本文に移動

性暴力被害者10人中7人が職場を去る…「日常への復帰」支援急がれる

登録:2019-01-28 08:21 修正:2019-01-29 07:35
[#MeToo、勇気が作った1年] 
 
性暴力被害者の「労働権の保障」は 
日常回復の核心となる 
「被害者に不利益与えた場合は厳罰」 
決定権者の断固たる対処が不可欠 
 
性暴力相談所「日常回復プロジェクト」 
「人間らしく生きる権利」の保障に集中

[#MeToo、勇気が作った1年] 2018年1月29日、ソ・ジヒョン検事の告発により、韓国の#MeToo(ミートゥー)運動が始まった。女性たちは再び語り始めた。性暴力被害の生存者の告発に行動を共にするという連帯も続いた。彼らの言うことは、これまで韓国社会が黙認してきた歪んだ権力関係に対する問題提起であり、もはや新しい市民性が必要だという叫びだ。“#MeToo”に韓国社会はどう応えているか。3回にわたって連載する。

グラフィック=チョン・ヒヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「セクハラ被害者である陳情者が復職後に再び敵対的勤務環境に置かれ、望まない経歴断絶に至らないよう、陳情者の意思を積極的に考慮して、陳情者をCBS全南放送本部以外の勤務地に転補措置することを勧告する」

 職場内のセクハラを告発した後、不当解雇にあったカン・ミンジュ元CBSプロデューサーが提出した陳情に対し、国家人権委員会が今月3日に決定した勧告事項だ。今回の人権委の決定は、積極的な被害者と加害者の隔離措置を明示した点で、これまでの決定よりも進展した内容と評価されている。2012年以降の人権委のセクハラ関連決定は、大半が「セクハラ予防、人権教育の実施」を勧告するものだった。

 それに対し、人権委は今回の決定で、全羅南道CBSが職員15人ほどの小規模事業場であることを考慮し、カン元プロデューサーが該当勤務地に復帰した場合、「加害者に有利な供述をしたほかの構成員とも円満な関係を保つことが困難になる可能性がある」、「会社運営理事会が地域の実力者などで構成され、地域社会関連プログラムを製作しなければならない時事番組のプロデューサーにとっては、勤務環境が悪化する蓋然性がある」と明記した。2次被害を防ぐための措置まで勧告したのだ。

 このようにセクハラ・性暴力被害者の労働権を保障するのは、被害者に日常を回復させる核心となる。事件が発生した場合、これまで仕事を辞めざるを得なかったのは、たいてい被害者側だった。実際、「ソウル女性労働者会 平等の電話」が2014年から2016年まで被害来談者231人を対象に調査した結果によると、回答者の72%が事件後に退社しており、そのうち半数以上(57%)は事件発生1カ月以内に行われた。

 韓国女性団体連合のペク・ミスン常任代表は「問題を提起した被害者を、まるで組織に害を与えた人であるかのように見る雰囲気が続く場合が多い」とし、「被害者に対する不利益が発生した場合、厳罰するという決定権者たちの断固たる対処が不可欠」だと話した。

 性暴力被害者を支援する「日常回復プロジェクト」もある。昨年から韓国性暴力相談所が実施しているこのプロジェクトは、性暴力被害者に教育費や文化費、旅行費などに使える50万~70万ウォン以内の支援金を提供する。

 昨年、この支援金を受け取った被害者らは、ペットの飼料を購入したり、旅行に出かけたり、自分を支援してくれた人たちと食事をするのに使ったという。韓国性暴力相談所のキム・ヘジョン副所長は「これまでDVなど、暴力被害者らのための政策は、大半が『自立すればお金を支援する』というようなものだった。職業訓練などを提供し、“自立”を条件に掲げるものだった」とし、「今回のプロジェクトは“自立”そのもの、すなわち被害者が人間らしく生きる権利、日常生活を維持する力を保障することに集中した」と説明した。

 憂うつ、一人ぼっち、みすぼらしいなどの“被害者像”に対する通念に「日常回復プロジェクト」は真っ向から挑戦する。その代わり、自分を愛しみ、自分を気づかうよう 性暴力被害者たちに勧める。

 “#MeToo”を通して韓国社会はどれだけ変わったのだろうか。その答えは、「被害後もなぜ職場に残っているのか」と問いただす代わりに「なぜ被害者だけが職場を去らなければならないのか」と、「つらいと言っていたのに、なぜ旅行に出かけるのか」と問い詰める代わりに、「旅行を通じて傷をいやしてほしい」と被害者に手を差し伸べられるようになってから、ようやく見つかるものであろう。

パク・ダヘ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/880095.html韓国語原文入力:2019-01-2806:28
訳H.J

関連記事