フィンランド政府が世界で初めて政府レベルで進行したベーシック・インカム(基本所得)の実験が失敗に終わったという国内外の報道と関連して、この制度の設計・施行を担当するフィンランド社会保障局(KELA)のオリ・カンガス局長(政府および地域社会担当理事)は3日、「嘘のニュース」だと話した。実験は依然として進行中であり、結果はまだ出ていないというのがカンガス局長の説明だ。
カンガス局長はこの日、ハンギョレとの電子メールでのインタビューで「今回のベーシック・インカム実験について『失望した』と指摘するところはまだない」とし、「(英国の)BBCやロシアのメディアが、まるで実験の結果を知っているかのように報じたが、われわれもまだ結果を得られていない状態」だと明らかにした。また、彼は「そのようなニュースが一体どこから出ているのか知りたい」と付け加えた。BBCや「テレグラフ」、これらのメディアを引用した国内の一部マスコミが「フィンランドのベーシック・インカム実験は失敗した」という報道を先を競って出している中、この実験を直接設計した当事者がこれに正面から反論する主張をしたということだ。
昨年1月に始まったフィンランドのベーシック・インカム実験は、政府が長期失業者(25~58歳)2千人を無作為に選抜し、無条件で毎月560ユーロ(約7万2千円)を支給する内容だ。支給対象者の求職形態の変化を確認することが実験の主な目的であり、今年12月まで進められる予定だ。実験を主導する社会福祉局は1937年に設立された政府機関で、児童手当や失業給与など各種の福祉制度を担当する。全世界でさまざまな類型のベーシック・インカム制度を模索している中で、フィンランドは政府レベルでこれを進行したことで大きな関心を集めた。
カンガス局長が渡したフィンランドの社会福祉資料には「ベーシック・インカム実験は今も進行中であり、その結果は来年末までは現れない」と出ている。また、「ベーシック・インカムの支給対象者の行動に影響を与える恐れがあるため、進行中の実験の影響は決して評価対象になり得ない」という説明もある。結局、現時点でフィンランドのベーシック・インカム実験の結果に言及することは、可能でもなく、望ましくもないということだ。
チェ・ヨンジュン延世大学教授(行政学)は「100年前に初めて福祉国家の概念が提示された時も混乱が多かった。現在の福祉国家体制では限界があるということに多くの人々が共感しており、左派のみならず技術革命の提唱者たちまで今後ベーシック・インカムなしには難しいと話すだけに、すぐに『失敗だ、そうではない』とするアプローチよりも、大きな次元でのパラダイムの変化に注目しなければならない」と話した。