昨年10月、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が「裁判部に対する信頼にはもはや意味がない」とし、国政壟断事件の裁判の拒否を宣言した直後、検察は「国家情報院特殊活動費賄賂上納」カードを取り出した。検察は「国情院を指揮・監督する大統領府が金を受け取ったならば賄賂罪の適用が可能だ」と主張した。最初から「賄賂事件」であることを明確にしたのだ。与野党は「国情院特活費上納慣行」をめぐり真実攻防を繰り広げたが、その間に、検察は朴前大統領とナム・ジェジュン、イ・ビョンギ、イ・ビョンホ元国情院長、イ・ウォンジョン前大統領秘書室長、チョ・ユンソン、ヒョン・ギファン、キム・ジェウォン元政務首席、イ・ジェマン、アン・ボングン、チョン・ホソン前大統領府秘書官、イ・ホンス元国情院企画調整室長など13人を大量に裁判にかけた。
20日の「賄賂とは見られない」という朴前大統領の事件の1審裁判部の有無罪の判断は、早くから輪郭が出た状態だった。朴前大統領の事件を受け持ったソウル中央地裁刑事32部(裁判長ソン・チャンホ)が先月、朴前大統領に特別事業費を上納した疑いで起訴された国情院長3人の1審判決で「国庫損失は有罪、賄賂供与は無罪」という判断を下しているからだ。
朴前大統領の在任時期に渡された特別事業費は、ナム元院長が6億ウォン(約6千万円)、イ・ビョンギ元院長が8億ウォン(約8千万円)、イ・ビョンホ元院長が22億5千万ウォン(約2億2500万円)だ。裁判部はこの日、「約1兆ウォン程度の国情院の年間予算全額が特殊活動費で編成されており、そのうち国情院長の特別事業費は年間40億ウォンだ。これは国情院の職務である対共、政府転覆、防諜、対テロ情報の収集などに限定して使わなければならない」と前提した後、「特別事業費を渡した関連者たちが全て『問題になる行為』と認識していた点に照らして、被告人(朴前大統領)もまた違法性を認識していたものと見る」とし、国庫損失の疑いで有罪を言い渡した。
一方、国情院長3人の「賄賂供与」の疑いの無罪判決の論理によって裁判部は、朴前大統領の「収賄」の疑いにも無罪を言い渡した。裁判部は、以前にも大統領府に国情院の資金を提供する慣行があったものと見られ▽国情院の資金を大統領府特別活動費に準じて管理するよう指示があった点▽隠密さが要求される通常の賄賂の支給方式と比較すると、毎月5千万~1億ウォンずつ定期的に分けて支給された点▽国情院長任命に対する報いとは見がたいという点をあげて「賄賂と認められない」とした。
とりわけ裁判部は、検察が収賄と判断した強力な根拠である治療費用、衣裳代、私邸管理費など、朴前大統領の「私的使用」についても「被告人が最初から私的な用途で使用する意思で特別事業費の支給を要求したという点を認定する証拠がない。事後にどこに使ったのかは賄賂罪の成立に影響を及ぼさない」と明らかにした。
「チェ・スンシルがこの賄賂を管理した情況もある。国情院を私金庫に転落させた」とし、朴前大統領に懲役12年を求刑した検察は、控訴の意向を明らかにした。検察関係者は「大統領を単純補助する秘書室職員(チョ・ユンソン元大統領府政務首席秘書官、アン・ボングン元大統領府国政広報秘書官)が国情院長から受け取った少額のお金は賄賂としながら、大統領が直接指揮関係にある国情院長から受け取った数十億ウォンは賄賂ではないという1審の判決は納得しがたい」とした。同じ裁判部が先月、イ・ビョンギ前院長がチョ元首席に渡した特別事業費を「賄賂」と判断した点を指摘したものだ。
この日午後2時から生中継された判決公判で、ソン・チャンホ裁判長は45分間休まず判決理由を読み上げた。静かだった法廷は、裁判部が懲役8年と追徴金33億ウォン(約3億3千万円)を言い渡すとざわめき始めた。朴前大統領支持者たちは「人民裁判」「ろうそく裁判」「これが法か」と声を上げた。
一方、この日午前、ソウル高裁刑事4部(裁判長キム・ムンソク)の審理で開かれた朴前大統領の国政壟断事件の控訴審結審公判で、検察は1審と同様に懲役30年、罰金1185億ウォンを求刑した。4月の1審裁判部は、朴前大統領に懲役24年、罰金180億ウォンを言い渡した。