ドナルド・トランプ大統領が24日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長宛に送る手紙の形で「6月12日にシンガポールで行われる予定だった朝米首脳会談は時期的に不適切だ」として、その理由に挙げた「あなたたちの最近の談話で示した激しい怒りと敵対感」は、直接的には24日の「チェ・ソ二外務省副相の談話」に、広くは16日の「キム・ゲグァン外務第1副相の談話」に照準を合わせたものと言える。
これに先立ち、北朝鮮は同日午前、朝米首脳会談の北側の実務交渉窓口であるチェ・ソニ外務副相の「談話」の形で、「会談中止」の可能性をほのめかした。16日、朝米核交渉の象徴的存在であるキム・ゲグァン外務第1副相の「談話」に続いて二度目だ。しかも、ワシントン韓米首脳会談の直後だ。
しかし、北側が二つの談話を通じて米国に伝えようとする核心のメッセージが「朝米首脳会談の中止」の示唆と見ることは難しい。北側は「チェ・ソニ談話」直後、予告どおり豊渓里核実験場の「廃棄式典」を進めたからだ。したがって、北側の二つの談話の主な目的は、決して容認できない「マジノ線」を強調することで、トランプ政権の「対北朝鮮強硬派」の影響力を牽制することにあるというのが、大方の見解だった。ただし、北側が2週間近く米国との交渉の場に姿を現わしていないというワシントンポストの報道が事実ならば、「談話」に盛り込まれていない、まだ明らかになっていない“重大問題”があった可能性を排除できない。
事実、8日の間隔を置いて発表された2人の談話は一つの流れを成しているものの、強調点には微妙な違いがある。北側なりの悩みと計算が盛り込まれたわけだ。
まず「会談の中止」問題と関連し、「チェ・ソニ談話」は「朝米首脳会談を再検討することに関する問題を最高指導部に提起する」として、「会談に応じるかを再検討せざるを得ない」とした「キム・ゲグァン談話」より具体的な表現を使った。
ただし、「米国が○○するなら」という条件が付いている。北側が先に会談中止を宣言することはないという意味だ。「キム・ゲグァン談話」が「一方的な核放棄だけを強要するなら」とか「米国が、我々が核を放棄すれば、経済的補償と恩恵を与えると騒いでいるが、そうした取引は決してしない」とし、“議題と交渉内容”に焦点を当てた一方、「チェ・ソニ談話」は「我々の善意を冒涜し、引き続き不法無道に出る場合は」とし、“米国の態度”を狙いを定めた。
「キム・ゲグァン談話」はジョン・ボルトン・ホワイトハウス国家安保補佐官を、「チェ・ソニ談話」はマイク・ペンス副大統領に照準を合わせた。二人とも「先に核廃棄、見返りはその後」を掲げ、これを「リビアモデル」と呼んできたトランプ政権の代表的な対北強硬論者だ。「キム・ゲグァン談話」は「彼(ボルトン)に対する拒否感を隠さない」と言及した。「チェ・ソニ談話」はペンス副大統領が21日(現地時間)、「フォックスニュース」とのインタビューで「金正恩が合意しなければ、リビアモデルが終わったように、これ(北朝鮮)も終わることになるだろう」と表現したことを「無分別な脅迫」だとし、「恐ろしい結果」を“警告”した。さらに、ペンス副大統領は、平昌(ピョンチャン)五輪の際、ソ・フン国家情報院長や金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長、マイク・ポンペオ当時米CIA長官が“3角企画”した「金与正(キム・ヨジョン)・金永南(キム・ヨンナム)とペンス」の会合を一方的に拒否し、朝米関係の改善の流れに水を差した悪縁がある。
要するに、2人の談話は、ペンス副大統領とボルトン補佐官に狙いを定める一方、トランプ大統領とポンペオ長官は非難しない“選別打撃”で米国内の強硬派を牽制し、「リビアの二の舞にならないため、高い対償を払って(核兵力という)強力で頼もしい力を育てた」(チェ・ソニ談話)という比較的“率直な”主張で、いわゆる「リビアモデル」は決して受け入れられないことを繰り返し強調したものと言える。
イ・ジェフン、ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.k)