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セウォル号、水密扉さえ閉めていれば「ゴールデンタイム」は延びた

登録:2018-05-31 08:40 修正:2022-06-08 08:13
オランダの研究所「マリン」調査結果を発表 
ずさんな貨物固定によって急激に傾いて浸水 
水路塞ぐ「水密扉」開き、急速に沈没 
「水密扉を閉めていたら65度傾いて浮かんでいた」
セウォル号沈没の直接原因である浸水経路(資料:オランダ海事研究所「マリン」調査結果)//ハンギョレ新聞社

 セウォル号の「水密扉」さえきちんと閉まっていれば、船がそれほど早く沈没しなかっただろうという国外の海事研究所の調査結果が30日に出た。水密扉は船の急速な浸水を防ぐため、内部空間を隔離する扉だ。また、貨物の固定さえちゃんとしていれば沈没しなかっただろうという分析も出た。命を守るための手続きや規定が一つでもまともに守られていれば、あの日の惨事は防げたわけだ。

 セウォル号の船体調査委員会(船調委)はこの日、ソウル苧洞(チョドン)の事務所でオランダの海事研究所「マリン」によるセウォル号沈没調査結果を発表する場を設けた。これに先立ち、船調委はマリンにセウォル号沈没の原因と関連した調査を依頼した。この日の発表会でマリンの関係者は、「(セウォル号の下部の)水密扉が閉まっていたら、船が65度まで傾いてから長い間水面に浮かんでいたと推定される」と明らかにした。

 セウォル号の一番下のEデッキ(1階)の機関室には、水密扉とマンホールが全部で7つあった。しかし、船調委が最近調査した結果、これらの水密扉はすべて開いていた。また、機関室のすぐ上の階のDデッキ(2階)には、計10個の水密扉とマンホールがあったが、閉じられていたのは3つ前後と推定される。規定上、水密扉とマンホールは非常時速やかに操作して閉じられないならば、閉めておくことが原則だ。当然、非常時には全部閉め、急速な浸水による沈没を防止しなければならない。だが、韓国の多くの船舶は、移動が不便だという理由で水密扉を開けたまま運航している。また、セウォル号の機関室の職員たちは、沈没当時脱出しながらこの水密扉を閉めなかった。ただし、船員たちが水密扉が壊れたために閉じなかったのか、最初から閉じることを考えなかったのかは確認されていない。マリンの分析結果によると、機関室とDデッキの水密扉17個だけでも全部閉まっていれば、船は65度傾いた状態で、かなりの時間水面に浮かんでいられたことが分かった。乗客を救助できる時間を稼ぐことができたわけだ。

 このような結論は、マリンのセウォル号浸水経路実験結果を見ればさらにはっきりと現れる。実験の結果、セウォル号が45度傾いた時、Cデッキ(3階)の換気扉を通じて最初の直接浸水があったと把握された。この扉を通じて流れこんだ海水は、換気口などを通じてスタビライザー(船の中央下段の両側でバランスをとる長い板状の装置)室に流れこんだ。問題はその次だ。スタビライザー室に集まった水が、開いていた水密マンホールを通じてさらに下にある機関室へとそのまま流れこんだのだ。この水密マンホールが閉まっていたら、浸水はスタビライザー室で防ぐことができた。その後、船は48度まで傾き、Cデッキで開かれていた窓から二番目の直接浸水が始まった。

30日午後、ソウル中区のセウォル号船体調査委員会でオランダの海事研究所「マリン」によるセウォル号浸水・沈没模型実験の結果報告会が開かれている=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 沈没の二つ目の原因は、ずさんな貨物の固縛だった。船調委とマリンの調査結果を総合すると、セウォル号は2014年4月16日午前8時49分に右に急旋回し、傾き始めた。セウォル号の貨物が動き始めたのは、船体が18度ほど傾いた時だ。この時、一部の貨物が滑り始めた。その後、船体が33度まで傾いた時、貨物は大半が滑り落ちた。貨物がきちんと固定されていなかったためだ。そして急旋回をしてから56秒でセウォル号は45度に傾き、この時から浸水が始まった。マリンの調査責任者はハンギョレに「貨物がきちんと固定されていたならば、船の傾きが浸水が始まった45度まで傾かなかっただろう」と話した。ずさんな固縛が船を右に傾かせ続け、浸水の原因になったのだ。マリンの関係者はこの日、「固縛もまた沈没を起こした重要な要素の一つだと思う」と話した。

 マリンは船調委の依頼でコンピューターシミュレーション、自由航走実験、浸水模型実験を実施した。自由航走実験は1対25の比率に縮小したセウォル号の模型を大型水槽に浮かべ、惨事当時の航跡などを再構成する実験だ。浸水模型実験は1対30の割合の模型を制作し、セウォル号が45度以上傾いた後、どのように海底に沈んだのかを再現した。

 マリンが自由航走実験をしてみると、特定の条件でセウォル号の沈没当時の航跡と傾きが同じように再現されることが確認された。船が定位置を維持しようとする力を意味する復元性の程度(GoM)を示す値を0.19メートルとし、右側に操舵(船の方向転換)を10度にした後、さらに25度操舵した時、セウォル号沈没当時と似た航跡が描かれた。ただ、当時の貨物量などを総合的に考慮した時、“GoM値”0.19メートルは少なすぎる数値だという見方もある。“GoM値”が高いほど復元性が良い状態だということを意味するが、沈没当時と似たような航跡が出た“GoM値”があまりにも低いからだ。検察は、セウォル号沈没の原因に対する捜査結果の発表当時、“GoM値”を0.59メートルとして適用している。

 この日、マリンの関係者は「調査の結果、低い復元力、そして非常に大きな操舵角が結合して事件が起こったと思われる」と話した。復元性の良くない船が急に方向転換をして、船が傾き貨物が一方に偏り、浸水が始まったということだ。ただ、マリンのこのような見解が船調委の最終結論ではない。船調委はマリンの調査結果を重要な資料として参考にするものの、沈没の過程で外力があった可能性、機関の故障で急激な方向転換が行われた可能性などに対する調査を終了した後、最終判断を下す予定だ。

チョン・ファンボン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/847015.html韓国語原文入力:2018-05-30 22:17
訳M.C

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