文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、韓国産鉄鋼に対するドナルド・トランプ米行政府の関税爆弾に対して、韓米間“通商激突”も辞さないという態勢に急旋回する様相だ。
文大統領は19日、大統領府首席補佐官会議で「(米国トランプ行政府の)不合理な保護貿易措置に世界貿易機構(WTO)への提訴、および韓米自由貿易協定(FTA)違反有無検討など、堂々と決然とした対応」を求めた。異例に強力な今回の発言は、最近のトランプ大統領の韓国産輸入製品に対する一連の貿易報復措置が度を越していて、今回商務省が発表した貿易拡張法232条に基づく「鉄鋼輸入の安保影響」勧告措置がその絶頂だという判断に従ったものと見られる。貿易業界では、米商務省が勧告案第2案(12カ国に最小53%の関税賦課)において日本・ドイツ・台湾など米国の他の同盟・友好国産の鉄鋼は輸入規制対象12カ国から除外し、唯一韓国のみを含ませて「同盟国韓国たたき」をする状況に、文大統領が深く憂慮して反発して出たのではないかという解釈もある。
韓国政府は昨年4月、鉄鋼輸入が国家安保に及ぼす影響を調査せよとのトランプ大統領の行政命令発表以後、数回にわたり米国側に、韓国は米国の安保同盟国であり大規模武器輸入国であり▽米国の韓国産鉄鋼輸入が最近減少中であり▽韓国の鉄鋼会社が対米投資および現地雇用を通じて寄与している点を強調してきた。それでも米通商当局は、韓国産製品に対して輸入規制31件(2017年末基準・反ダンピング22件、反ダンピングおよび相殺関税7件、セーフガード2件)を無差別的に発動している。
事実、鉄鋼輸入が“安保”に及ぼす影響は、米国の口実に過ぎない。石油ボーリングに使われる油田用鋼管の場合、韓国の世界輸出市場占有率は43.4%で、従来1位だった米国(32.9%)を締め出し、両国が激しくしのぎを削っている。貿易協会によれば、韓国は世界輸出市場1位の鉄鋼関連15製品のうち、3品目で米国と競合している。米商務省の鉄鋼232条調査は、安保あるいは同盟の問題を離れて単純に貿易部門での競争相手国に対する報復措置に過ぎないわけだ。
文大統領の高強度対応指示は異例だ。トランプ行政府が、洗濯機セーフガードなど韓国製品に対してとった一連の保護貿易措置をめぐり、キム・ヒョンジョン通商交渉本部長らが世界貿易機構への提訴などに数回言及したことはある。だが、文大統領のこの日の発言は、通商と関連してトランプ行政府に強力に対応するという宣言と受け止められる。こうした方向旋回の背景には、15カ月連続で増加傾向を継続している輸出戦線に「トランプ発の輸入規制」という暗雲が立ち込めているという切迫感も反映されたと分析される。韓国産の鉄鋼・洗濯機・太陽光パネル・化学製品・自動車など、全方向にわたるトランプ大統領の保護貿易攻勢により、この間実物経済成長を後押ししてきた輸出が突然鈍化に陥りかねないという憂慮が台頭する状況だ。
また、現政権が新しい通商基調を米国市場依存から抜け出して中国・ロシアのような“新北方”および東南アジアなど“新南方”進出に設定しただけに、米国に対しても両国間の通商関係悪化を辞さずに「言うべきことは言う」という意志を表わしたと解釈される。文大統領はこの日「新北方政策と新南方政策の積極的推進を通じて、輸出を多角化する機会にしなければならない」と述べた。
文大統領の今回の言及は、韓国の鉄鋼メーカーへの打撃が最も大きいと見られる第2案をトランプ大統領が最終選択する“最悪”の事態を避けるための圧迫カードの性格もあると見られる。産業通商資源部の高位関係者は「第2案が現実化されれば、韓国の鉄鋼の対米輸出にきわめて大きな打撃が予想される。関税および貿易に関する一般協定(GATT) 21条に、国家安保事項は輸入規制を認められるという例外条項がありはするが、特定12カ国にのみ差別的に53%もの関税賦課を適用することになればこの例外条項も認められないと見る」として「第2案に決まれば、世界貿易機構への提訴を積極的に検討する」と話した。