本文に移動

[ニュース分析]大統領府の否定にも「原子力潜水艦保有論」めぐり波紋広がる

登録:2017-09-21 02:44 修正:2017-09-21 08:13
大統領府「韓米合意」否定するが…

韓米首脳による電話会談で一度言及  
大統領府「防御能力向上の必要性に共感」  
外交・安保ライン、水面下で議論している可能性も  
 
北朝鮮の潜水艦無力化できるか 
北朝鮮SLBMに対抗する戦略資産を検討  
文大統領も大統領選候補時代に言及  
北朝鮮の領海に接近しなければ実効性なく  
 
難関多く、実際の導入は不透明  
「朝鮮半島非核化」宣言に反する  
濃縮ウラン、米国の許可なしには不可能  
天文学的費用に保有国は6カ国だけ

文在寅大統領が今月19日(現地時間)午後、ニューヨーク国連本部で開かれた「気候変動主要国首脳級対話」の会議場に入場している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の核・ミサイル高度化に対する対応策として、韓国の原子力潜水艦(SSN)の保有問題が大きく注目を集めている。韓国軍の自主的な防御能力の増強と対北朝鮮抑止力の確保のため、核潜水艦の導入が必要だという声が高まっており、韓米が原子力潜水艦の導入に共感したという噂も流れている。しかし、15兆ウォン(約1兆4780億円)に上る莫大な予算が必要な上、原子力潜水艦が北朝鮮の潜水艦発射ミサイル(SLBM)の脅威を無力化できる能力があるのかも疑わしいうえ、「朝鮮半島非核化共同宣言」の違反問題も提起される可能性が高く、論議が予想される。

■広がりを見せる原子力潜水艦保有論

 大統領府のユン・ヨンチャン国民疎通秘書官は20日、書面による立場表明を通じて、「一部メディアが報道した韓米原子力潜水艦保有合意の記事は事実と異なり、これまで両国間に何らかの形の合意が行われたこともない」と明らかにした。「中央日報」が同日付で、韓米両国が原子力潜水艦の韓国導入を緊密に論議し、文大統領のニューヨーク訪問が終わってから関連内容を公表するものと見られると報じたことに対する反論だった。大統領府は否定しているが、政界の内外では様々な外交・安保ラインを通じて原子力潜水艦の導入に向けた実務レベルの議論が行われているという噂が流れている。先月7日、文大統領がドナルド・トランプ米大統領との電話会談で、韓国軍の独自的な戦力強化案の一つとして原子力潜水艦を一度言及した上に、今月17日の電話会談でも「先端兵器の補強のためのトランプ大統領の関心や協力に謝意を表する」と述べたことがあるからだ。文大統領が言及した「先端兵器」がまさに原子力潜水艦ではないかということだ。また、別の大統領府関係者も「韓国軍の戦略防衛能力を向上させる方法の中で、最も脅威的なのが原子力潜水艦というのは内部的にすでに合意され、いかなる意見の相違もない」として含みを持たせた。

米国のバージニア級原子力潜水艦//ハンギョレ新聞社

■北朝鮮の潜水艦を無力化できるかは疑問

 大統領府関係者たちは「原子力潜水艦の導入に対する文大統領の意志が強い」と口をそろえている。文大統領は、大統領選挙候補時代にも「私たちにも原子力潜水艦が必要な時代になった。韓米原子力協定の改正を協議する」と明らかにした。原子力潜水艦を導入する名分として掲げているのは、北朝鮮の潜水艦発射ミサイル(SLBM)の脅威に対する備えだ。北朝鮮は昨年8月、コレ(クジラ)級潜水艦からSLBMの「北極星」(KN-11)の発射に成功した。これによってミサイル発射管1~2基を装着したと推定されるこの潜水艦が、韓国の後方海域に密かに移動して北極星を発射すれば、無防備状態になりかねないという懸念が広がっている。原子力潜水艦はこれを防ぐための代案として取り上げられた。予め要所に潜航能力が優秀な原子力潜水艦を配置し、北朝鮮のコレ級潜水艦が作戦に出た場合は追跡し、弾道ミサイルを発射する兆しを見せれば、攻撃して撃沈させることが最善の方策ということだ。しかし、このような案については「潜水艦で潜水艦を防ぐのは容易ではない」として、その実効性に疑問を呈する意見も少なくない。北朝鮮領海を侵犯するほど近づかなければ、北朝鮮の潜水艦を監視するのが不可能だということだ。また、原子力潜水艦を持ち込むためには、整備・作戦・待機用に3隻が必要であるため、1隻に5兆ウォン(約4930億円)ずつ、計15兆ウォンをつぎ込まなければならない。コストに見合う効果があるかが疑問視されるのも、そのためだ。

■朝鮮半島非核化原則に反する

 技術的・経済的側面の他にも別の難関も多い。まず、1991年12月、南北間で締結された「朝鮮半島非核化共同宣言」第2条は「南と北は核エネルギーを平和的目的のみに用いる」と定めている。軍事的利用を禁止しているのだ。朝鮮半島非核化宣言は、北朝鮮の非核化を求める名分であり、根拠であるため、違反するわけにはいかないというのが大方の意見だ。

 2015年4月に改正された韓米原子力協定も障害となる。原子力潜水艦には原子炉燃料用の濃縮ウランが必要である。しかし、韓米原子力協定の第11条は20%未満のウラン濃縮を許可しているものの、韓米間の書面合意がなければならないと規定している。これまでの原子力潜水艦を保有した国は核保有国である米国やロシア、中国、英国、フランス、インドの6カ国だけだ。このような現実からして、米国が韓国に原子力潜水艦(の導入)を認めるのは難しいと思われる。韓国が原子力潜水艦を持つことになれば、日本など周辺国にドミノ効果を起こす可能性が高いからだ。実際、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2003年、海軍が原子力潜水艦の建造計画を推進したが、この事実がマスコミに公開され、波紋が広がったことを受け、諦めた経緯もある。

イ・ジョンエ記者、パク・ビョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/811887.html 韓国語原文入力:2017-09-20 23:18
訳H.J(2536字)

関連記事