烽火山のミミズク岩が見下ろす中、黄色い蝶々1004羽が空へ舞い上がった。「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領がこれからは心安らかに休み、自由に飛んで行かれるよう」という意味を込めて、盧武鉉財団で準備した行事だった。顔を上げて蝶が飛んで行くところをしばらく眺めていた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、ハンカチを取り出し濡れた目頭をおさえた。盧武鉉元大統領の逝去後、毎年5月23日になると烽下(ポンハ)村を訪れた彼だが、今年は状況が変わった。以前は「盧武鉉の友人」であり、参与政府(盧武鉉政権)の最後の秘書室長、また悲劇的な死を見届けた「喪主」だったが、今は大韓民国19代大統領となって帰ってきた。
「盧武鉉大統領も今日だけは、ここのどこかで私たちの中に隠れて、皆さんに感謝しながら『やあ、いい気分だ!』とおっしゃっていそうです」。9年ぶりに成し遂げた政権交代のニュースをたずさえて盧元大統領の8周忌追悼式を訪れた文大統領は、久しぶりにリラックスした笑顔で挨拶をはじめた。「政治的報復による他殺」という支持者たちの怒りの中で、一部の政治家たちにやじと悪口が集中し、水が浴びせられた過去の追悼式とは異なり、この日の追悼式は涙と笑いが交差した。
「皆一緒に国らしい国を作ろう」という文大統領のこの日の追悼式の挨拶は、“積弊清算”という言葉に象徴される“改革”と、これを基盤に“統合”を成し遂げ新しい時代へ進むという誓いだった。盧元大統領の“挫折”以後忘れられた「反則と特権のない世の中」、「常識と原則が通じる世の中」という“未完の夢”を、今度は文大統領自身が必ず実現するということだ。4月3日、共に民主党の大統領選候補に確定した直後、盧元大統領の墓地を参拝し「盧武鉉大統領が夢見た“人が生きる世の中”は、改革と統合という二つの課題を一緒に達成する時にこそ可能だ」と述べたのと同じ延長線にある言葉だ。
ここには、盧元大統領が「民主主義と人権と福祉が正常に作動する国、地域主義と理念の葛藤、差別の非正常がない国」を夢見たが、参与政府が「理想は高く、力は不足」し「現実の壁を越えられなかった」という反省が基盤となっている。
彼は、文在寅政府の誕生には盧元大統領が世の中を変える動力として強調した「目覚めた市民の力」が位置していると見ている。昨年冬から今年春まで全国を明るく照らしたろうそくの民心が平和な政権交代を導き出したことに対して、文大統領は「盧武鉉の夢が目覚めた市民の力で復活した」と意味づけた。
彼は新しい時代への覚悟を固め、同時に「盧武鉉時代」との美しい別れを告げた。残った任期中に大統領の身分でこれ以上盧元大統領の追悼式には出席せず、彼を胸に大切に抱えるという考えを明らかにし、「もうあなたを完全に国民にお返しする。必ず成功した大統領になって任務を果たした後、再び伺いたい」と約束した。特定“陣営”に閉じ込められ、「彼らだけの大統領」にとどまらず、「国民の大統領」として国政運営を成功裏に率いていくという熱い誓いだった。