大統領府が最近、国防部のTHAAD(高高度防衛ミサイル)に関連する報告漏れの事態を「意図的」と結論を下し、波紋がさらに広がっている。大統領府は前日、ハン・ミング国防長官とキム・グァンジン元大統領府国家安保室長を調査するなど、迅速かつ強力な調査を進めており、共に民主党と正義党などでは国会聴聞会も推進しようと乗り出している。与党のこのような積極的な対応の背景には、これまで報告隠ぺい・漏れを繰り返してきた軍当局に対する深い“不信感”が根づいているものとみられる。
軍当局は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の時も「作戦計画5029」の報告漏れ、西海南北間の通信内容の報告の隠蔽報告疑惑などで論争の中心に立ったことがある。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は当時、大統領府民政首席秘書官としてこれらの事件を見守った。文大統領が先月30日、国防部の報告漏れの報告を受けて「非常に衝撃的」とひどく立腹したのは、当時の経験を生かして軍に対する文民統制の手綱を締めなければならないという意志を表現したものという解釈もある。
作戦計画5029の報告漏れは2004年、参与政府(盧武鉉政府)2年目の時に起こった。韓米連合司令部は1999年末、北朝鮮の急変事態に備える「概念計画5029」を立て、これを具体的な実行計画である「作戦計画5029」に発展させたいと望んでいた。韓米連合司令部は韓国軍の合同参謀本部(合参)に作戦計画5029作成を提案し、合参はこれを受け入れ、同年末には概略的な草案まで完成した。
当時、盧武鉉政府は「北朝鮮内部で急変事態が起きる場合、韓国が主導的に対処しなければならない」という立場だった。戦時状況でないため、米軍が乗り出すことではないという意味だ。しかし、これを軍事計画である「作戦計画」にすると、韓米連合司令官(米軍)が主管することになる。作戦計画5029が北朝鮮を不必要に刺激しかねないという懸念もあった。金泳三(キム・ヨンサム)政権以来、すべての政府はこのような点のために作戦計画5029の作成を一様に反対した。しかし、当時合参は大統領府に公式報告もしないまま、韓米連合司令部と作戦計画5029を協議し、大統領府は遅れてこれを知り、合参に正式報告を指示した。その後、政府は内部議論の末に作戦計画5029の作成を中止する代わりに、既存の概念計画5029を発展させるレベルでこのことを終わらせる方針を決めた。
2004年7月には西海(黄海)上での南北間の銃撃事件の虚偽・隠ぺい報告事件が起こった。当時、北朝鮮警備艇が北方限界線(NLL)を越えたところ韓国海軍が警告射撃をしたものだ。当時、合参は「北朝鮮警備艇に警告放送を実施したが応答しなかったため射撃をした」とメディアに発表し、大統領府にもそのように報告した。大統領府はこの事件を深刻に受け入れ、再び調査を行った。わずか1カ月前の6月、南北が将官級会談で西海上の偶発衝突防止に合意したものの、このようなことが発生したためだ。結局、大統領府は調査の末に軍当局が虚偽の報告をした事実を突き止めた。当時、北朝鮮の警備艇は、韓国艦艇の警告放送に「今南下しているのはわれわれ(北)の漁船ではなく中国漁船」だと明らかにするなど、3回も応答したが、これを無視して警告射撃をしたのだ。このような事実は、国家情報院が関連する特殊通信記録を大統領府に報告したことで明らかになった。
大統領府がこれを「欺瞞報告」と判断して調査に入ると、当時軍情報の最高責任者だったパク・スンチュン合同参謀情報本部長(中将)は、南北交信内容と通知文など特殊情報をいくつかのメディアに流出し、軍の対応が正当だったと主張するなど、事実上「抗命」を主導した。パク本部長は機密漏えい等の責任を負って退いたが、この事件は大統領府と軍の対立として映り、盧武鉉政府に大きな政治的負担を与えた。