文在寅(ムン・ジェイン)大統領が30日、THAAD(高高度防衛ミサイル)の発射台追加搬入などに対する真相調査を指示し、THAAD配備をめぐる論議が新局面に入った。専門家たちは「来るべきものが来た」としながら「今回の機会にTHAAD配備決定の過程全般に対する国民的疑惑を解明しなければならない」と口をそろえた。
朴槿恵(パク・クネ)政府は当初、THAADに対していわゆる“3No”の立場を取った。THAAD配備のための「協議も、要請も、決定もしていない」という話だ。しかし昨年、北朝鮮が核実験と銀河ロケットの発射を相次いで敢行すると、政府はこれを名分に昨年2月に在韓米軍とTHAAD配備協議を始めると公式発表した。
国防部が「大統領の決心」を前面に掲げ在韓米軍と共にTHAAD配備決定を突然発表したのは昨年の7月8日だ。ハン・ミング国防長官は発表のわずか3日前の7月5日にも、国会の対政府質問に出席して「(THAAD配備に)慎重だ」と答えていた。そのため、大統領府国家安保室が主導してTHAAD配備決定を確定した後、国防部が後始末に乗り出したのではないかという指摘が相次いだ。
THAAD配備による外交的波紋を収拾するためにも、「誰が、いつ、なぜ」THAAD配備を決めたのかの真相把握は必要だ。THAAD配備決定をわずか半月後に控えた昨年6月末、黄教安(ファン・ギョアン)当時首相は、李克強中国首相の招請で4泊5日の日程で中国を訪問した。今月18日に文大統領の中国特使団に会った中国側は、習近平国家主席が当時訪中した黄首相に「THAAD問題と関連して両国の利益を害しない範囲内で多様なチャンネルで協議してみよう」と話したと伝えたことがある。THAAD配備に対する中国側の反発が予想以上に激しいのも、「後頭部」を殴られたと感じているためだという話だ。
事前住民説明と環境影響評価(アセスメント)などの決められた手続きを無視して、THAAD配備時期を操り上げたことについても真相を探るべき部分だ。昨年7月のTHAAD配備決定発表時にも、国防部と在韓米軍側は実際にTHAADが配備される時点は今年の12月頃と明らかにした。だが、大統領弾劾局面に入り込むと、THAAD配備が急流に乗り始めた。この頃、キム・グァンジン当時安保室長が2度も米国を訪問し、これを議論した。今年2月初めには、ジェームズ・マティス米国防長官がソウルでハン・ミング国防長官に会い、大統領選挙前にTHAADを搬入することで合意したのではという疑惑も提起された。実際、在韓米軍は憲法裁判所の朴大統領罷免決定を4日後に控えた3月6日夜、THAADの発射台2台を含む装備の一部を烏山空軍基地に搬入する場面を異例公開した。
さらに国防部と在韓米軍は、大統領選挙までわずか2週間も残っていない先月26日の深夜に奇襲作戦をするかのように慶尚北道の星州ゴルフ場にTHAADを配備した。大統領選挙前のTHAAD“既成事実化”であり、THAADを大統領選挙の争点にする“選挙介入”との批判が出てきたのもそのためだ。コリア研究院のキム・チャンス院長は「THAAD配備決定も、実際の配備も、正常な政策決定過程を経ずに電撃的になされた」として「新政府に負担になることが明らかな状況で、無理に大統領選挙前にTHAADの早期配備を強行した過程全般に対して、詳細に調べる必要がある」と強調した。