他人の不幸や痛みの前で笑わないのが人の基本的な美徳だ。残念なことに米国のトランプ大統領にはそのような人徳を見出せない。彼は旧正月(2月16日)の直前に韓国GMが群山(クンサン)工場閉鎖の方針を明らかにし、1万人余りが失業の危機にあっているというのに「GMはデトロイトに戻るだろう」と喜び、法人税を減免した自身の功績を挙げた。いくら国際関係は情けがないといっても、常識から大きく逸脱した発言だ。
トランプ政権の貿易政策はますます目の前の自国の利益だけを追求する道に向かっている。自国の企業の市場の位置づけ強化や米国内の雇用拡大に役立つ措置ならば、国際法や慣行、他国との信頼関係をいとも簡単に無視する。特に、対米貿易の黒字が大きい国をターゲットとして各種の貿易報復措置を総動員している。中国産と韓国産の鉄鋼・アルミニウム製品に対する反ダンピング調査結果を近いうちに発表する予定で、韓国産などの洗濯機とソーラー製品について16年ぶりに緊急輸入制限措置を発動している。
トランプ大統領は12日には中国、日本、韓国を名指しして米国産製品に他国が付けている税金と同等の関税を付ける「相互税」をまもなく導入すると明らかにした。韓国との自由貿易協定(FTA)については交渉が不調なら廃棄すると話している。どこまで実行に移すかは不明なものの、「貿易では同盟ではない」というトランプの話は今後どんなことが起きるか予断を許さない。
米国の措置は長い目で見て同国内の消費者にも大きな害を及ぼすことになるはずだ。現在はこのような説得が通じると期待しにくいが、それでも両者の協議を強化せねばならない。不合理な措置については世界貿易機構(WTO)への提訴などで対処し、同じ立場の国家と協力を模索すべきだ。最悪の場合、米国の措置に正面から対抗する報復措置も綿密に検討しておかなければならない。