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80件を超えた無罪判決…「良心的兵役拒否問題は人権の最前線」

登録:2018-05-16 08:36 修正:2018-05-16 12:09
2004年に初の無罪後、83番目の無罪判決 
人権委員長「代替服務制を推進すべき」 
初めて控訴審で無罪判決を下したキム・ヨンシク部長 
「最高裁で無罪・憲法裁で違憲決定すれば 
人権擁護の記念碑的な判決となる 」
「エホバの証人」信者たちが昨年8月11日、大統領府入口で宗教的良心による兵役拒否者904人の署名を含む請願書を渡しに鐘路警察署に向かっている。彼らは文在寅大統領が公約とした良心的兵役拒否者の代替服務制が早期に推進されるべきだと主張した=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 「国家は代替服務制を早急に設けて施行し、軍の人権の改善と平和統一の努力を傾注することで、良心的兵役拒否者と良心的兵役義務履行者を含めたすべての国民に法治の恩恵を広げる制度を設ける義務がある。国家が良心的兵役拒否者たちに代替服務を許容せず、執銃兵役義務だけを強要することは、問題を解決できない責任をそのまま良心的兵役拒否者たちに背負わせるだけだ」

 14日、水原地裁平沢(ピョンテク)支院刑事4単独のイ・スンフン判事は、国家の責任を強調し、宗教的理由で兵役を拒否したPさん(22)に無罪を宣告した。2004年5月、良心的兵役拒否に関する初の無罪判決が出た後、83番目の無罪判決(判決文基準)だ。

 国家人権委員会が「世界兵役拒否者の日」である15日を迎えて開催した「代替服務制度作りおよび導入に向けた討論会」には、1審ではなく控訴審の裁判で良心的兵役拒否に対して初の無罪判決を下した仁川地裁のキム・ヨンシク部長判事が出席した。キム部長判事は「1審の無罪比率が10%は超えると推定される。対立を解決する効果的な代案作りが可能なのに、国家が一方的に刑罰権だけに固執するのは比例原則に違反し、執銃兵役義務拒否は兵役法第88条第1項の(兵役拒否など)正当な理由に含まれるという趣旨だ」と指摘した。

 2004年に3件、2007年に1件だった無罪判決は2015年6件、2016年7件、2017年44件、2018年現在まで22件へと徐々に増えている。2004年と2011年の憲法裁判所の合憲決定、2004年の最高裁判所全員合議体の有罪判決にもかかわらず、下級審では最高裁判所と政府の立場の変化の必要性を要求する無罪判決が続いている。無罪を宣告しなくても、憲法裁の決定を待つとし、判決を延期する場合も多い。

 2002年の初の違憲法律審判提請を皮切りに、良心的兵役拒否者の刑事処罰に問題意識を感じた判事たちは、憲法裁に処罰の根拠である兵役法第88条第1項に対して違憲法律審判を提請した。しかし、2015年からは本格的に無罪宣告を下し始めた。その背景をキム部長判事は、「法理的に合憲的な法律解釈に関する認識と自信感が生じた一方で、保守的な政府の下で憲法裁に違憲判断の期待をするのは難しかった。裁判官たちの人権意識や人権感受性が持続的に培われ、国際機関の人権基準に目線を合わせ、2016年末のろうそくデモと2017年の大統領弾劾決定以降、より人権意識の高い社会的ムードに影響を受けた」と分析した。

 憲法裁は現在、3番目の良心的兵役拒否事件を審理中だ。イ・ジンソン憲法裁所長は昨年、国会人事聴聞会で「人間の自由のうち最も基本となる良心の自由を守るために処罰を甘んじて受ける状況を厳重に受け止めなければならないのではないかと思う」とし、前向きな立場を明らかにしている。キム部長判事は「良心的兵役拒否問題は、民主化以降から韓国社会の最も敏感で先鋭な人権の最前線にある。最高裁が無罪を言い渡したり、憲法裁が違憲決定をするなら、強固な安保論理を克服して少数者人権を選択した人権擁護の記念碑的な判決になるだろう」と強調した。さらに、「良心の自由というのは、多数が形成した法秩序、そしてその秩序の形成で排除されたが多数者と共存するしかない少数者の良心が衝突したり対立する時、これを調整する基本権だ。そして、それは多数者の寛容さや配慮として表れ、少数者に息づく空間を与えながらともに生きることなのではないか」と、キム部長判事は付け加えた。

 裁判所の変化は、良心的兵役拒否者にも希望となった。良心的兵役拒否者のソン・インホ氏は「高校生の時に見に行った兵役拒否者の裁判で、申し訳なさそうな表情で有罪を言い渡した判事の顔を思い出す。それからしばらく後、その方が控訴審で初めて兵役拒否者に無罪を言い渡したというニュースを聞いて、人々の考えが変化していることを随所で感じる」と話した。「裁判部ができることは、被告人に小さなマッチの火を与えるものであり、この火が今後大きな火となることを願う」と述べた無罪判決の時のキム部長判事の言葉を引用し、ソン氏は「無罪判決が全国の裁判所で下され、今日のように代替服務を議論する場が多くなり、マッチの火が大きな火となって燃え上がる姿を見て、さらに大きな希望が持てるようになった」とソン氏は話した。

 イ・ソンホ国家人権委員会委員長は、討論会の挨拶で「委員会が2005年と2017年に代替服務制の導入を勧告したが、政府は消極的な立場を堅持しているので残念だ。無罪判決が増え、国民認識も変化しており、兵役義務と良心の自由を調和させるための代替服務制の導入を推進すべき時がきた」と話した。討論会ではさまざまな代替服務制案が議論されたが、特に国際アムネスティ韓国支部の活動家のトム・レイニースミス氏は「国連自由権委員会などは、代替服務制が軍の管轄・統制にあってはならず、軍服務と代替服務の期間は同じくらいにするか差を減らすべきだと勧告した」と強調した。

キム・ミンギョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/844750.html韓国語原文入力:2018-05-16 07:19
訳M.C

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