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[ニュース分析]金正恩「核兵力の産室」を破壊、朝米首脳会談に先制措置したが…

登録:2018-05-25 08:03 修正:2018-05-25 10:07
南北首脳会談の板門店合意を履行 
トランプに非核化の「実物」もたらし 
追加の核実験の物理的基盤をなくして 
「未来の核」除去で先制措置を断行 
トランプの会談中止で未来は予測不可能に
北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全員会議決定によって、北朝鮮咸境北道吉州郡豊渓里核実験場が完全に廃棄されたと、朝鮮中央通信が24日報道した=朝鮮中央通信/連合ニュース

 北朝鮮が予告した通り、24日、咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)の萬塔山(マンタプサン)渓谷の「北部核実験場廃棄式典」を進めた。北東アジアはもちろん、世界の不拡散体制を根本から揺るがしてきた「北朝鮮核兵力」の産室といえる核実験場を自ら破壊したのだ。

 北朝鮮の豊渓里核実験場の「自主破壊」は、何より金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がドナルド・トランプ米大統領と6月12日にシンガポールで首脳会談を開く踏み石を置くというのに最も大きな現実的意味があった。実際に朝米首脳会談が予定通り行われるとしたら、その結果は少なくとも「半分以上は成功」であろうというのが国内外の専門家たちの大方の見方だった。

 しかし、核実験場の廃棄に先立ち、マイク・ペンス米副大統領の強硬発言をに向けて「会談再検討」の脅かしをかけた「チェ・ソニ外務次官談話」が、用意の整ったちゃぶ台をひっくり返される原因となった。“言葉”が”行動”を追い越してしまった形だ。北側の「計算違い」か、2週間近く中断されたとの朝米間の水面下の交渉過程で外に表れなかった決定的な障害物が突出したのかは、まだ確認されていない。

 当初、北側の核実験場の「自主破壊」は首脳会談を控えた金委員長とトランプ大統領いずれにも重大な政治的資産をもたらすという“好材料”だった。トランプ大統領としては「北朝鮮の完全な非核化」という戦略的目標と関連して、意味のある「実物」を得たことになるからだ。これは「唯一の超大国である米国の世界戦略と外交安保分野に無知なトランプが、打算的な考えから金正恩と会談して手ひどくやられるだろう」というワシントンの主流勢力の牽制や反発に苦しんできたトランプ大統領にとって、決して小さくない資産だ。

 金委員長としては「朝鮮に対する敵視政策と安保脅威をなくしさえすれば、北朝鮮は核を持つ必要がなく、非核化は実現可能だ」(7~8日、中国の習近平国家主席との「大連会談」)や、「今後たびたび会い、米国と信頼が築かれ、終戦と不可侵が約束されるならば、我々が大変な思いをして核を持つ必要はない」(4・27、板門店南北首脳会談)という言葉が虚言ではないことを立証する実践行為だ。それだけ金委員長の「非核化の真正性」を疑ってきた国際社会の視線と認識が変わりうる。直後に米国の著名な核・ミサイル専門家のデイビッド・ライトはニューヨークタイムズに「豊渓里の閉鎖が北朝鮮の追加核実験を源泉的に不可能にするわけではない」としながらも、「非常に意味があり劇的な行為であることは間違いない」と前向きに評価した。

 これに先立ち、金委員長は朝鮮労働党中央委員会第7期3次全員会議(4月20日)で、「経済・核建設並進路線」が歴史的課業を達成したとし、事実上「軍事先行路線」の破棄を宣言した。これと関連した実践措置として核実験と大陸間弾道ミサイル試験発射の中止(4月21日から)と「核実験中止を透明性をもって担保するために」として豊渓里核実験場の廃棄方針を明らかにした。そして文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4・27の板門店(パンムンジョム)首脳会談で「5月中に核実験場の廃棄+韓米専門家・メディア関係者の招請」計画を、12日には「外務省公報」を通じて「23~25日に廃棄式典の進行+韓米中英ロシアの5カ国の取材陣の現場招請・取材支援」方針を明らかにした。24日の核実験場の「自主破壊」処置は、4・20全員会議の「並進路線終了」宣言と「社会主義経済建設に総力集中」という新しい戦略路線の採択が実践を前提にした真摯な「路線転換」であることを国際社会に知らせる意味もある。カン・ギョンホ核兵器研究所副所長が「廃棄式典」を現場で取材したロシアの「リア・ノーボスチ通信」取材陣に「豊渓里のほかに他の核実験場・坑道はない。我々は核開発過程でイラン、シリアと協力していない」と主張したのも、“真正性”を信じてほしいという国際社会に向けた訴えにほかならない。

 不拡散の技術的側面から見ると、豊渓里核実験場の廃棄は、北朝鮮の「未来の核」を除去する核心の措置の一つだ。「核兵力」の維持・向上には持続的な核実験が必須だが、核実験場の廃棄によって「追加の核実験」の物理的基盤をなくすことになるからだ。文大統領と金委員長が合意・発表した「板門店宣言」の「完全な非核化」「核のない朝鮮半島」に向けた第一歩でもある。

 完全な非核化の究極的な目標であり核心といえる「過去の核」(核兵器)を廃棄するかどうかは、金委員長とトランプ大統領の世紀の談判にかかった問題というのが、国内外の専門家らの大抵の指摘だった。別の見方をすれば、金委員長が持続的に強調してきた「対北朝鮮敵視政策と安保脅威の解消」、つまり体制保証を通じて北朝鮮が国際経済秩序に合流する道が示されるかにかかった問題だということだ。しかし、「今は会うのは不適切だ」というトランプ大統領の手紙によって世紀の談判の機会はいったん取りやめになる危機に直面した。今年に入って数多くの戦略的決断をした金正恩委員長が、「会談と関連して考えが変わったなら、迷わず私に手紙を書くか電話をしてほしい」というトランプ大統領の「手がかり」を糸口にして、消えていく首脳会談の火種を生かせるかが注目される。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/846192.html韓国語原文入力:2018-05-25 00:31
訳M.C

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