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[ニュース分析]「大統領より最高裁判事が上」…裁判所、元最高裁判事の拘束令状棄却

登録:2018-12-08 09:55 修正:2018-12-08 18:03
パク・ビョンデ、コ・ヨンハン元最高裁判事、令状棄却の理由分析
パク・ビョンデ(左)、コ・ヨンハン元最高裁判事=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 7日、裁判所がパク・ビョンデ、コ・ヨンハン元最高裁判事の拘束令状を棄却し、波紋が広がっている。元最高裁判事とヤン・スンテ元最高裁長官に免罪符を与えようとする「事前布石」ではないかという懸念のためだ。ともすれば、拘束起訴されたイム・ジョンホン元裁判所事務総局次長が、大統領府との交感のもと数年間続いた裁判介入と裁判官査察の責任を一人で負う可能性があるということだ。令状棄却の理由を見た裁判所内部では「裁判所事務総局の構造上、事務総長を務めた二人の元最高裁判事を除いては司法壟断を説明することができない。誰よりもよく知っている裁判所がこうした判断を下したのは、結局“ヤン・スンテ保護”とみられる」という指摘が多かった。元大統領を2人も拘束した裁判所のこのような態度に、「最高裁判事は大統領より上」という言葉も出た。

■共謀関係の成立は疑問?

ソウル中央地裁のイム・ミンソン令状担当部長判事は10月27日、「犯罪事実の相当部分が疎明されている」として、イム元次長の拘束令状を発行した。そうしたイム部長判事が、今度はイム元次長の起訴状に31回も「共謀者」として登場するパク元最高裁判事に対して「犯罪容疑の相当部分で被疑者の共謀関係の成立に疑問の余地がある」と判断した。コ元最高裁判事の拘束令状を棄却したミョン・ジェグォン令状専担部長判事は「一部の犯罪事実から共謀の有無に対する疎明程度」に触れた。裁判に入ったイム元次長の犯罪事実の中には、コ元最高裁判事が18回にわたり「共謀」したと出て来る。イム元次長のときは「疎明」された犯罪容疑が、2人の元最高裁判事のときは「疑問の余地」を残すということで、前後が合わない。

 ある地裁の部長判事は「イム元次長を拘束するときには疎明されたと判断した犯罪事実が、その上司である元最高裁判事には適用されなかった。事務総局の垂直的関係、特に有力な次期最高裁長官で、司法行政を掌握してきたパク元最高裁判事の地位を考慮すればなおさら納得できない」と話した。彼は「イム元次長が最高裁長官に並ぶパク元最高裁判事を“パッシング”し、ヤン元最高裁長官に直接報告した可能性はない」と述べた。別の判事も「ヤン元最高裁長官が直接イム元次長に指示するケースは一部あっただろうが、報告の段階でイム元次長が『パク・ビョンデ』の存在を無視するということは、事務総局内部ではあり得ないことだ」と述べた。また別の判事は「それでは何年間イム・ジョンホン一人が秘かにそんなことをしていたというのか」と問い返した。

 これは裁判所が拘束令状を発行して有罪を言い渡した朴槿恵(パク・クネ)政府の「文化芸術界ブラックリスト事件」とも比較される。「朴槿恵大統領→金淇春(キム・ギチュン)大統領秘書室長→大統領府秘書官→文化体育観光部長官」と続く共謀関係が認められ、有罪が言い渡された。ある弁護士は「上級者は指示を否定し、下級者は上部に不利な供述をしない状況なので、共謀関係を立証する証拠が足りなかった可能性もある」としながらも「中間管理者が口をつぐんで上級者が処罰を受けなくなるならば、こうした類型の組織犯罪で処罰の公平性問題が発生し続ける」と指摘した。

■証拠が確保されたから棄却?

イム・ミンソン部長判事は「すでに多数の関連証拠資料が収集されている。証拠隠滅の懸念があるとは考えにくい」とし、パク元最高裁判事の拘束令状を棄却した。ミョン・ジェグォン部長判事も「被疑者(コ・ヨンハン)の住居地押収捜索を含め、広範囲な証拠収集が行われた」と棄却事由を明らかにした。

 裁判所の一部では「共謀関係が成立しないと言っておきながら、『証拠は収集された』というのはつじつまが合わない」と指摘する。あえてこうした表現を入れた理由が、今後検察が補強捜査を通じて追加の証拠を含めた拘束令状を再請求しても、「すでに広範囲な資料が収集されたが疎明は足りない」とし、再び令状を棄却するための“非常口”と見る見方もある。

 「広範囲な証拠収集」を強調しながらも、犯罪容疑に対する「疎明」には疑問を提起したことをめぐり、令状審査ではなく事実上裁判段階の有罪・無罪の判断だという指摘も出ている。また、別の部長判事は「共謀関係などは有罪無罪の問題ではなく、むしろ量刑を判断する段階で考慮すべき事案」だと話した。

 住居地への家宅捜索を強調したのも異例のことだ。刑事事件で拘束令状を請求するほどの事案なら、普通「住居地家宅捜索」は基本的に行われる。一般の刑事犯には当然の手続きが、「前職最高裁判事」には拘束令状を棄却する特別な名分になったのだ。令状棄却の事由に「逃走の恐れはない」とは明示しなかったが、イム・ミンソン部長判事は「被疑者の住居および職業、家族関係などを総合」して令状を棄却したと明らかにした。特に「家族関係」にまで言及したのは異例のことだ。前日、パク元最高裁判事と弁護人は「93歳の老母」について触れ、「自宅に戻れるかは判事に掛かっている、拘束を免れるようにしてほしい」と要求したという。

キム・ミンギョン、コ・ハンソル、チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/873539.html韓国語原文入力:2018-12-07 20:44
訳M.C

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