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[コラム]「トランプがこんな人だって知らなかったのか?」

登録:2018-11-01 23:46 修正:2018-11-02 07:51
ドナルド・トランプ米大統領が先月31日、フロリダ州フォートマイヤーズで演説しているなか支持者たちが「壁を完成させろ」と書いたプラカードを振りかざしている=フォートマイヤーズ/EPA 聯合ニュース

 「爆弾が配達されたのを見たでしょう?トランプが世界に憎悪をまき散らしています」

 バラク・オバマ前大統領など“反トランプ”の人々に爆発物小包が配達されたというニュースで全米が朝からざわついた先月24日、米国のある専門家は昼食のテーブルに座るやいなや話し始めた。彼は「あの人は『これは私と関係ない』と言うだろう。私は共和党を支持するが、トランプは嫌いだ」として首を横に振った。

 同じ日の夕方には民主党支持者から同じ話を聞いた。ある白人女性が記者に向かって自分から言い出したのが爆弾の話だ。「爆弾が配達されたというのに、トランプは今この時間に遊説(ウィスコンシン州)しているんですって。あの人が何の話をするかも分かっています。『これは私がしたことではない』」

 言うとおりだった。この日昼から、大多数のマスコミが爆発物小包の一つの原因としてドナルド・トランプ大統領が吐き出してきた分裂と憎悪の言葉を挙げたが、トランプ大統領は「団結しなければならない時」と言って「マスコミも声を和らげ、限りない敵対感、否定的な嘘の攻撃を中断する責任がある」とマスコミに矛先を転じた。

 そして3日後の27日には、ペンシルバニア州ピッツバーグのユダヤ教の会堂(シナゴーグ)で、反ユダヤ主義者の銃器乱射惨事が起きた。特定の集団に対する憎悪犯罪の側面と、米国の難題である銃器規制問題が絡んだ、複雑で波紋の大きい事件だ。だが、トランプ大統領は“悪口”をいささかも控えようとはしなかった。彼は「トランプ大統領と共和党が政治暴力の側面で作り出した環境」をこれらの事件の背景に指摘する批判者を「すぐに金が底をつく狂ったやつら」と非難した。それと同時に“偽ニュース”叩きを続ける。

 個人的には、ワシントンで過ごしている時間はトランプ時代になり荒廃した米国社会を体験する期間だ。同僚記者は、トランプ候補時期の遊説取材に行った時「ここにいる白人たちは危険だから、私のそばにいろ」という“気のいい”米国人に会って幸いだったという経験談をしてくれた。ある現地人は、ホワイトハウスの前で開かれた白人優越主義者の集会に取材に行こうとする記者に「気を付けろ」と警告した。ある海外同胞は「道を歩いていると白人が私に『あっちに行け』と無遠慮に大声を張り上げるのを、トランプ政府になって初めて経験した」として「白人が少数人種に敵対感を表わすのが当然の雰囲気になった」と話した。

 トランプ大統領が「怒れる暴徒に金を出す人」と名指ししたジョージ・ソロスの息子アレクサンダーは、最近ニューヨークタイムズへの寄稿で「人々が自分の考えを言うと、個人的敵対感とソーシャルメディアでの憎悪メッセージ、殺害の脅迫を受けることがあまりにも“正常”になってしまった」と指摘した。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 今トランプ大統領は、中間選挙が近づくにつれ露骨に“恐怖と憤怒”戦略に出た。米国に向かって歩いてきている中米の人々を「侵略者」、「犯罪者」と呼び、彼らが米国-メキシコ国境に到着するには数カ月かかるかも知れないのに、大規模兵力を投じて、憲法に明示された「出生市民権」を大統領の行政命令で廃止に出た。絶えず攻撃対象を探して、悪魔化して、根拠のない陰謀説まで引いてきて憎悪と分裂をそそのかす。

 中間選挙は、こうしたトランプ大統領を米国人がどのように受け入れるかを探ってみる一つの契機になるだろう。ティム・ケーン民主党上院議員は記者に「品位と共感の米国を取り戻さなければならない」と話した。ところが共和党側のある要人は「トランプ大統領が暴言を吐き品格がない人であることを知らなかったのか?皆、知っていながら大統領に押し上げたのが米国の人々だ」と話した。その腹の内が気になる。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/868446.html韓国語原文入力:2018-11-01 18:57
訳J.S

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