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ゴルフ客のセクハラに「出入禁止」…キャディー「MeTooのパワー」

登録:2019-01-29 09:08 修正:2019-01-29 10:40
[#MeToo、勇気が作った1年(2)]#MeTooが世の中を変えた 

私はこんな目にあったが 
他の人たちは経験しないでほしい… 
「恐れない」発言に勇気づけられ 
次の人のための勇気につながる 
 
「不当さを変えたいという 
意志であり変化に対する希望」 
彼女たちは被害者ではなく生存者だ

[#MeToo、勇気が作った1年] 2018年1月29日、ソ・ジヒョン検事の告発により、韓国の#MeToo(ミートゥー)運動が始まった。女性たちは再び語り始めた。性暴力被害の生存者の告発に行動を共にするという連帯も続いた。彼女らの言うことは、これまで韓国社会が黙認してきた歪んだ権力関係に対する問題提起であり、新しい市民性が必要だという叫びだ。“#MeToo”に韓国社会はどう応えているか。3回にわたって連載する。

#MeToo運動を通して女性の勇気と連帯がお互いに繋がっている=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 昨年11月、京畿道のSゴルフ場では、キャディー(競技補助員)の1人が客のセクハラ発言について問題を提起すると、ゴルフ場側はその客のゴルフ場への出入りを完全に禁止した。この客が含まれた団体チーム全員の出入りも1年禁止した。さらに「セクハラ発言をした場合、出入りを禁止します」という案内文が出入り口の前面に貼られた。常時行われていたセクハラだが、異例の断固たる対処だった。

 Sゴルフ場の関係者は「間違いなく#MeTooの影響」だと強調した。同関係者は「その客が訪れたとき、キャディーの立場としては変えてほしいと言えば済むが、他の同僚がこうした被害を受けないでほしいということから(そのキャディーが)勇気を出したという」と説明した。セクハラにさらされがちだったキャディーたちが、ややもすると解雇の口実になることを「恐れず」言い出したのだ。「私さえ我慢すればいい」ではなく、「他の仲間にもしないでくれ」という話を、キャディーたちができるようになったのは#MeTooの影響だということだ。

 全国女性労働組合のチェ・スニム副委員長は「コールセンターやゴルフ場でサービス業に携わる女性労働者たちがたびたび『#MeTooの恩恵を私たちが受けている』と話している」と伝えた。このように「私だけの経験」は女性たちが口を開くことを通じて「私たちの経験」に広がった。「これ以上繰り返させない」、「#MeToo」運動が韓国社会に芽生えさせた芽だ。

 「私のことを“アートビスト”(芸術家と運動家を合わせた言葉)だという言うんです」。#MeTooは平凡な人を運動家に変身させた。昨年2月、演劇界の「生ける伝説」と呼ばれた演出家オ・テソク氏のセクハラを告発した演出家のパク・ヨンヒ氏の言葉だ。パク氏は昨年、スウェーデンの文化芸術界の#MeToo運動を率いた俳優スザンナ・ディルベルを韓国に招待し、スウェーデンの#MeToo運動を紹介した。告発後、うつ病がひどくなり旅立ったスウェーデンで、偶然にも#MeToo運動のニュースを聞き、ようやくディルベルを紹介してもらった。置かれた環境は違ったが、最初の出会いで互いを「シスター(姉妹)」と呼ぶほど、同じもどかしさと怒りがあった。

 演劇界の環境を変えることはパク氏の使命になった。2月には性暴力反対演劇人行動、ソウル市性平等センターとともに「シカゴ・シアター・スタンダード」(CTS)を作った米国の俳優ローラ・フィッシャーを招待し、ワークショップを開催する。シカゴ・シアター・スタンダードは2015年、米シカゴで性暴力被害を告発した俳優と連帯者が共同で作った一種の「暴力・差別禁止規約」で、「人の身体・服・性別または性的志向に対して不快な発言をしない」「同意を得ていない不適切な身体接触はしない」など、状況別・役割別に守る規律を盛り込んでいる。

 自覚と連帯も#MeTooがもたらしたもう一つのプレゼントだ。性暴力はこれまで「被害者なき犯罪」だった。被害者は隠れ、また隠さなければならなかった。20代の女性「デビー」(ニックネーム)は「日常で起きるセクハラ・わいせつ行為は被害者から指摘するのは容易ではなかった。周りから指摘してくれればようやく『自分はされてはならないことをされている』ということを早く認知できる」とし、「#MeToo運動は(指摘してくれることと)同じような効果がある」と述べた。

 先立って告発した人の勇気は、次の人のための自分の勇気につながった。「国会第1号#MeToo」をした秘書官のCさんは「私よりも多くの人々が事前に勇気を出したことに刺激された」とし、「私も私の役割をしなければならないと思った」と#MeTooを決心した理由を明らかにした。似たような経験をした後輩たちが悩みを打ち明けるたびに心の片隅に溜まっていた負債の念、私が告発すれば次の被害者は出ないのではないかという希望、他の誰かも勇気を出せるのではないかという期待が、険しい道が予想されても彼女の口を開かせた動力だ。そのため「被害者」の代わりに「生存者」や「告発者」と呼んでくれと、彼女らは言う。「変化のために語った人々」だからだ。

 「#MeTooの生存者を見ると、単純に『私の被害がこうだ』と見せるために口を開いた人はほとんどいません。『私はこんな目に遭ったが、他の人は同じことを経験しないでほしい』ということが強調されています。大多数がそうです」。演出家パク・ヨンヒ氏の言葉だ。忘れたかった苦痛をさらけ出すただ一つの理由は、「不当さを変えたいという意志と変化に対する希望」だと、彼女は繰り返し強調した。

 変化は遅く、抵抗は強まる。#MeToo以降を推し量ることは難しいが、以前とは違う運動の場に彼らが立っていることは明らかだ。パク氏は「12ラウンドのボクシングの試合で、今は2~3ラウンドが終わっただけ」と語った。女性、障害者、マイノリティという理由で戦争のように生きていかなければならない社会にならないよう「また戦場に出る」と、彼女は再び息を整えた。

パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/880258.html韓国語原文入力:2019-01-29 07:27
訳M.C

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