ハン・ドクス大統領権限代行首相が違憲的な「大統領任命枠の憲法裁判官」指名後、激しい批判を受けている中、政界内外ではハン権限代行の日和見主義的な面が話題になっている。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権最後の首相を務めて以来、2022年尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で最初の首相に抜擢され、14年ぶりに首相職に復帰したハン権限代行にはいつも「老獪な日和見主義者」というレッテルが貼られてきた。
進歩(革新)政権と保守政権で共に起用された初の首相という珍記録を立てたハン権限代行は、就任100日を迎え「これが国民のための最後の奉仕という初心を忘れない」と述べた。
しかし、ハン権限代行の経歴は奉仕とは程遠いと言われてきた。
ハン権限代行は、首相候補に指名される直前まで、「金・張法律事務所」の顧問として働いた。同法律事務所で超高額の報酬を受け取っていたハン権限代行は、大韓民国の公職社会のモラルハザードを代表すると批判された。保守論客のチョン・ギュジェ前韓国経済新聞主筆は9日、フェイスブックへの投稿で、ハン権限代行を見る度に「無能だが、日和見主義的で、老獪な職業官僚の印象を受ける」と綴った。政治専門記者のチャン・ユンソン氏もこの日、ハンギョレのライブ時事トークショー「ニュースダイブ」で、「ハン・ドクス権限代行は法人カードと官用車さえあれば良いという噂もある」と皮肉を言った。
一時は共に政権を担った野党でも、ハン権限代行に対する評価が低いのは、出世志向的なスタイルと無関係ではなさそうだ。
ハン権限代行が尹錫悦政権の初代首相に指名され、人事聴聞を待っていた当時、野党では、民主政権で勢いに乗っていたハン権限代行が民主政権に向かって唾を吐くような振舞いだったエピソードが取り沙汰された。特に、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で国務調整室長、経済副首相兼財政経済部長官、首相まで務めたにもかかわらず、盧元大統領の葬儀に参列しなかったことは「人の道を外れた」とまで言われた。野党関係者にとって、このことは強烈な印象を残したという。
ハン権限代行の「出身地隠し」も議論を呼んだ。
金大中(キム・デジュン)政権で大統領府秘書室長を務めた「共に民主党」のパク・チウォン議員らは、ハン権限代行が保守政権では昇進のために全羅北道全州(チョンジュ)出身であることを明かさなかったが、金大中政権が発足すると、この事実を自慢げに語ったというエピソードを伝えた。ハン権限代行はこれについて「原籍と本籍を一緒に使うことになっていた時期に錯誤や誤解などで混同した可能性がある」と釈明した。しかし、これを言葉通り受け取る野党関係者はほとんどいない。ハン権限代行の承認表決に参加した共に民主党のアン・ミンソク元議員は「日和見主義者ハン・ドクスの聴聞会、この方の人生の軌跡と価値観をどのように評価すべきか悩む。盧武鉉大統領の『日和見主義者は包摂の対象であっても、指導者にはなれない』という言葉が頭に浮かぶ苦しい日だ」とも述べた。
ハン権限代行は、越権的な大統領任命枠の憲法裁判官の指名で再び物議を醸した。
野党は、ハン権限代行が、尹錫悦弾劾審判が行われている間は形式的な権限行使にすぎない国会推薦枠の憲法裁判官候補の任命を拒否したにもかかわらず、尹前大統領の罷免後、突然態度を変えた背景に注目している。一部では、ハン権限代行が、尹錫悦前大統領の息のかかったイ・ワンギュ憲法裁判官候補を指名することで、与党「国民の力」の大統領選候補にあがることを狙った「野心」をあらわにしたのではないかと推測している。
これに対し、ハン権限代行は「大統領選挙の大の字も言わないでほしい」と否定した。
しかし、ハン権限代行のこれまでの歩みのせいで、疑念は簡単には消えそうにない。
民主党のチュ・ミエ議員は同日、フェイスブックへの投稿で「老獪な日和見主義者の極みになるつもりなのか。内乱の擁護と(政治ブローカー)ミョン・テギュンの沼に陥り、大統領選候補が消えた国民の力の策略に振り回されているのか。ハン・ドクスの弾劾をためらう理由はない」と綴った。