本文に移動

文大統領「今は対話する時期ではない」

登録:2017-09-06 03:56 修正:2017-09-06 07:24
ロシアのタス通信とのインタビューで 
「平和的方法」強調しながらも 
「さらに強力な制裁と圧迫すべき」 
専門家ら「対北朝鮮政策の急転換」を懸念する声も
文在寅大統領が4日夜、大統領府官邸でドイツのメルケル首相と電話会談をしている。文大統領は同日午前から夜まで日本やドイツ、米国、ロシアの首脳と相次いで電話会談を行ない、北朝鮮の6回目の核実験以後、対北朝鮮対応の協力案を協議した=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5日、「今の状況は、北朝鮮の危険極まりない挑発を強く糾弾し圧迫すべき時期であって、対話を語る時期ではないと思う」と述べた。文大統領が今年7月6日、ドイツのケルバー財団の招請演説で「(南北)対話の必要性がかつてより切実になった」と強調したこととは明らかに異なるものだ。南北関係を軸に周辺国を動かし、朝鮮半島情勢を主導するという文大統領の対北朝鮮政策の方向が、北朝鮮の6回目の核実験を機に急速に変わっていく可能性も指摘されている。

 文大統領は、ロシア・ウラジオストックで6日に開幕する東方経済フォーラムへの出席とロシアのプーチン大統領との首脳会談を翌日に控え、ロシアのタス通信とのインタビューで、「北朝鮮の核問題を解決できるなら、私はいかなるレベルの対話も避けないだろう」としながらも、「今は対話する時期ではない」という点を明確にした。文大統領は「対北朝鮮制裁と対話の並行」基調を維持してきたが、北朝鮮の核実験後、強硬な対応に重点を移している。ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮との対話無用論を提起し、超強硬な圧迫を掲げている状況で、文在寅政権も「平和的解決」基調から後退しているという懸念の声が上がっているのも、そのためだ。

 文大統領はタス通信とのインタビューで、「私たちは北朝鮮体制の崩壊や吸収統一を進めない。北朝鮮の体制を保障しながら、北朝鮮の核問題を解決するため努力しており、朝鮮半島の堅固な平和体制を構築することを望んでいる」と述べながらも、「(北朝鮮核問題の)平和的解決のためには、北朝鮮が核・ミサイルの追加挑発を中断しなければならず、それに向けて国際社会がさらに強力な制裁と圧迫を加えるべきだと思う」と強調した。

 このような発言は、文大統領が就任後に新政府の対北朝鮮政策構想を総合的に明らかにしたケルバー財団での演説と大きく異なるものだ。当時、大統領は「軍事的緊張の悪循環が限界に達した今、対話の必要性がいつになく切実になった」としたうえで、「正しい環境が整って朝鮮半島の緊張と対峙局面を転換させるきっかけになるなら、私はいつどこでも北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談する用意がある」と明らかにした。

 これに先立ち、文大統領とトランプ大統領との電話会談後、大統領府が発表した書面ブリーフィングでも、両首脳の対話や会談のたびにお馴染みのレパートリーとして登場してきた「対話」と「平和」という言葉自体が姿を消した。ブリーフィングの冒頭を飾ったのは「韓米ミサイル指針上、韓国のミサイル弾頭重量制限を解除することで電撃合意した」という内容だった。「対話を通じた北朝鮮核問題の平和的解決」という言葉の代わりに、韓米両首脳が北朝鮮の6回目の核実験を「過去とは次元が異なる重大な挑発」と見て「徹底した対韓防衛公約を再確認」する一方、「北朝鮮に対する最高の強力な圧迫と制裁」と共に「さらに強力な国連安全保障理事会制裁決議の推進」に乗り出すという内容が並べられた。

 大統領府の関係者はこれについて「弾頭重量解除の合意がより大きな部分だったため、ブリーフィングで別途に言及しなかっただけ」だとし、「文大統領はトランプ大統領との電話会談で一貫してその言葉(対話を通じた平和的解決)を繰り返しており、現段階ではすでに『対話のための対話は必要ない』ことで合意している状態なので、両首脳の間に意見の相違があるわけではない」と釈明した。

 「今は対話する時期ではない」という文大統領の発言は、北朝鮮の核をめぐる危機が高まるにつれ、再び台頭している「安保無能論」に対する批判を先制的に静めることで、対北朝鮮政策の主導権を守っていくための側面もある。また、「対話無用論」を掲げるトランプ大統領にある程度歩調を合わせることが「先制攻撃論」などを和らげる方法であるとの判断が作用したという分析もある。しかし、文大統領が、大統領府と政府各省庁に求めた朝鮮半島平和構想を支える「創意的な解決策」がまだ提示されていない状況で、「今は対話する時期ではない」として戦術的なUターンを図るのは、文大統領が脱皮を目指してきた米中外交依存度をさらに高める恐れもあると見られる。

 文大統領の大統領選挙キャンプ出身の南北関係の専門家は「条件付き対話論は『戦略的忍耐』の名の下で何もしなかった李明博(イ・ミョンバク)、朴槿惠(パク・クネ)政権時代の政策方向と内容において一致する」としたうえで、「今後の南北対話の扉を開くのに障害物になる発言」だと憂慮を示した。

イ・ジョンエ、ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/809822.html 韓国語原文入力:2017-09-05 22:17
訳H.J(2116字)

関連記事