「ときどき陸から来た警官が激しくデモを鎮圧する様子が思い出され、胸がどきどきする時があります」「海軍基地に反対する住民たちとの対立の記憶のため、まだ心の片隅が石のように重いです」
2007年に済州道西帰浦市(ソギポシ)の江汀村(カンジョンマウル)が海軍基地の建設地に決定された後、村の共同体は激しい葛藤に巻き込まれた。住民間の賛否両論が激しくなり、毎年村の運動会を開いて新年の挨拶を交わしていた隣人が互いに後ろ指を差しながら誹謗合戦を繰り広げた。墓の草刈りを一緒にした一族の人同士が往来を断ち、近かった親類の慶弔事もやりすごす時があった。10年は、海軍基地の葛藤が残した傷を癒やすにはあまりにも短い歳月だった。
済州道と済州広域精神健康福祉センターが共同で実施し21日に公開した健康調査で、江汀村の住民の10人中3人は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいることが確認された。調査は、江汀村の住民1918人のうちアンケートに応じた713人を対象に、今年3月15日から6月30日まで行われた。江汀村の住民を対象に健康状態、精神健康などを包括的に調査したのは今回が初めてだ。
心的外傷後ストレス障害を訴えた住民が30%に達したのは、済州4・3の被害者らを対象に2015年に実施した精神健康調査で39.1%が同じ症状を訴えたことに匹敵する水準だ。12.8%はうつ症状群と調査され、最近1カ月で1回以上自殺を考えた住民も20.3%に上った。2013年の国民健康影響調査で自殺を考えたことがあると回答した割合4.6%と比べれば、非常に高いレベルだと同センターは明らかにした。また、自分の健康状態が良いと答えた人は36.8%にとどまり、2017年の済州地域社会健康調査時の46.6%より低かった。
海軍基地建設については、調査対象者の半分の49.9%が対人関係のストレスを経験したと答え、家族間のストレスを経験したという回答も25.2%にのぼった。地域住民との対立や地域社会で不利益を経験したケースも36.8%に達した。
自分の身体の状態を変化させた要因としては、「過度なストレス」が、心理状態の変化要因としては「地域住民間の対立」がそれぞれ1位に挙げられた。住民は身体的、精神的な困難を解決するための方法として「村共同体の回復プログラムを先行すべきだ」と答えた。
済州広域精神健康福祉センターのキム・ムンドゥ所長(済州大医科大学教授)は「PTSD症状群から社会心理的ストレスが高いと評価され、社会的支持を受けられず自殺傾向も高いと評価される。彼らに対する医療支援と心理支援が急がれると分析された」と話した。済州道は江汀村の住民のために常設の健康相談室を運営し、精神健康教育および心理治癒プログラムを支援する方針だ。精神健康に異常症状のある住民には、専門医の個別相談などを支援する計画だ。