セウォル号船体調査委員会が6日、セウォル号の沈没原因と関連して単一の結論を出せないままに1年4カ月余りの活動を終えた。セウォル号の船体を保存する場所も決定できなかった。船体調査委はこの日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に機械の欠陥などの理由でセウォル号が沈没したという“内因説”と、衝突など外力による沈没の可能性を追加で調査しなければならないという内容の“カ”説(開かれた説)の2種類の結論を入れた総合報告書を提出した。
セウォル号沈没原因をめぐる論議は長く続いてきた。最初に沈没原因に対する公式結論を下したのは検察だ。最高検察庁は2014年10月、セウォル号が無理な構造変更と過剰積載により復原性が弱まった状態で、操舵の未熟により船が片側に傾き、きちんと固定されていない貨物が片寄って沈没したと明らかにした。だが、光州(クァンジュ)高裁は2015年4月、操舵の未熟ではなく機関の故障でセウォル号が沈没した可能性を提起した。また、船体を引き揚げてこそ正確な事故原因が把握できると付け加えた。
以後「4・16セウォル号惨事特別調査委員会」が2015年3月にスタートした。だが、朴槿恵(パク・クネ)政府の妨害で調査がまともになされず、2016年9月30日に強制解散された。当時は、セウォル号が引き揚げられる前であったため沈没原因の調査を本格的にするのは難しい状況でもあった。その後に続いたのが船体調査委だ。船体調査委は昨年3月23日、セウォル号の船体が引き揚げられた5日後の3月28日にスタートした。スタートから1年4カ月がたち、単一の結論に合意できないまま幕を下ろしたわけだ。今後はセウォル号の沈没原因糾明は、3月にスタートした「加湿器殺菌剤事件と4・16セウォル号惨事特別調査委員会」の役割に移ることになった。
船体調査委がこの日出した内因説と“カ”説は、船の“復原性”を意味する“GoM値”に対する判断で交錯した。船の重心(G)と浮力の中心がずれて船が傾いた時、再び本来の状態に戻そうとする性質を復原性と呼ぶが、GoM値はこれを数値化したものだ。一般的にGoM値が高いほど安全で、低いほど危険と見る。内因説は、セウォル号の出港当時と事故時のGoM値を0.406mと0.306mと見た。それだけ船の復原性が良くない状態だったとの判断だ。内因説を支持するキム・チョルスン船体調査委員は、この日の記者懇談会で「セウォル号は当初から出港してはならない危険な船」だったと話した。
“カ”説を支持する船体調査委員は、GoM値を出港時0.71m、事故当時0.59mと見た。出港時は相対的に安全な船だったと見たわけだ。これに先立って検察がセウォル号惨事捜査当時に専門機関に依頼して判断したセウォル号のGoM値は0.59mだった。
こうした前提条件の差は、それぞれ異なる結論を産んだ。内因説は、GoM値が低いだけに当初から船が危険で、その過程で船の方向舵を動かすソレノイドバルブまで故障してセウォル号が沈没したと見る。ソレノイドバルブは、操舵機を回す際に電気信号と油圧を利用して船の後方の方向舵を調整する役割をする主要機関だ。ソレノイドバルブが故障すれば、操舵室で操舵機を操作しても方向舵が勝手に動くことになる。
内因説を主張するキム・チャンジュン船体調査委員長とキム・ヨンモ船体調査委副委員長、キム・チョルスン船体調査委員は、セウォル号の沈没直前の2014年4月16日午前8時48分57秒にソレノイドバルブが故障したと分析した。機関の故障が、当時操舵手が5度だけ操舵機を回したのに、方向舵が右に曲がり続ける現象が発生した原因であるわけだ。そのためにこの日午前8時49分13秒から8時49分39秒までの約26秒間に船の進行方向が34度急旋回し、結局セウォル号が左に20度近く傾いたと明らかにした。船が傾くと、きちんと固定されていなかった貨物が片寄り、セウォル号は急激に傾き、すぐに沈没したという結論だ。
一方、クォン・ヨンビン船体調査委第1小委員長、イ・ドングォン、チャン・ボムソン船体調査委員は、外力の可能性を含む“カ”説を主張した。“カ”説は、ソレノイドバルブの故障自体については同意したが、これによって全舵(方向舵が押そうとした側に最大値に回ること)が発生して、船が急旋回したことに対する検証が不十分と見た。また、セウォル号に積まれていた車両のブラックボックス映像などの分析で、惨事当日午前8時49分頃「キイッ」という騒音と共に1秒間に3度以上の速度で船が急激に右側に旋回する現象に注目した。こうした現象は、オランダの海事研究所「マリン」に依頼して実際の船の模型を作り実験した数百回の過程でも確認できない急激な変化だったと判断した。結局、機械欠陥、復原性不足などでは沈没過程を100%説明できないので、外力など他の要因も考慮しなければならないという立場だ。
内因説と“カ”説が、それぞれGoM値を異なって計算したのは、バラストタンク4番と5度の積載量に対する判断が異なるためだ。バラストは船の復原性を良くするためにタンクに入れる水だ。内因説は4,5番タンクの積載率を95%で計算した。反面“カ”説は積載率を98%と見た。内因説は、バラストタンクが一杯になっておらず、セウォル号がさらに危険だったと見た反面、“カ”説はタンクが満杯になった状態で復原性がさほど悪くはなかったために、他の力や要因が作用してこそセウォル号が沈没しうると判断したわけだ。
外力の可能性に対する判断も交錯した。内因説は、潜水艦の実体もなく船体に衝突した痕跡もないため外力はないと結論付けた。船体調査委は海軍を訪問調査した結果、セウォル号事故当時に海軍潜水艦14隻のうち作戦を遂行していた3隻はすべて事故現場の100海里以内には接近しなかった事実を確認した。一方、“カ”説は「外力の実体を明らかにすることができないからといって、外力がなかったという証明にはならない」と主張する。また、船体を真っ直ぐに立てた後にフィンスタビライザー室周辺で発見された船体内部の“裂け現象”などを追加調査しなければならないという立場だ。
クォン・ヨンビン第1小委員長は、この日の記者懇談会で「1日、セウォル号の船体内部などで外力によると疑われる大きな破損を発見した」と話した。これに対して、内因説を主張するキム・チョルスン船体調査委員は「外力が作用したなら表面に大きな損傷が確認される筈だが、そのような痕跡はなかった。外板には破損が少なかったが内部に損傷が大きいからといって外力の存在を疑うのは非常識」と反論した。