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[特派員コラム]北朝鮮の核問題「スモール・ディール」は“スモール”ではない

登録:2019-01-25 08:05 修正:2019-01-25 12:38
今月19日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスを訪問した北朝鮮の金英哲労働党副委員長一行と執務室で話し合っている=ダン・スカビーノ・ホワイトハウスソーシャルメディア局長のツイッターよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長がワシントンに飛んできた17日の昼、彼の宿泊先を突き止めようと、ホワイトハウス周辺のホテル6カ所を次々と訪ねた。ところが、恥ずかしくも空振りに終わった。韓米日の記者たちが血眼になって探し回ったが、ベールに包まれていた宿泊先は、金副委員長の空港着陸時間が差し迫ってようやく明らかになった。セキュリティーと警護が特に厳しいと感じたのは、彼のホテルへの出入りだった。金副委員長はホテル裏側の貨物用通路で出入りした。記者団が「ゴミ箱でも片付けておけばいいのに…」と思わず漏らすほど、殺風景だった。昨年6月の訪米の際、取材陣に見せた笑顔もなかった。それだけ、金副委員長は今回の訪米から“イベント性”を排除し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長のメッセンジャーとして、米国側と内容の協議に集中した様子だった。ホワイトハウスが公開した写真を見ても、金副委員長はキム・ヒョクチョルやパク・チョル、キム・ソンヘらを引き連れ、トランプ大統領と非常に真剣な対話を交わしたものとみられる。

 米国も非常に慎重だった。トランプ大統領が連邦政府のシャットダウンの中、珍しく遂行した業務が、北朝鮮を「非常に特別な脅威」とした「ミサイル防衛検討報告書」の発表と、金副委員長との面会だ。ホワイトハウスはその直後、トランプ大統領就任2周年の成果を広報する資料で、朝米首脳会談(昨年6月)を対外政策の冒頭に配置した。

 このような姿から、いくつかの点が明確になる。トランプ大統領は朝鮮半島の非核化・平和を最大業績として残すため、北朝鮮との対話をあきらめず、何としても2月末の2回目の朝米首脳会談の開催を推し進めるだろうという点だ。また、両首脳とも第1回会談よりは可視的な成果を出すため、力を注いでいる様子だ。

 特に、この期間にトランプ大統領が昨年には発表を見送ったミサイル防衛(MD)検討報告書を公開し、マイク・ポンペオ国務長官が「北朝鮮の核・ミサイル能力を減らすことを望んでいる」と述べたことから、朝米協議に北朝鮮大陸間弾道ミサイル(ICBM)の生産中断や廃棄が含まれる可能性もある。米国が北朝鮮の大陸間弾道ミサイルや核燃料、核弾頭の生産を中断する「核凍結」をスタート地点にし、段階的な非核化に乗り出すという見通しも示されている。

 しかし、米政界には「トランプ大統領が大まかに合意し、勝利を宣言するだろう」という懸念が依然として残っている。トランプ大統領が不満をもらしたように、2017年11月以降1年2カ月間にわたり、北朝鮮の核・ミサイル実験がなかった「素晴らしい進展」を高く評価するメディアはほとんどない。

 北朝鮮が核兵器・物質・施設を一度にすべて公開・廃棄し、米国も直ちに制裁を解除して国交樹立まで進むのはいいことだが、それが現実的に不可能であることもまた、多くの人々が実感している。非核化ロードマップを共有するものの、実行は段階的に、「行動対行動」で進めざるを得ない。そうでなければ、いつどこへ突き進むか分からない対峙と緊張に耐えなければならない。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 1回目の朝米首脳会談後の停滞期が単なる“失われた7カ月”だったわけではないようだ。懐疑論に満ちた米国でも、現実論が台頭しているからだ。下院外交委アジア太平洋小委委員長のブラッド・シャーマン民主党議員は最近「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」とのインタビューで、「もう少し現実的な目標を持つべきだ」とし、ミサイル技術の凍結に言及した。米国外交協会のシーラ・スミス先任研究員は「ラジオ・フリー・アジア」に「北朝鮮が核申告書の提出に同意しなければ、少なくとも核凍結と大陸間弾道ミサイルの廃棄で両国が信頼を築き、次の段階に進展させる契機を作ることが重要だ」と述べた。韓国内ではこれを「スモール・ディール」と呼ぶが、スモール・ディールは決して“スモール”ではない。チョン・セヒョン元統一部長官の言うように、「最も現実的なアプローチ」だ。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/879775.html韓国語原文入力:2019-01-24 19:35
訳H.J

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