「なぜ国家の責任ではないと言えるのか?」
裁判所が19日、セウォル号惨事への対応過程における国家の違法行為を認め下した損害賠償の判決は、「責任を認めた」とは言えないほど、非常に限られたものだった。事故現場に出動した小さな警備艇一隻が、数百人の犠牲につながった国の責任を取らされたわけだ。これまで4年間、セウォル号惨事特別調査委員会や国会国政調査特別委員会、監査院や憲法裁判所、検察による捜査、裁判所裁判などを通じて明らかになった「国の責任」のほとんどは、損害賠償の要因として認められなかった。刑事裁判と異なり、比較的責任の認定範囲が広い民事裁判で、国の財政支出を懸念するいわゆる「国庫主義」が作動したのではないかという指摘もある。
■大統領の責任
憲法は「公務員の職務上の不法行為」に対する国民の国家賠償請求権を基本権として保障している。これにより、国家賠償法は「公務員が職務を執行するに当たって、故意あるいは過失によって法令を違反し損害を与えた場合は、国家や地方自治体にその賠償責任がある」と規定している。
ソウル中央地裁民事30部(裁判長イ・サンヒョン)は同日、「国家災難コントロールタワーがまともに作動しなかった」という原告側の主張に対し、「国家賠償法で定めた職務上の違法行為に該当せず、セウォル号惨事の死亡と因果関係があると見ることができない」と判断した。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾決定当時、憲法裁が「国民の生命が脅かされる災害が発生したとしても、大統領が直接、救助活動に参加するなど、具体的な行為義務が発生すると見ることはできない」という多数意見を出したことと軌を一にする判断だ。
しかし、裁判所のこのような判断は、朴槿恵大統領時代の大統領府が、公文書を操作してまでセウォル号惨事当日の総体的なコントロールタワーの不在とずさんな対処を隠蔽しようとした不法行為に比べ、その責任を十分に問うていないという指摘を避けられない。今年3月、検察は「セウォル号7時間」疑惑と関連し、惨事当日、朴槿恵当時大統領が執務室ではなく寝室におり、国家安保室長の二度の電話にも出ず▽ゴールデンタイムが経った午前10時20分にようやく寝室から出て最初の報告を受けた事実などを確認している。
大統領府はコントロールタワー不在の責任を免れるため、最初の報告時間を実際より20分繰り上げた午前10時と主張し、これに合わせて公文書も修正した。「大統領府=災難コントロールタワー」という点を隠すために、大統領訓令の「国家危機管理基本指針」の内容をボールペンで「安全行政部=災難コントロールタワー」に変えた事実まで確認された。にもかかわらず、裁判所は参事とコントロールタワー不在の「因果関係」を認めなかったのだ。
弾劾決定当時、補充意見を出したイ・ジンソン、キム・イス憲法裁判官は「朴前大統領が午前10時頃、すべての情報が収集され、主要機関と連絡網が構築された大統領府状況室で指揮したなら、乗客を救助することができたはずだ。憲法と国家公務員法の誠実な業務遂行の義務を違反した」という判断を示した。
■管制・救助の失敗の責任
裁判所は、海上交通管制センター(VTS)の管制失敗▽救助本部の不適切な状況指揮▽航空救助士の船内への未進入についても、「違法ではなく、死亡と因果関係がない」と判断した。
しかし、これまで様々な調査を通じて、セウォル号惨事への遅い対応の出発点が、管轄水域を担当した珍島(チンド)海上交通管制センターのずさんな管制だったことは、すでに明らかになっている。セウォル号が100度以上急旋回しながら立ち止まる「異常航跡」がモニターに現れたにも関わらず、当時8人が勤務していた管制センターでは誰もこのような状況に気づかなかった。普段、管制センター勤務者が(勤務時間中に)昼寝をしたり、ゴルフ練習をしていた事実も調査で確認された。
海洋警察庁長が本部長を担当し、西海地方海洋警察庁長と木浦海洋警察署長が現場指揮を担当した「中央救助本部」も、乗客に対する退船指揮を取らなかった。彼らは緊迫した状況にもかかわらず、現場写真や映像、救助人員数の把握を求める大統領府の指示を現場に伝えることを優先させた。
セウォル号事故現場に出動した航空機とヘリコプターが航空救助士を適時に船内に進入させるならば、少なくとも一部の乗客は救助できたものと専門家は見ている。これと関連し、海洋警察が当時、ヘリコプターの交信内容を任意に削除した事実が確認された。