文在寅(ムン・ジェイン)大統領が12日、仁川(インチョン)空港公社を訪問し、「任期内に公共部門の非正規職ゼロ時代を切り開く」と明らかにしたのは、公共機関が「良質な雇用」を先頭に立って作るという公約を履行するための第一歩を踏み出したものと評価できる。これとともに、政府の非正規職政策だけでなく、公共機関経営評価の方式もまた質的に変わるだろうという宣言と受け止められる。
文大統領はこの日、各省庁に公共部門の非正規職の実態に対する全面的な実態調査と非正規職問題を解消するためのロードマップの作成を指示した。これによって公共機関の非正規職問題解決の最初のボタンがかけられたということだ。ウ・ムンスク民主労総未組織非正規戦略事業室・非正規戦略局長は「労働界が10年間要求したが、政府は国庫補助金事業や民間委託社会サービスなど公共部門の間接雇用の働き口を一度も実態調査しなかった」とし、「常時・持続的業務の間接雇用の実態が初めて明らかになるだろう」と説明した。
丁世均(チョン・セギュン)国会議長が国会の清掃労働者を、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長がソウルメトロと都市鉄道公社の安全分野の労働者を直接雇用したが、政府が先頭に立って公共部門の非正規職ゼロ時代を明らかにしたのは今回が初めてだ。公共部門の非正規雇用は、1997年の通貨危機以降から本格化された。当時金大中(キム・デジュン)政府は国際通貨基金(IMF)のガイドラインに従って公共部門の改革と公企業の民営化を強力に推進した。
これまで労働界は、公共機関の非正規職問題を解決するよう求めてきたが、公共機関は政府の定員と予算統制のため仕方がないと対抗してきた。政府が公共機関革新という名目でコスト削減を優先視するため、公共機関はこれに従うしかなかったということだ。仁川空港公社の関係者は「財政規模は悪くないが、企画財政部の指針のために(正規職の)人員と人件費を増やすことができなかった」とし、「政府が公共機関の経営評価基準を変えるなら正規職転換ができない理由はない」と話した。文在寅大統領は公共部門に「雇用にやさしい経営評価制」を導入し、非正規職の削減を誘導すると公約している。この日の仁川空港の1万人を正規職に転換する宣言は、他の公共機関と中央政府、地方自治体が直接雇用に乗り出すシグナルになる見通しだ。2016年現在、公共機関の非正規職は31万2千人に上る。
公共機関が良質な雇用を拡大すれば、民間部門に対する政府の非正規職制裁も強力になる可能性がある。文大統領は非正規職の使用を入口から規制する「使用事由制限制度」を公約に掲げた。常時・持続的業務は正規雇用を原則とするが、出産・休暇など例外的な場合のみ非正規職を認めるというものだ。
一方、民主労総はこの日声明書を出し、「大統領の行動は極めて象徴的で意味がある」と歓迎し、「これからは政府と労働組合が会って交渉と協議を通じて、低賃金や非正規職問題などを解決しよう」と提案した。