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フィンランド、基本所得実験…毎月7万円を一切条件付けずに支給

登録:2017-01-03 23:01 修正:2017-01-04 16:23
2000人に2年間支給実験…就職しても支給 
貧困減少・雇用拡大効果を綿密検討後 
成果が確認できれば適用対象拡大実施予定 
カナダ・ウガンダも試験実施導入 
 
米アラスカ州は41年前から配当所得 
スイス国民投票、ドイツでは政党創設
基本所得施行・準備国家現況//ハンギョレ新聞社

 フィンランドが国家単位では欧州で初めて今年から「基本所得制」実験を始めた。フィンランド社会福祉局(KELA)は2日、福祉手当を受け取る生産可能人口のうち無作為で選ばれた失業者2000人に対して、今後2年間毎月560ユーロ(約7万円)を一切の条件を付けずに支給する基本所得制を1日から実施したと公式発表した。現在フィンランドは、2015年4月の総選挙で1位を占めた中道党のユハ・シピラ首相が中道右派指向の連立政府を率いている。

 基本所得の受給者は、このお金を自由に使え、どんな用途に使ったのかを当局に報告する義務はない。代わりに既に受け取っていた多様な形の現金性社会福祉恩恵は、基本所得の受給額に合せて控除される。フィンランド政府は今回の実験を通じて、普遍的福祉制度である基本所得が貧困の減少と雇用創出効果を発揮できるかを綿密に観察し、成果が確認されれば小商工業者や時間制労働者など他の低所得層にも拡大するつもりだ。

 KELAのオルリ・カンガス担当官は2日、AP通信に「今回の実験の目的は、失業者が何かを失うことに対する恐れ、すなわち“意欲喪失”問題をなくすこと」にあるとしながら、「実験期間中に受給者が職場を見つけても基本所得の受給は続く」と明らかにした。フィンランドの公式統計によれば、2016年現在で1人当りの月平均所得は3500ユーロ(約43万円)、失業率は8.1%水準だ。

 フィンランドは社会福祉制度がよく整っているが、需給条件が非常に複雑で難しい。そのために失業者が失業給付などの恩恵中断を憂慮して、低所得職場や時間制働き口への就職を敬遠する。カンガス担当官は「基本所得制が人々の行動をどのように変えるのか、受給者が多様な働き口を果敢に経験してみることになるか、あるいは一部の批判者が言うとおり何もせずに所得が得られることを知って、一層怠けるようになるのかを観察することは非常に興味深い」と話した。

先月31日夜(現地時間)フィンランドのヘルシンキ中心部にある市民広場で、市民が独立100周年をむかえる2017年の新年を待って祝っている。フィンランドは今年から基本所得制実験を始めた=ヘルシンキ/EPA聯合ニュース

 基本所得とは、すべての社会構成員の「適切な人生」を保障するために、国家または地方自治体などの政治共同体がすべての構成員に個別的に一切の条件を付けずに定期的に支給する現金性所得をいう。普遍的保障所得である「基本所得」概念は、ますます深刻化する貧富格差の拡大と所得両極化が中産層以下の生活の質を悪化させるだけでなく、階層間の軋轢で共同体の結束までを脅かしているという問題意識から始まった。そのために、社会構成員が人間的尊厳と市民としての主体性を維持できる画期的発想として基本所得制に対する関心と共感が次第に高まっている。

 しかし、基本所得制をめぐって「普遍的福祉の正当性」を擁護する肯定論と「労働意欲低下および不公平」を主張する批判論が対抗している。まだ基本所得の支給を国家単位で全面施行している国は殆どないが、西欧の経済先進国だけでなく開発途上国や低開発国でも基本所得を部分導入している国は増加している。

 すでに米国アラスカ州では1976年に石油収入を財源としてアラスカ永久基金を設立し、すべての住民に毎年配当所得を支給している。昨年は1人当り2072ドル(約25万円)が支給された。イタリアの小都市リヴォルノは、昨年6月から最貧困層100世帯に毎月517ユーロ(約6万4千円)の基本所得を支給し、今月1日からは支給世帯を200世帯に増やした。オランダ、ブラジル、インド、ナミビアなどでも一部の地方自治団体で基本所得制を実験中だ。

 今年に入ってからは、フィンランドに続きカナダとウガンダの一部地方自治体でも基本所得制を試験実施する。ドイツでは昨年6月に普遍的基本所得制全面導入を目的とする政党「基本所得同盟」が創設され、今年10月の総選挙に候補を出す計画だ。

 スイスでは昨年6月、すべての国民に毎月2500フラン(約28万円)を支給する基本所得案が国民投票にかけられたが、77%の反対で否決された。しかし、投票が否決された理由は、基本所得自体に対する反対と言うよりは、支給額が高すぎる反面、財源調達および運用方案が不確かだった点、増税負担、労働意欲減少、移民者流入など無賃乗車者の増加などに対する憂慮が大きかった。スイスは国民800万人のうち10万人以上が署名した案件は国民投票にかけることができ、給与額の調整など細部計画を補完して再投票が行われる可能性が大きい。

チョ・イルジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/777202.html 韓国語原文入力:2017-01-03 20:22
訳J.S(2207字)

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