朴槿恵(パク・クネ)前大統領の控訴審裁判所が、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の経営権継承作業という「包括的懸案」を解決する見返りにサムスンが賄賂を渡したと判断したのに続き、サムスンの“個別の懸案”に対する不正請託の存在も一部認めた。個別懸案に対する不正請託が認められたのは今回が初めてだ。
ソウル高裁刑事4部(裁判長キム・ムンソク)はサムスンの韓国冬季スポーツ英才センターへの支援と関連した第3者賄賂授受の容疑を認める過程で、イ副会長の経営権継承作業と関連した黙示的な請託があったと判断した。裁判所はこの過程で、外国資本に対する経営権防御の強化や投資誘致、規制緩和など、バイオ事業支援など二つの個別の懸案に対する不正請託の存在も認めた。
裁判所は「単独面会当時、外国資本に対する経営権防御の強化は経営権継承作業の一環であり、サムスングループの懸案だったため、イ副会長は明らかにこれを認識していた」と判断し、バイオ支援事業と関連しても「朴前大統領とイ副会長の間に規制緩和や投資誘致などに関する共通の認識と了解が存在した」として、両事案に対する黙示的な請託が存在したことを認めた。ただし、裁判所は、朴前大統領とイ副会長の単独面会が行われた2015年7月25日当時、すでに終結していたサムスン物産と第一毛織の合併などは、不正請託の「個別の懸案」と見ることができないと判断した。
これに先立ち、検察はサムスンが朴前大統領に対する不正な請託と「包括的懸案」としての経営権継承作業とともに、10個の「個別の懸案」を挙げた。これには、サムスン物産と第一毛織の合併や合併に伴う新規循環出資の輪の解消に向けたサムスン物産株式処分の最小化などが含まれた。
しかし、朴前大統領の1審裁判所は「包括的懸案」はもちろん、「個別の懸案」の存在も認めず、これに基づいて韓国冬季スポーツの英才センターとミル・Kスポーツ財団への支援に対しても無罪を言い渡した。イ副会長の控訴審裁判所も経営権継承作業という包括的懸案は存在しないと判断した。
「民主社会のための弁護士会」のキム・ナムグン副会長は「裁判所が個別の懸案に対する請託があったかどうかを一つひとつ詳しく検討すべきだったが、これまでは個別の懸案をすべて認めず、包括的懸案だけに焦点を合わせてきた」とし、「今回の裁判は事実関係の分析を通じて個別の懸案にまで目を向け、刑事裁判の基本に忠実な判断を下した点で、意味がある」と話した。