全輸出の“3分の1”はサムスン 
他の企業と異なり自社の規定が優位に 
タブレットPC配り労組を手中に
ベトナムにおける労働組合は、ベトナム労働総連盟(VGCL)しかない。この組織を率いるブイ・バン・クオン氏(55)は、ベトナム共産党中央執行委員であり二選の国会議員だった=世界労働組合連盟ホームページより//ハンギョレ新聞社
グローバル・サムスン持続不可能報告書//ハンギョレ新聞社

 グローバル超一流企業として君臨するサムスン電子は、今や韓国だけの企業ではない。超国籍企業サムスン電子は、世界の人々にどんな姿に映っているのだろうか。サムスン電子で働く労働者は、サムスンに対してどう思っているのだろうか。特にサムスン電子の主要生産基地に浮上したアジア地域の労働者の暮らしと労働の現実はどうなっているのだろうか。この質問の答えを得るために、ハンギョレはベトナム、インド、インドネシアのアジア3カ国9都市を訪ねた。2万キロ余り、地球半周分を巡って136人のサムスン電子労働者に直接会って質問調査した。国際労働団体がサムスン電子の労働条件に関する報告書を発刊したことはあるが、報道機関としては韓国内外をあわせて最初の試みだ。10人の労働者に深層インタビューし、20人余りの国際経営・労働専門家にも会った。70日にわたるグローバル・サムスン追跡記は、私たちが漠然とは察しながらも、しっかり見ようとしなかった不都合な真実を暴く。真実に向き合うことは、そのときは苦痛かもしれないが、グローバル企業としてサムスンがブランド価値を高めるためには避けられない過程だと判断する。5回に分けてグローバル超一流企業サムスン電子の持続可能性を尋ねる。

 サムスンは、ベトナムに「もう一つのサムスン共和国」を建てた。ベトナム輸出の3分の1を占める莫大な影響力で政府を動かし、超法規的な地位を享受している。

 ベトナムでサムスンが占める存在感は、まず数字で証明される。ベトナムは、輸出の71%を海外投資企業に依存しているが、このうちサムスンが40%以上を占める。サムスン電子ベトナム法人の2018年度輸出額は600億ドルに達するが、これはベトナムの全輸出額の3分の1に肉迫する。サムスンは、ギャラクシー・スマートフォンの半分ほどをベトナムで作り、15万人を雇用している。ハノイで会ったある国際労働団体の関係者は「よく韓国をサムスン共和国というが、ベトナムはそれ以上だ」として「サムスンは、毎年10%ずつ成長しているベトナムの経済指標を動かす最大の軸だ。ベトナム経済は、韓国をはじめとする東アジアから技術を持ってきて、低賃金労働者が完成品を作り、米国と欧州に輸出する構造だ。ベトナムの輸出1位品目である携帯電話は、サムスンだけが作っている。2009年、バクニン地域に世界最大規模の携帯電話工場を建ててから、サムスンはベトナム政府を実質的に統制できる資金力を持った」と話した。

 こうした物理的背景を基に、サムスンはベトナム政府と緊密な協力関係を維持している。その核心は公安だ。社会主義体制のベトナムで、公安の地位は絶対的だ。社会秩序を維持し国家体制を存続させる役割を担当し、人民を監視・統制する機能を果す。韓国のかつての中央情報部と内務部を合わせた組織と言える公安部の傘下に、市・郡・区につながる全国組織を備えている。その特性上、外部には組織がよくあらわれないが、ベトナムの国際労働団体の関係者はこれについて「(ベトナムの公安と政府は)100%サムスンの影響を受けて活動している」と指摘した。

 生産施設を運営するうえで最も気になる労組問題を解決するにあたっても、サムスンはベトナムの政府と共産党の支援を受けている。複数労組を許容しないベトナムで、労働組合はベトナム労働総連盟(VGCL)が唯一だ。この組織を率いるブイ・バン・クオン氏(55)は、ベトナム共産党中央執行委員であり、2選の国会議員だった。ベトナムの労働団体関係者たちは「ベトナム労働総連盟は、労働者を代弁する組織ではなく統治機関」だと話す。サムスンの工場労働者にとって労働組合は「誕生日に小さな贈り物をくれる組織」に過ぎない。労働者の給与の3%を組合費として徴収し、労働組合の幹部は高い賃金を受け取っている。だが、労働者の利益ではなく、海外投資家の保護のために活動している。時には地方の公安と結びつき、労働者の活動を監視しストライキの兆候を事前に把握したりもする。ある国際労働団体の関係者は、ブイ・バン・クオン委員長が「ベトナムでサムスン工場を最も絶賛する人物だろう」と断言した。彼は「ベトナム労働総連盟の行事をサムスンが後援してくれてもいる。数百人が参加する代議員大会で、参席者全員にサムスンが最新のタブレットPCを配ったこともあった」と話した。

 企業運営においてもサムスンは相当な自主性を確保している。ベトナムに進出しているソニー、パナソニックのような他の海外電子企業らは、企業構造を現地化した。生産工程を現地管理者が担当するのはもちろん、人事や労務のような中核の経営力も現地人に渡している。だが、サムスンではそうではない。サムスン工場の内部構造に詳しいベトナムの労働団体の関係者は「サムスン工場の内部構造を見ると、決定権はすべて韓国人が持ち、現地の規定ではなくサムスンだけの規定に従う。この過程で国際規範はもちろん、ベトナムの国内法にまったく従わない問題が発生しても、ベトナム政府は介入しない」と話した。

ベトナム/キム・ワン、イ・ジェヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/899511.html韓国語原文入力:2019-06-27 15:45
訳J.S

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