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李明博捜査の背景…捜査諦めようとした瞬間に「どんでん返し」の情報提供

登録:2018-10-08 11:46 修正:2018-10-08 13:29
ニュース・ビハインド 
検察、最初は「処罰が可能なものか」と消極的 
総長・ソウル地検長「叩かれてもここまでだ」 
 
検察が女優の夫の「依頼殺人」明らかにすると 
担当弁護士がキム・ヒジュンの話を伝え「恩返し」 
 
捜査の白眉はイ・パルソン元ウリィ金融会長 
「MBメモ」飲み込もうとして捜査官の手を噛む 
検察「李明博は周辺人物の管理を失敗して没落」
110億ウォン台の収賄や350億ウォン台のダースの横領などの疑いで裁判に持ち込まれた李明博元大統領が5月23日、ソウル瑞草区のソウル中央地裁裁判所で開かれた初公判に出席している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 李明博(イ・ミョンバク)元大統領は、5日の1審判決で懲役15年を言い渡された。罰金130億ウォン(約13億円)と追徴金82億ウォン(約8億3千万円)も同時に宣告された。「ダースはMB(李明博)のもの」という検察の結論が合っていた。11年ぶりに疑惑は事実と判明した。

 しかし、わずか1年前までも状況は全く違っていた。あらゆる疑惑で世論が沸き立ったが、検察は捜査に確信を持てなかった。様々な理由をつけてためらっていた。一時、捜査を完全に手を引きそうになったぎりぎりの瞬間もあった。そのとき、決定的な情報提供が検察に舞い込んだ。偶然とも必然とも知れない数回のどんでん返し、李元大統領の運命を変えた。

職権乱用?「だめだ」

 もともと、検察が挙げていた「積弊捜査」リストに李元大統領は入っていなかった。長期間続いた国情院の捜査で、検察が疲れ果てていたせいもあるが、膨らむ疑惑に比べて証拠が弱すぎるという判断があった。当時、検察関係者は「ダースは(新しく)細かく調べる余地がない。10年以上前から提起された疑惑」だとし、「どうやって骨抜きのようにできるものか」と反問した。2007~2008年の間、“先輩”検察とBBKのチョン・ホヨン特検が李元大統領に発行した免罪符も、“後輩”検察の足を引っ張った。検察の他の関係者は「MBはパンドラの箱だ。捜査の余力もない。(だから)箱は開けず、なるべく告発に限定して捜査するのがいい」と話した。つまり、積極的ではなかった。

 10月中旬頃、BBK株価操作事件の被害者であるオプショナルキャピタルのC代表が李元大統領を職権乱用の疑いで告発した。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後初めて李元大統領が“被疑者”と指摘された事件だ。ソウル中央地検先端犯罪捜査1部が担当して基礎検討に入った。当時、検察関係者は「提起された疑惑の中では最も可能性があるものと思って期待をかけた」と話した。しかし、検討結果は「罪にならない」というものだった。週例報告の席でユン・ソギョル・ソウル中央地検長がムン・ムイル検察総長に同じ内容を報告した。二人は「仕方がない。二人とも厳しい批判にさらされるともここで手を上げるしかない」と結論を出したという。

「疑惑は全部事実だ」

 今度は参与連帯と民主社会のための弁護士会が李元大統領を横領・脱税などいくつかの容疑で告発した。昨年12月7日のことだ。告発の対象にはBBK事件のチョン・ホヨン特検も含まれた。その日、検察の関係者は「告発状が入ったからと舞い上がることではない。追い込んでは逆効果が出る」と話した。そしてソウル中央地検刑事1部に配当した。検察内でも、「どうして特捜部ではなく刑事1部なのか理解できない」と言われていた。検察の消極的な態度には変化がなかったということだ。

 ところが、幾日も経たないうちに、ある弁護士から決定的な情報提供が舞い込んだ。李元大統領と関連した様々な疑惑、特に在任前後に大統領府で起きたことを詳細に供述する証人がいるということだった。その顛末は次の通りだ。

 これに先立つ同年10月、ソウル中央地検刑事3部(部長イ・ジンドン)は、ソウル瑞草洞(ソチョドン)のある弁護士事務室で凶器に刺されて死亡したある女優の夫が殺人依頼を受けて殺されたという捜査結果を発表した。警察で偶発的殺人として送致した事件を、検察が地道な捜査の末に覆したものだ。検察に借りができたと思った被害者側の弁護士は、ふだん「友達」から聞いていた話を検察幹部にそのまま伝えた。李明博大統領府で儀典秘書官・第1付属室長を務めた李元大統領の腹心、キム・フィジュン氏がその弁護士の「友達」だった。「李明博捜査の決定的な場面をひとつだけ挙げるとすれば、まさにその情報提供だ」(検察の主要関係者)

 ただ、当該弁護士は同日、ハンギョレとの電話インタビューで「私が検察に情報提供したという検察の関係者の話は全く事実ではない。キム・ヒジュン元室長が検察の捜査を受けるという事実は、キム元室長の家宅捜索があった日、初めて知った。その日弁護人資格で検察庁舍に入ってキム元室長に会って初めて捜査内容を知った。キム元室長は情報提供者ではなく、検察に召喚された時は検察がすでに容疑内容の大半を把握していて否定できない状況だった」と話した。

「公訴時効を生かせ」

 検察はキム元室長の情報提供を受けてから初めて“可能性”を見つけた。しかし先は長かった。李元大統領をめぐる疑惑の“胴体”であるダースの実体を明らかにしなければ、捜査は失敗することは明らかだった。特に公訴時効が決定的に重要だった。この“ミッション”は、ソウル東部地検に別途設置した捜査チーム(チーム長ムン・チャンソク)が解決した。

 2008年のBBK特検の時、120億ウォン(約12億円)の秘密資金造成(横領)に関与してもダースに通い続けていた経理職員のJ氏を追及し、「李明博をはじめとするオーナー一家が作った最も大きな秘密資金の塊」(検察関係者)を探し出したのだ。「正直にいえば大き期待していなかったが、東部チームの捜査がうまく進んだ。そっちの捜査が成功して、ソウル中央(地検)が探し出した他のパズルのピースとモザイクがぴたりとはまった」(検察の主要関係者)

 検察捜査が軌道に乗ると、キム・ソンウ元ダース代表などが自首した。キム・ヒジュン元付属室長の供述を土台に、国情院の特殊活動費捜査も急速に進んだ。窮地に追い込まれたキム・ペクジュン元総務企画官は「ダースの訴訟費をサムスンが代納した」事実を打ち明けた。イ・ハクス元サムスン副会長もこれを認めた。側近たちが崩れたことで捜査は一気に進んだ。

 賄賂容疑の捜査の白眉は、イ・パルソン元ウリィ金融持株会長だ。彼は捜査チームが家宅捜索に乗り出したとき、ちょうど「MBメモ」を口に入れて噛み、飲み込もうとしていた。それを制止する過程で、ある捜査官がイ元会長に指を噛まれ全治3週間の咬傷を負ったが、結局「李明博一家のすべての恥部」を書いた備忘録は検察の手に入った。

 検察の主要関係者は7日「李明博捜査を振り返ってみると『運七技三』(勝敗は運によるもの)だった」とし、「李明博は、検察が捜査をうまくやったというよりは『周囲の人物』の管理に失敗したことで自ら没落を招いた」と評した。

カン・ヒチョル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/864851.html韓国語原文入力:2018-10-08 05:00修正:2018-10-08 09:30
訳M.C

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