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米国、北朝鮮の追加ミサイルにも以前とは異なる対応

登録:2017-09-16 03:37 修正:2017-09-16 07:15
日本上空通過3700キロメートル飛行し「グアム打撃能力」を再度誇示 
米国「北米とグアムを脅かすものではない」緊張の高まりを警戒 
文大統領「北朝鮮を再起不能にする力を持っている…人道支援は持続」
陸軍は今月15日未明、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対応し、直ちに「玄武2」2発を東海に発射したと明らかにした=陸軍提供//ハンギョレ新聞社

 15日午前、北朝鮮の弾道ミサイル試験発射で、朝鮮半島情勢が再び「視界ゼロ」状態に陥っている。北朝鮮の挑発と国際社会の制裁という悪循環が果てしなく繰り返されることで、“強対強”の対峙局面が「ニューノーマル」(新たな日常・基準)になりつつある。核武装能力の完成に向けた北朝鮮の疾走を止めるための局面転換の努力が切実だ。

 国連安全保障理事会(安保理)が対北朝鮮制裁決議第2375号を満場一致で採択してから3日後の同日午前6時57分頃、北朝鮮は平壌(ピョンヤン)郊外の順安(スナン)から、日本の北海道の上空を超え、北太平洋海上に向かって弾道ミサイル1発を発射した。合同参謀本部は「(ミサイルの)最大高度は約770キロメートル以上、飛行距離は約3700キロメートル以上と判断される」と明らかにした。最高高度や飛行距離などから、先月29日に似たような軌跡を描きながら日本上空を通過した中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星-12」型(当時、飛行距離2700キロメートル)である可能性が高いとみられる。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は同日午前8時、国家安全保障会議(NSC)の全体会議を開き、「北朝鮮が国連安保理決議をこれ見よがしに無視し、再び弾道ミサイルを発射した。厳しく糾弾すると共に、憤りを覚える」と述べた。文大統領はさらに、「このような状況では対話が不可能だ」とし、「北朝鮮が挑発してきた場合、早期に粉砕し、再起不能にできる力を持っている」と強く警告した。

 同日、北朝鮮が発射したミサイルの飛行距離は、平壌からグアムまでの距離(約3400キロメートル)を超えた。北朝鮮が先月に予告した「グアム包囲射撃」が実際に可能だという点を立証したのだ。しかし、米軍太平洋司令部のデビッド・ベンハム報道官は同日、声明を発表し「北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、北朝鮮が発射したミサイルが北米やグアムを脅かすものではないと判断した」と明らかにした。緊張局面が過度に高まることを警戒するためと見られる。

 文大統領も、強力な対北朝鮮警告にもかかわらず、前日発表した国際機構を通じた対北朝鮮人道支援推進方針には大きな変化がないという意向を明らかにした。文大統領は同日午後、日本の安倍晋三首相と行った電話会談で、「原則的に乳幼児や妊婦を支援するのは、政治的状況に関係なく取り上げるべき事案」だと述べた。文大統領が「北朝鮮に対する人道支援事業の時期を考慮すべき」という安倍首相の要求にこのように答えることで、北朝鮮の挑発には国際社会との圧迫協力を強化して厳しく対応しながらも、人道支援は続けることで、対話のための最小限の手段は維持する意志を示したものと見られる。文大統領はすでに前日の14日午前、北朝鮮の追加発射の動きを報告を受けたにもかかわらず、米国のCNN放送とのインタビューで、「制裁と圧迫は北朝鮮を対話の道に引き出すためのもの」だとして、「平和的解決」を強調した。

 レックス・ティラーソン米国務長官は同日、声明を発表し、中国とロシアの独自の対北朝鮮圧迫を促した。脅威レベルが高まった状況で、当分は対北朝鮮圧迫の基調を維持する意向を示したものとみられる。しかし、安保理が直ちに対北朝鮮追加制裁の協議に突入しても、中国とロシアが反対する原油供給中断カードを全面化することは難しい見込みだ。ティラーソン長官も同日、「安保理で北朝鮮に対する油類供給の全面中止措置が出るのは非常に難しいだろう」と述べた。

 相次ぐ圧迫と韓米の武力誇示にもかかわらず、北朝鮮の挑発が続いており、トランプ政権の選択肢は多くなさそうだ。すでに米国民主党側ではトランプ大統領の対北朝鮮政策が失敗したという声が高まっている。「テーブルの上にある」という軍事的オプションは依然としてなかなか使いづらいカードだ。交渉も、北朝鮮と米国が対話への復帰の名分についての接点を見出せるかにかかっている。

 北朝鮮は、いわゆる「国家核兵力の完成」に向けて戦略挑発を続ける意思を明確にした。火星-12型だけでなく、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と大陸間弾道ミサイル(ICBM)級火星-14型まで、着実に完成度を高めていくと見られる。これに対抗し、国際社会は制裁・圧迫のレベルを高めざるを得ない。結局、今後、朝鮮半島周辺情勢は高まった危機の中で“挑発と制裁”の悪循環をいかに断ち切るかにかかっている。

文在寅大統領が15日午前、大統領府国家危機管理センターで北朝鮮のミサイル挑発と関連して国家安全保障会議(NSC)全体会議を主宰している=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 文大統領は今年18~22日、米国を訪問し、国連総会に出席する。文大統領が21日に予定された総会演説で、朝鮮半島危機を突破するための解決策を打ち出せるかに注目が集まっている。さらに、26日には10・4南北首脳宣言10周年記念式が予定されている。同式典で、文大統領がもう一度対北朝鮮メッセージを発表する可能性もある。

 問題は10月初めには北朝鮮にとって“象徴的な日”が目白押しである点にある。8日は金日成(キム・イルソン)主席死去後「3年忌み明け」をした金正日(キム・ジョンイル)総書記が、労働党総書記に推戴されてから20周年となる日だ。9日は、北朝鮮の1回目の核実験11周年であり、10日は労働党創党72周年の記念日だ。12日は、朝米が平和協定の締結と国交正常化直前まで行った米朝共同コミュニケ(声明)発表17周年だ。どんな形であれ、北朝鮮が挑発に乗り出す可能性が高い。

 この時期が無事に過ぎれば、トランプ大統領が韓日中を歴訪する11月初めが朝鮮半島情勢の分岐点になる可能性もある。危機の頂点で「最大の関与」に向かう扉が開かれることもあり得るからだ。慶応大学の小此木政夫名誉教授は、ハンギョレとの電話インタビューで「北朝鮮は2年近く緊張を高めて譲歩を引き出そうとする政策を展開してきた。この状況で対話するのは難しい。互いに一旦立ち止まるべきだ」と話した。彼はさらに、「北朝鮮が核武装を完成したと宣言し、核を凍結する意思があるという声明を、突然発表する可能性もある。この場合は対話局面に変わるかもしれない」と指摘した。緻密な危機管理と共に、対話局面へといきなり切り替わった場合に備えなければならないということだ。

チョン・イナン、チョン・ユギョン記者、ワシントン、東京/イ・ヨンイン、チョ・ギウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/811237.html 韓国語原文入力:2017-09-16 00:53
訳H.J(2878字)

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