「忘れたら負けだから」
日本軍「慰安婦」被害女性の痛みを描いた映画『アイ・キャン・スピーク』で、ハルモニ(おばあさん)が世の中に向かって吐き出した絶叫だ。忠清南道公州では、短く重みのあるこの文言が市内バスに掲げられ、市民の心を揺さぶっている。最近、忠清南道公州(コンジュ)市街を行き来する100番の市内バスの車体には、「忘れたら負けだから」という文句と平和の少女像、生徒4人の姿の広告が貼られた。「記憶されない歴史は繰り返されます。私たちは、ハルモニたちの痛みをともに記憶しましょう!」という文も添えた。
広告は公州高校の生徒たちが制作して掲示した。昨年、1年生2学期の自主活動の一つである「色のあるクラス別創意テーマ活動」で誰かが投げかけた「日帝、慰安婦、独島問題など歴史認識について考えてみようか」が出発点だ。生徒たちは頭をつき合わせ考えた末に、慰安婦問題と関連し意義あることをしようと意気投合した。「議論の末に、慰安婦被害関連広告を制作して市内バスに貼りつけることにしました。生徒はもちろん、市民に対して慰安婦問題を伝え共有しようとする気持ちでした」
答えは出したが、参加と費用が問題だった。校内のフリーマーケットを開き、慰安婦のバッジを売って寄付金を集めることにした。反応は爆発的だった。生徒や教職員などは本や服、学用品、家電製品、万年筆など使わないものを誰もかれも寄付した。瞬く間に200点あまりが集まった。生徒たちは昨年11月8~14日、図書館の前でフリーマーケットを開いた。人気の高い物品はオークションも行った。ある教師が出品した無線マイクは4万ウォンで落札されたりもした。フリーマーケットやオークションなどの人気で、当初の予想の倍以上に当たる60万ウォン(約6万円)が残った。
生徒たちはこのお金で慰安婦バッジ400個を買った。フリーマーケットに出す品物を寄付した生徒・教師などに200個をプレゼントした。100個は校内で、残りの100個は隣りの公州大学付属高校へ遠征に行って売った。2年生のイ・シウォン君(17)は「もともと1500ウォン(約150円)だが、慰安婦被害者の痛みを分かち合おうとする意味で500~1000ウォンもらって販売した。バッジが瞬く間に底をつくほど人気だったのでびっくりした」と話した。
バッジを買って売ったら38万ウォン(3万8千円)が残った。広告制作・掲示にはまるで足りなかった。生徒たちは市内バス広告代理店に行って事情を説明し、一カ月だけでも広告を貼ってほしいとお願いした。同社のキム・カンチョル代表(50)は「自分の子どもと同年代の子どもたちの考えに非常に感心して、生徒たちの図案をもとに広告を制作してバスにつけた。1カ月契約をしたが、特に異変がなければ今年はそのままつけておくつもりだ」と話した。
広告を貼った学校と生徒たちに市民の称賛が相次いでいる。生徒たちはすでに「慰安婦ハルモニ広告第二弾」を企画している。同校教師のペク・キョンジャさん(48)は「広告制作プロジェクトを展開し、慰安婦ハルモニと日帝に対する生徒たちの歴史認識が見違えるほど成熟していった。バスに広告が掲示された後、生徒だけでなく親や市民とも慰安婦被害者問題を共有できるようになってさらに意味深い」と話した。