平昌(ピョンチャン)冬季五輪を祝うために今月9~11日訪韓する高官級代表団の団長として、北朝鮮がキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長を選んだのは、形式的な面で最大限の“誠意”を示したものと評価できる。キム常任委員長が持っている“象徴性”に加え、一緒に訪韓する団員3人と支援団員の18人の面々から、南北関係の未来を予測して見ることもできる。
北朝鮮憲法第87条は、最高人民会議を「最高主権機関」と規定している。また、第117条は「最高人民会議常任委員長は、国を代表し、ほかの国の使者から信任状と召喚状を受け取る」と定めている。キム常任委員長が形式の上では北朝鮮の「国家首班」に当たるということだ。実際、キム常任委員長は、2008年北京夏季五輪と2014年ソチ冬季五輪などにも、代表団長として出席し、“首脳外交”を展開した。
1983年から1998年まで、韓国の外交部長官にあたる外交部長を歴任したキム常任委員長は、儀式と格式に長けた外交専門家として知られる。ただし、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を頂点とする北朝鮮の権力体制の中で、彼の役割は制限的なものにならざるを得ない。2002年と2005年の2回にわたり、キム常任委員長と対面したチョン・セヒョン元統一部長官は「(外交官出身らしく)1対1で対話を交わす時も、教科書的な模範解答から一歩も出なかった」と振り返った。
キム常任委員長が団長を務めることで、“形式”を最大限に引き上げたなら、“内容”を左右するのは、一緒に訪韓する高官級代表団3人の面々にかかっていると指摘されるのも、このためだ。特に、当局間会談と異なり、高官級代表団は成果に対する負担がないため、探索に向けた対話に適している。公式的な面会だけでなく、食事や公演、試合の観覧など、様々な接触を通じて南北が互いの意図と戦略を判断することができる。
専門家らは、北朝鮮が統一戦線部・祖国平和統一委員会などの対南関係▽北朝鮮の核問題などの外交関係▽党や内閣の代表性などをすべて考慮し、代表団員を決定すると予想している。対話の動力を平昌五輪の閉幕以降まで引っ張っていけるかが、彼らの役割にかかっているためだ。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「北朝鮮が南北関係の改善を超え、朝米間対話まで進むという戦略的判断を下したなら、金正恩労働党委員長の側近を派遣するものとみられる」としたうえで、「場合によってはチェ・リョンヘ党副委員長など、権力の核心にいる人物が直接乗り出す可能性も考えられる」と見込んだ。大統領府は必ずチェ副委員長ではなくとも、金正恩委員長の他の側近が代表団員に含まれた場合は、平昌以降について意味のある探索ができるものと見ている。
支援団員18人の訪韓も今後の南北関係を進めていくのに肯定的な影響を与えるものとみられる。長期間にわたり南北対話が途絶えたうえ、金正恩委員長の就任後、最も幅広い南北実務レベル当局者間の接触が行なわれる可能性もあるからだ。チョン・セヒョン元長官は「対南関係と関連した北側の実務者たちが来て、韓国側実務者らと顔を合わせて意見を交換すれば、今後、当局会談の動力を維持するのに大きく役立だろう」と指摘した。
平昌の五輪開幕式に出席するマイク・ペンス米副大統領と北側の高官級代表団間の直接接触が実現できるかも関心事だ。米朝関係の現状からして、「意味ある対話」よりは「偶然な出会い」程度に止まるというのが大方の予想だ。キム・ヨンチョル仁済大学教授は「平昌現地で朝米が意見の一致を見ることは難しいだろう」とし、「今後、本格的な対話に向けた糸口をつかむことがむしろ重要だ」と指摘した。