ドナルド・トランプ米政府が2回目の朝米首脳会談を控え、北朝鮮の非核化を促進するための“インセンティブ”として、南北経済協力“パッケージ”を検討しているという。2回目の朝米首脳会談に向けた双方の実務交渉も近く再開されるものと見られ、朝米が2月末の首脳会談の準備を加速化しているものと見られる。
米国の保守系日刊紙「ワシントンタイムズ」は28日(現地時間)付で、「トランプ政権が、北朝鮮の指導者金正恩(キム・ジョンウン)が核兵器計画廃棄に向けた具体的な措置を取るよう誘導するため、特別経済パッケージ構想を静かに用意している」と報じた。同紙は、この計画に詳しい消息筋の話として、米国の対北朝鮮交渉を率いる国務省のスティーブン・ビーガン北朝鮮特別代表がこの構想を主導していると報道した。
同紙は、この構想が、韓国や日本、欧州連合(EU)などから、北朝鮮の社会基盤施設と開発プロジェクトに使われる数十億ドル規模の現金提供の約束を確保することに焦点を合わせていると報じた。昨年6月にシンガポールで開かれた朝米首脳会談以降、非核化プロセスに具体的な進展が見られなかったことを受け、トランプ政権内で金委員長に“インセンティブ”を提供する必要性があるというコンセンサスが形成されたという。外交専門家の間でも、トランプ大統領がこれまで数回言及した非核化による「北朝鮮の明るい未来」像を具体化する作業として、南北経済協力を中心とする案が検討されていると伝えられている。
また、この構想には、北朝鮮が非核化を履行すれば、米国と同盟国が経済的見返りを提供することを証明するため、一種の「エスクロー口座」(Escrow Account:預託金勘定)を作る案も含まれていると同紙は報道したが、外交関係者の間では現実性が低いと評価されている。エスクローは特定の契約が完全に履行されるまで、書類や金を第3者に預託することを意味するが、かつて米国はイランの核合意を引き出すのに、制裁で(イランが)沒収された10億ドル(約1兆1000億ウォン)を活用したことがある。
このような中、2回目の朝米首脳会談に向けた両者の実務交渉が近く再開される見込みだ。北朝鮮のキム・ヒョクチョル元駐スペイン大使と米国務省のビーガン北朝鮮政策特別代表が、18日にワシントンで初顔合わせをしてから、2度目の対面だ。
複数の外交消息筋は、キム元大使とビーガン特別代表が旧正月の連休前後に協議を開き、非核化と相応措置など首脳会談の“議題”について調整する予定だと明らかにした。ある消息筋は「早ければ今週末に始まる可能性がある」と述べた。ソ・フン国家情報院長も29日、国会情報委員会全体会議で「朝米実務交渉で、警護や儀典など2回目の朝米首脳会談に対する実務準備と共に、共同宣言文の文案を整理・調整するための議題の調整に入ると見られる」と述べたと、イ・ヘフン情報委員長がブリーフィングを通じて伝えた。
今回の朝米実務交渉を通じて、2回目の首脳会談の具体的な日時と場所が確定するかどうかも関心事だ。ある外交消息筋は「2月末の開催というタイムテーブルには変動がないと聞いている」とし、「具体的な場所をめぐり、双方の最終調整がまだ終わっていないようだ」と伝えた。
これと関連し、米国務省は、ビーガン特別代表が今月31日(現地時間)、カリフォルニア州にあるスタンフォード大学を訪問し、同大学のウォルター・H・ショレンスティン・アジア太平洋研究センター(APARC)で、北朝鮮の「最終的かつ完全に検証された非核化」(FFVD)に向けた米国の努力について講演する予定だと発表した。スタンフォード大学は、ビーガン特別代表が講演後に聴衆の前で、同大学の朝鮮半島専門家のロバート・カーリン国際安保協力センター研究員と対談する予定だと明らかにした。スタンフォード大学アジア太平洋研究センターには、朝米の水面下の調整で核心的な役割を果たし、昨年末に引退した韓国系米国人のアンドリュー・キム前中央情報局(CIA)コリアミッションセンター長が訪問学者として在籍している。ビーガン特別代表は、北朝鮮との実務交渉に先立ち、米国の立場を公式に再確認し、戦略の整備を図るものと見られる。