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[ルポ]愛するから反対?“同性愛嫌悪”を乗せ大邱に集まった「レアル・ラブ・バス」

登録:2018-06-25 10:15 修正:2018-06-25 11:54
教会のバスに乗って大邱クィア祭へ行く
キリスト教信者たちが今月23日午後、大邱中区東城路6街に集まって座り大邱クィア文化祭の都心パレードを阻止している//ハンギョレ新聞社

 “愛”と“嫌悪”が対立する場だった。23日午後2時、10回目のクィア文化祭が開かれた大邱(テグ)東城路(トンソンロ)には、数十台のバスが止まった。「レアル・ラブ(本当の愛)」という名前をつけたバスは、ソウル、京畿道など全国11カ所からクィア祭に反対する人々を乗せて大邱に来た。これまでクィア祭側と反対者たちはたびたび衝突したが、全国からのバスが組織されたのは初めてのことだ。クィア祭に反対する人々の考えを聞くため、記者もレアル・ラブ・バスに乗った。

 「執事様(教会の奉仕者を指す言葉)、ここにお座りなさい」。午後1時、慶尚南道昌原(チャンウォン)のある教会の前から出発した「レアル・ラブ・バス」に乗り込むと、人々は問い詰めもせず席を譲ってくれた。馬山(マサン)、昌原(チャンウォン)、鎮海(ジンヘ)などから来た慶尚南道地域のキリスト教信者たちを乗せたバスは大邱に向かった。車の中では7月10日に予定された馬山教育庁前の人権条例反対デモの方法についての激しい話があふれた。彼らは今回の地方選挙で再選に成功したパク・ジョンフン慶尚南道教育監が公約した「青少年人権条例」が制定されるのを防ぐための署名運動、横断幕製作、デモなどを計画していた。

今月23日午後、大邱中区東城路野外ステージ広場で開かれた第10回大邱クィア文化祭で、参加者らが舞台イベントを見ている//ハンギョレ新聞社

 バスに乗った人々は、人権条例は「青少年に無分別な性的関係を許可し、同性愛を教えるので、直ちに廃止しなければならない」ということに意見の違いはなかった。だが、6・13地方選挙以後、条例廃止の先頭に立つ保守政党の影響力が大きく減った現実を嘆いた。主に外部交渉を担当するというある信者は「右翼ら力を借りなければならない」と何度も強調した。

大邱の道に入ると  
「これからお祈りしましょう」  
行事会場まで祈祷の声 

200メートル離れて集会申告したが、  
両陣営の境界線が崩れ  
互いに「怒りの罵声」 

若い信者たちは反対の意思小さく 
「牧師様が何度もおっしゃるから  
従順な気持ちで来たのだけれど…」 
「どんな文化なのか気になって…」

 2014年の大邱クィア祭の時は、教会団体の人たちが祭りに汚物を投げつけることがあった。「愛のバス」に乗って行く今回は雰囲気が変わったのだろうか。しかし大邱が見える地点に着くと、ある牧師が勧めた。「これからお祈りしましょう。邪悪なものに騙されないように霊的に武装しましょう」「汚いものにやられる前に、我々が先に目でとっちめてしまおう」。他の信者も同調した。その時から行事場に到着するまで、車の中は祈祷の声に満ちた。

 午後2時30分、バスが大邱中区公平洞(コンピョンドン)の2・28記念中央公園の入口に到着すると、信者たちがTシャツを配った。白いシャツの前にはお父さんとお母さんが子どもの手を握っている絵が、裏面には「愛するから反対します、必ず帰ってきて」という文字が描かれていた。記者が乗ってきたバス以外にも数十台のワゴン車が公園に到着した。主に年嵩の“執事様”と“長老様”が若者たち5~6人を連れて車から降りた。若者や青少年らは「クィアの辞書的意味=変態」、「タバコと同性愛は断たなければなりません」、「同性愛を人権で隠して国民4千人がエイズで死亡」などのプラカードを持って会場に向かう道端に一列に立った。年配者たちは東城路野外ステージ広場のすぐ前「接戦地区」に立った。

今月23日午後、大邱中区東城路6街でキリスト教信者がひざまずいて何かを叫んでいる//ハンギョレ新聞社

 「クィア反対対策本部」という団体は、会議場から200メートル離れたところで「真の教育キャンペーン祈祷会」を開くと言って警察に集会申告をした。クィア祭が始まると、両陣営の境界線は崩壊した。会場にはオアシスの曲「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」(怒った顔で振り返らないで)が響いていたが、クィア祭を妨げる人たちと祭を開く人たちの間には怒りの罵声が飛び交った。

 午後5時30分、キリスト教信者1000人余りは東城路野外ステージ広場から三徳聖堂の方に続く東城路6街に座り、道をふさいだ。クィア祭の絶頂であるクィアパレードを防ぐためだった。警察は解散を要求したが、彼らは愛国歌を歌いながら道を譲らなかった。1時間待っていたクィア祭の行列は、結局公平交差点に集まり、他の方向へと行進をした。

同性愛反対集会に乗り出した人たちがプラカードとTシャツを着て大邱クィア文化祭の会場を取り囲んでいる//ハンギョレ新聞社

 対峙が長引くと、若者たちはほとんどその場を立ち去り、クィア反対対策本部の年配者らだけが残って行く手を阻んだ。ある60代の女性に「同性愛に反対する理由は何か」と尋ねた。彼女は「男性と男性が交際するとエイズが生じるから」と答えた。「では、女性と女性が交際することには反対しないのか」と聞き返すと、このような答えが返ってきた。「ああ、よくわかりません」

 昨年、全国43校の大学生たちが「同性婚改憲反対大学青年連合」を構成し活動に乗り出したが、現場で会った若者たちはほとんどが同性愛反対の意思は大きくないと言った。大邱に住むKさん(21)は「牧師様が説教の時間に何度もおっしゃるから従順な気持ち来ただけ」と話した。東城路近くに住むというCさん(29)は「白いTシャツを着たが、特に反対も賛成もしていない。どんな文化なのか気になってきた」と話した。

 「執事様、どこに行っていたの。こっちにおいで」。バスで会ったある信者がクィア文化陣営に立っている記者を見て、嬉々として手招きした。しかし、虹色の旗から白い旗の陣営に転がるには、「愛は異性愛者だけのもの」という信念を持つ人々が築いた壁はあまりにも厚かった。

大邱/文・写真 キム・イルウ記者、ナム・ウンジュ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/850434.html韓国語原文入力:2018-06-24 21:10
訳M.C

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