政府が3年以上開城(ケソン)工業団地参加企業の関係者の工団訪問を許可しなかったにもかかわらず、17日に電撃的に承認した背景には、企業関係者の資産点検要求をこれ以上先送りできないという判断とともに、6月末に予定された韓米首脳会談を控え、南北対話の突破口を開こうという意志があるものと見られる。
イ・サンミン統一部報道官は17日、政府ソウル庁舎で緊急記者会見を開き、「政府は『韓国国民の財産権保護』のため、企業関係者らの訪朝を承認することを決めた」と発表した。工場施設や設備などは企業関係者らが資金を投じて運営・管理していたにもかかわらず、2016年2月、政府が一方的に工業団地を閉鎖した後、3年3カ月の間放置された状態だ。政府の説明通りなら、訪朝を申請した企業関係者193人が訪朝しても、工場設備などを肉眼で点検するのにとどまる。施設点検のための装備などを搬入する必要がないため、別途の制裁免除措置が不要というのが政府の説明だ。開城工団参加企業の関係者は、「資産点検のための関係者の訪朝は、北朝鮮に対する制裁とは無関係だ」とし、「これまで(政府が)米国の機嫌を伺っていたが、韓国政府の決断によって実行できることだった」と指摘した。
政府がこの時点で訪朝の承認を決定したのには、韓米首脳会談を控え、南北、朝米対話のモメンタムを作らなければならないという判断が作用したものと分析される。実際、開城工団参加企業の関係者による点検が行われるためには、開城南北共同連絡事務所などを通じた南北当局間の協議が必要だ。当初開城の連絡事務所の役割は「当局間協議を緊密にし、交流と協力を円満に保障」するためだが、毎週金曜日に開くことにした南北所長会議は12週間開かれていない状況だ。イ・サンミン報道官は「開城の南北共同連絡事務所を含め、多角的に接触しており、(これからも)進めていく」と述べた。
今年2月、ベトナムのハノイで開かれた2回目の朝米首脳会談が物別れに終わった後、朝米はもとより、南北間対話が膠着した状況で、米国が北朝鮮との対話の糸口を模索しようという韓国政府の努力を反対する名分がないという点も作用したものとみられる。政府は今回の訪朝を承認する過程で、米国と協議し、市民の財産権保護の側面から資産点検のための訪朝をこれ以上先送りできないと説明し続けたという。韓国政府は昨年10月末、開城工団参加企業の関係者の申請を許可する計画だったが、米国の反対で実現できなかった。こうした事例からして、「北朝鮮に道を開いてあげるわけにはいかない」という米国の立場にも微妙な変化が生じたということだ。同報道官は「米国と企業関係者の資産点検という訪朝推進の趣旨や目的、性格など必要な内容を共有した。米国も韓国の立場を十分理解している」と説明した。
開城工団参加企業の関係者らは同日、政府の訪朝承認について「遅すぎた感は否めないが、歓迎する」というムードだ。チョン・ギソプ開城工業団地参加企業協会会長は、ハンギョレとの電話インタビューで「私たちは実質的に3年以上の間、設備がどれほど壊れたのか、どんなものを替えなければならないか、損傷した部分を把握するため行く」とし、「大きな工場の場合、一人でチェックするのは難しいため、工場の規模別に人員数に差を設け、1社当たり(点検期間を)2日以上もらいたい」と話した。また「いつ工団が再開するか分からないが、施設点検がまず必要だ。一回限りの訪問ではないことを願っている」と付け加えた。