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「難民に対する偏見と嫌悪を助長するな!」難民人権団体が記者会見

登録:2018-06-21 08:57 修正:2018-06-21 16:56
難民人権団体が20日、大統領府の噴水前で記者会見 
政府・マスコミが難民嫌悪を煽る…人権保護対策が必要 
「同じ思いでイエメンの人々を助けてほしい」訴えも
難民人権団体の活動家らが世界難民の日の20日午後、大統領府の噴水前で難民に対し差別を量産し嫌悪に同調する政府を糾弾する記者会見を開いている//ハンギョレ新聞社

 難民人権団体が「世界難民の日」の20日、大統領府の噴水前で難民に対する差別と嫌悪を助長している政府とマスコミを批判する記者会見を開いた。

 この日の記者会見で、公益人権法財団「共感」のファン・ピルギュ弁護士は、前日法務部が「難民の増加に伴い関連審査をさらに厳正にする一方で、虚偽の難民申請あっせんブローカーの取り締まりを強化」するという趣旨の報道資料をマスコミなどに配布したことに対して強く批判した。ファン弁護士は「政府が難民申請者数を取り上げ危機感をあおり、厳正な審査とブローカーの取り締りという立場だけを明らかにしたことで、外国人嫌悪、難民への嫌悪を助長した」とし、「法務部は世界難民の日を迎え、事実上難民との戦争を宣布した」と皮肉った。

 韓国移住人権センターのパク・ジョンヒョン相談チーム長も「(イエメン難民の入国後)民間領域では緊急に対策委が構成され、済州島内に英語講師として滞在している外国人らが彼らを助けるとして自発的な募金と救護活動をしていても、政府は事態の深刻性の把握さえできていなかった」とし、「政府は済州道民と難民に対する偏見を加重する方式で16年間維持したイエメン国籍者のビザなし入国を簡単に廃止し、これを広報した」と指摘した。彼女は「韓国政府がイエメン難民申請者たちの脱出ルートを封鎖し、国際社会の一員としての責任も捨ててしまった」と付け加えた。

難民申請者と認定者数の推移//ハンギョレ新聞社

 政府は観光産業の活性化に向けて2002年から済州道をビザなし観光が可能な地域に指定した。ビザなし入国が認められない国はイラン、スーダン、シリア、マケドニア、キューバなど11カ国だけだった。しかし、イエメン難民の入国が増えると、法務部は6月1日からこの11カ国にイエメンを追加した。難民人権団体は、政府のこうした恣意的処置が難民に対する偏見と嫌悪をあおっていると批判している。

 偏見をあおるのは政府だけではなかった。公益法センター「アピール」のチョン・シニョン弁護士は「(不適切なマスコミ報道で)済州島に来た難民に対する第一印象は『ニセ難民』と『潜在的テロリストであるイスラム国家のイエメン出身』として定着してしまった」と指摘した。チョン弁護士はある放送でイエメン難民問題を扱いながら「ケニア箸殺人事件」と連結したことを代表的な問題報道として挙げた。この事件は2016年、ケニア出身の難民が箸とスプーンを利用して韓国人を殺害した事件だ。チョン弁護士は「この記事はタイトルから内容まで一貫して難民に対する誤った印象を与えることに寄与している」と皮肉った。済州島に大規模な難民が入国したという報道も誇張されたものという指摘だ。チョン弁護士は「今年ノービザで済州島に入国したイエメン人は561人で、68万人以上の済州の総人口の0.082%に該当」すると説明した。

 イエメンの早婚文化が偏見の根拠ともいう。しかし、地区・地域行動ネットワークの活動家のナ・ヨン氏は「戦争前、イエメンの15歳以下早婚率は14%の水準だった。しかし戦争以降、40%台に急増した。戦争のためにイエメン国民の80%以上が深刻な借金に苦しみ、少年たちは戦場に連れだされ、少女たちは生計のために強制結婚をしなければならない現実を無視して、彼らを非難するのは倫理的ではない」と言い切った。

 このような政府とマスコミの偏見の中で、移住民の当事者らは多くの困難を負っている。移住民支援公益センター「感動」のキム・ジン弁護士は「先日、一人の難民児童の話を聞いた。韓国人が『お前の国へ帰れ』と言った後、韓国の子に『この子と遊んだら黒いのがうつる』と話したという」と伝えた。キム弁護士は「政府が国際人権基準に合致する難民認定および支援システムの構築について具体的な政策を用意し、難民への嫌悪や差別に対して積極的な防止対策を樹立しなければならない」と強調した。

 この日の記者会見に参加したあるアラブ出身の難民人権活動家は「イエメンの人々は戦争のために国を離れている。爆弾のせいで家が破壊され、家族も死んでしまうためこれを避けるため、安全な国であり民主的な国だと考える韓国を選択している」と状況を伝えた。彼は「すべてのアラブの人々が戦争を求めているのではない。平和を望む人がもっと多い」とし、「同じ思いでイエメンの人々を助けてほしい」と訴えた。

 難民人権団体は、政府の難民政策が改善されなければならないと強調した。2017年に9942人の難民申請があったが、難民審査を担当する公務員は全国で38人だけだ。難民人権センターがまとめた資料によると、難民面接で調査が虚偽に行われた事例が最近確認されており、難民申請後、異議申請却下通知書を受け取りに行った難民がその場で移民特殊調査隊に逮捕され、仁川空港に移送されたケースもあったという。

 法では難民申請者に対して生計費支援ができるようになっているが、この恩恵を受ける難民申請者はひと握りだ。難民人権センターは2017年12月31日基準で生計費が全体の難民申請者の3.2%だけに支援されたと明らかにした。予算不足で法務部が生計費支援をまともに広報しなかったためだということが難民人権センターの説明だ。難民人権センターの活動家であるイスル氏は「難民法はあるが、難民支援に対する政府レベルのまともなコントロールタワーがない」とし、「関連省庁が協力して政策の空白を埋めなければならない」と要求した。

チョン・ファンボン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/849921.html韓国語原文入力:2018-06-20 21:05
訳M.C

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